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ユニリーバに投資したい

会社概要

欧州を拠点とする日用品メーカーで、日本の店頭でもよく見かける製品を作っているのでご存知の方も多いはず。詳細は下記記事のユニリーバの概要を読んでください。

ユニリーバ自身による自己紹介は、

We are driven by our purpose: to make sustainable living commonplace.

Established over 100 years ago, we are one of the world’s largest consumer goods companies. We are known for our great brands and our belief that doing business the right way drives superior performance.

URL : https://www.unilever.com/our-company/at-a-glance/

我々の目標は、ありふれた(←もちろん良い意味で!)、持続可能な生活を実現することです。

ユニリーバは、100年以上前に設立された、世界最大の一般消費財メーカーの1つです。すばらしい数々のブランドと、正しいやり方でビジネスをすれば優れた結果がもたらされるという信念に基づき事業展開している会社として知られています。


Unileverに投資するには

Unilever はその正式社名 Unilever PLCが示す通り、証券取引所に上場しているので誰でも投資することができます(PLC は public limited companyの略でイギリスの会社形態の1つです。株式を公開している有限責任会社。日本風に言えば「上場している株式会社」です)。

イギリスのロンドン証券取引所と、ユーロネクスト・アムステルダムに上場しています。

ロンドン証券取引所のUnilever株式

ユーロネクスト・アムステルダムのUnilever株式


ただ、私が確認した範囲では、日本の大手ネット証券(SBI、マネックス、楽天、松井)ではいずれも欧州株式の取り扱いがなく、「直接」ユニリーバに投資することはできません。イギリス及び欧州の株式の扱いがあるのはサクソバンク証券だけでした。サクソバンク証券は悪くはないんですが、最低手数料が設定されているため時間分散して少額ずつ投資するには向きません。

また手数料が高いため調査していませんが、野村證券や大和証券など大手の証券会社なら取り扱いがあるかもしれません。


ですがSBI証券、マネックス証券、楽天証券、松井証券のどれかに口座を持っていれば、間接的にですがユニリーバに投資することができます。
ユニリーバは ADR(下記の用語を参照)をニューヨーク証券取引所に上場しているため、たとえばSBI証券で米国株口座を開けば、ユニリーバのADR(ティッカーコード:UL)を売買することができます。

ニューヨーク証券取引所のUnilever ADR

ADRとは

ここでADRについて説明します。これを理解することがこの記事のキモです。あまりないと思いますが、Unileverに投資したいと思っていたけどこの説明を聞いて投資するのやめた、と判断する人もいるかもしれません。


ADRとは、American Depositary Receipts の略です。日本語訳は、米国預託証券。

米国国外に上場している株式を原資産として組成した証券です。組み入れ銘柄が1個しかない上場投資信託の保有証書と考えると分かりやすいかもしれません。
上場投資信託の価格がそれを構成する銘柄群の株価に連動するように、ADRの価格も対象銘柄の株価に連動します。証券取引所の取引時間内ならいつでも売買できます。そして対象銘柄に配当があればその配当もADR保有者が受け取ることができます。このため株式に直接投資しているのとほぼ同じ効用を得ることができます。

ほぼ同じ、というのは保有していると手数料がかかるためです。これも上場投資信託を保有していると信託報酬がかかるのと同じだと考えるとよいかもしれません。株式を直接保有するわけではなく、投資先企業と投資家の間に、原資産(この場合は株式)を保有してそれを裏付けにADRを発行する金融機関が入ってしまうため、この金融機関が手数料を徴収します😫。ここがADR唯一の泣きどころ。

多くの場合、配当支払のタイミングで配当から手数料が差し引かれます。手数料は一律ではなくADRごとに異なります。

この他にも普通株を保有する場合と違う点として、株主総会に参加する権利、議決権がありません(間にADR発行金融機関が入っていることからも推測できると思います)。が、日本の証券会社を通して米国株を保有する場合は普通株でも議決権は得られないので、気にするところではないでしょう。

