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ユニリーバの24年決算。いつも通りの安定、安心なんだけど

2025年2月13日(木)、ユニリーバの2024年度通期決算が出ました。

Q4 and Full Year 2024 Full Announcement

Unilever FY 2024 Results Presentation

Q4 and Full Year 2024 Full Announcement より


Financial Highlights

売上高推移

2015年から10年分のデータを集めてみましたが。
2021年度以前はセグメント区分が違っているので、セグメントを区別せず連結売上高を、22年以降はセグメントごとの売上を示しています。
縦軸の単位は10億ユーロ。
つまり24年度の売上高は600億ユーロを超えています。
1€=162円換算で、売上高10兆円弱。

生活必需品、日用品メーカーなので売上高の推移は安定していますが、2021年→2022年で売上高が一気に15%近く増えています。
これはインフレの影響でしょう。欧米企業というのは日本企業と違って平気で原材料価格の値上がりを価格転嫁しますから。FRB、ECBがインフレ退治の利上げを始めたのも、ロシアのウクライナ侵攻があったのも、苛烈な円安が進み始めたのも2022年初めごろ。ここで世界が不連続に変化してしまった。
その後売上が安定しているのは、物品を製造、販売している会社だからでしょう。今も続く欧米のインフレの要因はサービス(人件費とか不動産価格とか)に移っていて財ではないですから。

21年→22年の大きな売上変化を除けば、ブランド力のある生活必需品メーカーだけにさすがの安定度といったところです。


営業利益率とEPSの推移

ユニリーバがいつも決算で言う「Underlying」な営業利益率とEPSの推移は以下のグラフのとおりです。
Underlying=基調的な。
事業買収や事業売却といった特殊要因を除いた利益率、EPSです。

売上高はそんなに変化していないのに、利益率とEPSは上昇しているので、事業運営の効率が上がった、いわゆる生産性が上がった、ということですね。


アイスクリーム事業の分離

昨年の1Qに発表したアイスクリーム事業の分離の進捗は予定通りで、
25年末には完了予定、と発表されました。

ということで、今年中にスピンオフがあるでしょう。
その時にユニリーバ株を持っていると、アイスクリーム作って売る新会社の株式がもらえます。とはいえユニリーバADRを日本の証券会社経由で保有している場合は、

  • 新会社がロンドン証券取引所に上場する、

  • その会社のADRが発行される(ロンドンじゃなくてニューヨーク市場で取引できる)、

  • 日本の証券会社がそのADRを取り扱い銘柄リストに追加する、

の3つ全部が成立しないと株(ADR)はもらえず現金決済されてしまうでしょう。現金ではなく新会社の株で受け取りたい私としては、どうなるか気になるところです。


中国とインドネシアは苦戦中

連結決算はいつもどおり抜群の安定した結果を示しているものの。
中国とインドネシアは苦戦していて、立て直しに取り組んでいる最中。
イスラム教徒の多いインドネシア、イスラエルのガザ侵攻に抗議した欧米ブランドのボイコットが始まってから苦境が続いているから、もう1年以上になります。

25年の後半には成果が見えてくると見込んでいるみたいですが、さてさて、どうなるか。


マーケットの反応

決算は13日のマーケットが開く前に公表され、決算を受けて株価が急落しました。
下のチャートはニューヨーク市場に上場しているユニリーバADRの株価推移ですが、59ドルの株価が55ドルくらいに下がってしまったので、9%以上の下落。
そんな悪い決算でもないし、絶大なブランド力を持つ安定の生活必需品メーカーなのに。
ユニリーバも高配当株、バリュー株に分類される銘柄なので、配当利回り的にそろそろ株価が高過ぎだったのかもしれないし、25年度は年前半は原材料価格の上昇でスロースタートになるという見通しを示したのが投資家たちには気に入らなかったのかもしれません。

Yahoo! Financeより


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