[外国企業決算を読む(2)] ユニリーバ・インドネシア<後編>
前編ではユニリーバ・インドネシアの概要と決算書がWeb上のどこにあるかを説明しました。
後編ではユニリーバ・インドネシアの2022年通期(Q4)の決算書を例に、決算書のポイントを確認していきます。
前編
2022年通期の決算書
Financial Statements Quarter 4 2022 ( PDF )
財務諸表
貸借対照表 資産の部
数字の単位は×100万ルピアです。
インドネシアルピアは2023年11月23日頃の為替レートで1円=105.26ルピアくらいです。円を基準にものを考えがちな日本人の感覚だと、22年末時点で現金同等物が5,028.82億ルピア!と聞くと、ものすごく大金を抱えてるように感じますが、実際には50億円に届きません。
ということで2022年末時点での貸借対照表の主な項目を確認してみましょう。
Current Assets(流動資産):7,567,768百万ルピア(718.94億円)
Cach and cash equivalents(現金及び現金同等物)が、5,028.82億ルピア(47.77億円)
Trade debtors(買掛金)が、3,507,072+417,427 = 3,924,499百万ルピア(372.83億円)
Advances and other debtors(前払い金、立替金など)
Inventoies(在庫)が2,625,116百万ルピア(249.39億円)
Non-Current Assets(非流動資産):10,756,346百万ルピア(1,021.85億円)
Fixed Assets(固定資産)が 9,536,027百万ルピア(905.92億円)
Goodwill(のれん)が61,925百万ルピア(5.88億円)
Intangible Assets(無形資産)が447,059百万ルピア(42.47億円)
Right-of-use Assets(使用権)が627,048百万ルピア(59.57億円)
資産合計は、18,318,114百万ルピア(1,740.22億円)です。
貸借対照表 負債の部
Current Liabilities(流動負債):12,442,223百万ルピア(1,182億円)
Bank Borrowings(銀行借入金)が600,000百万ルピア(57億円)
Trade creditors(売掛金)が4,508,015+191,959=4,699,974百万ルピア(446.5億円)
taxes payable(未払い税金)が439,770+219,181=658,951百万ルピア(62.6億円)
Accruals(会計発生高)が3,998,399百万ルピア(379.85億円)
ユニリーバ・インドネシアは会計上の利益を営業キャッシュフロー収入が大幅に上回っているので、貸借対照表の資産の部で利益を上回る現金が増加している。それに見合う価値を負債の部にも計上する必要がある(会計上の措置であって借金などの負債が増えているわけではない)。
Other payable(その他未払い費)が1,454,252+850,657=2,304,909百万ルピア(218.97億円)
Non-Current Liabilities(非流動負債):1,878,635百万ルピア(178.47億円)
負債合計は、14,320,858百万ルピア(1360.48億円)です。
資産合計は18,318,114百万ルピアなので、資産合計ー負債合計=3,997,256百万ルピア(379.74億円)が純資産です。
損益計算書
左側が2022年、右側が2021年です。
Net Sales(売上高)が41,218,881百万ルピア
Gross Profit(粗利益)が19,064,937百万ルピア
Operating Profit(営業利益)が7,068,808百万ルピア
Profit before income tax(税引前利益)が6,993,803百万ルピア
Profit(純利益)が5,364,761百万ルピア
売上高は円換算で約3,916億円。日本の日用品メーカー、ライオンと同じくらい。
粗利率は46.3%、営業利益率は17.1%、純利益率は13.0%。
2022年は、18,318,114百万ルピアの資産を使い、1年間で41,218,881百万ルピアを売り上げているので総資産回転率は2.25回です。製造業でこの回転率、なかなか高効率です。
キャッシュフロー計算書
左側が2022年、右側が2021年です。
営業キャッシュフローはプラス8,961,314百万ルピア。
投資キャッシュフローはマイナス526,063百万ルピア。
フリーキャッシュフローはプラス8,435,251百万ルピア。
財務キャッシュフローはマイナス7,357,788百万ルピア。
会計上の利益5,364,761百万ルピアに対し、フリーキャッシュフローは8,435,251百万ルピア。
フリーキャッシュフロー÷会計上の利益=1.57倍
現金収入に裏付けられた非常に質の良い財務収支となっています。
その他
製品別・地域別売上高
売上の大半はインドネシア国内由来ですが一部輸出もしています。輸出先はマレーシア、フィリピン、ベトナム、タイ、シンガポール、オーストラリア、台湾など周辺諸国のユニリーバ現地法人が大半を占めているので、ユニリーバ・グループ内で生産を最適化しているのでしょう。ちなみにユニリーバ・ジャパンにも輸出しています。2022年の日本への輸出額は62,368百万ルピア(5.92億円)、輸出全体の3.6%でした😅
部門はHome and Personal Care(洗剤、石鹸、化粧品など)とFoods and Refereshment(食品)の2つです。ユニリーバ本社は(1)Beaty & Wellbeing、(2)Personal Care、(3)Home Care、(4)Nutrition、(5)Ice Cream の5つの事業セグメントで決算報告を出していますが、インドネシアでは(1)+(2)+(3)、(4)+(5)の2つにまとめています。