もう1つ、憶えておいた方がいいことは、配当のあるADRに長期投資する場合には為替リスクを負う、ということです。
ADRは米国の証券取引所で売買するため額面はドルです。配当の支払もドルです。ですが原資産となっている株式はそれぞれの上場先の国の通貨建てであり配当も当然その通貨で支払われます。このため配当支払のタイミングの為替レートでドルに転換されることになります。現地通貨建てで配当が不変または増配していたとしても、配当支払のタイミングでドル高になってると受取配当は目減りしてしまうことになります。


Unilever ADR の場合

ユニリーバの場合、3カ月ごとに配当金の支払いがあります。その都度ADR1個あたり0.5セントの手数料がかかります(2022年の実績)。1年間だと0.5×4=2セントのコスト負担です。

下の図は筆者がマネックス証券から受け取ったユニリーバのADR管理手数料の徴収証書です。単価が-0.005ドル、つまりADR1個当たり0.5セント徴収されています。

UnileverのADR管理手数料徴収の取引報告書、マネックス証券作成

ユニリーバの配当金はここ3年は毎回0.4268€(1年間だと0.4268×4=1.7072€)で安定推移しているので、為替レートを1€=1.1$とすると配当の1%をADR管理手数料として徴収されていることになります。インデックスファンドの信託報酬(低いものだと0.1%以下)と比較すると高いですね😭。ただ配当利回りは高いし3カ月ごとにチャリンチャリンとお金が入ってくるのは魅力的です。インデックスファンドは配当金が内部で再投資されて投資家に分配されないものも多いですから。


補遺

最後に、Unilever ADR は全部でどのくらいあるのか、どれくらいの人がADRに投資しているのか、といった、ちょっとした話のネタ的な補足をしておきましょう。

そんなことには興味はない、という人もいるかもしれませんが、私はこういうデータ見るのがわりと楽しくて好きなんです😅


ユニリーバは2020年版のアニュアルレポートの中でADRについて言及しています。曰く、

In the United States, PLC American Depositary Receipts are traded on the New York Stock Exchange. Deutsche Bank Trust Company Americas (Deutsche Bank) acts for PLC as depositary.

At 23 February 2021 (the latest practicable date for inclusion in this report), there were 2,153 registered holders of PLC American Depositary Receipts in the United States. We estimate that approximately 11% of PLC’s ordinary shares (including shares underlying PLC American Depositary Receipts) were held in the United States (approximately 11% in 2019).

Unilever Annual Report and Accounts 2020 , pp.196

つまり、

  • 発行済株式(2,621,977,110個)のうち、約11%がADRに割り当てられていると推測している。

  • ユニリーバのADRを発行している金融機関は、Deutsche Bank Trust Company Americas である。

  • ADRの保有者は2,153人(2021年2月23日現在)いる。

Unilever ADR1個の裏付けとなる資産は普通株(ordinary share)1個なので、ADRの総数は

  2,621,977,110 × 0.11 ≒ 288,400,000個

くらいです。3億個弱。東証プライムに上場している小粒な会社よりよほど多いですね😅
ちなみにユニリーバと同じく日用品メーカーの花王、ライオン、ユニ・チャームの発行株数はそれぞれ4.66億個、2.92億個、6.21億個。

これを2,153人で保有しているので、1人当たりでは平均して

  288,400,000 ÷ 2,153 ≒ 133,953個

持っていることになります。13万個超、現在時価にして630万ドル(1ドル=150円換算で9.5億円)・・・😲
金額が大きいのは実際の保有人数は2,153人どころではなくもっとずっと多いものの名義は証券会社などになっている(多数の顧客の資産がまとめられて証券会社名義になっている)からでしょう。SBI証券の外国株取引に関する説明の中にもそれを示唆する記載がありましたし(下記)。

お客様が当社に保管を委託する外国証券は、混蔵寄託契約によって当社に寄託されることになります。さらに寄託された外国証券は当社名義で当社が契約する保管機関に寄託しますが、その国の諸法令及び慣行に従い厳正に保管されます。

URL : https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/bond/pop6040_tentou.html


そして、Unilever自身はADRの発行量を正確には把握していない(We estimate that approximately 11% … と言っています)というのもなかなかおもしろいですね。ADRを管理しているドイツ銀行トラストカンパニー・アメリカが、株式需給を見ながら原資産の価格に連動するように発行量を調整しているんでしょう。


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