【時事問題】水素社会到来へ あなたの知識、取り残されていませんか?
先日政府は2030年までに水素を主要燃料にする方向で議論を進めていると発表しました。
またトヨタは新型の燃料電池車「Mirai」を発表するなど、民間においても水素を利用しようという機運が高まってきています。
脱炭素社会の要となる水素利用。
そこで今回は時事問題において行かれないように、水素を取り巻く現状を整理し、なぜ太陽光や水力ではなく水素なのかという点も絡めながら、
主要燃料とするための課題を考えていきましょう。
1. 水素の強み
①究極のクリーンエネルギー
これは誰でも知っていますね。
水素の元素記号は「H」。これと酸素「O」を化学反応させるとエネルギーが発生し、排出されるのは水「H2O」だけです。
②エネルギーを保存できる
太陽光や水力と違い、この点が主要燃料として一番重要な点の一つです。
電気は、すぐに使うとは限りません。再生可能エネルギーの場合、蓄電池に電気をためておき、必要な時に取り出します。しかし皆さんもバッテリーで経験があるように、電気は自然に放電されてしまうのです。さらに電線を通る間、約5%もの電気が失われます。
この点水素なら保存にも輸送にも、ロスが発生することはありません。石油やガスと同じように保存し、いつでも使うことができるのです。
③補給の時間
充電に時間がかかる電気に比べ、水素は石油ガスのように物理的に補給できます。例えば車を思い浮かべた時、電気自動車がある程度の時間充電しなければならないのに対し、燃料電池車は1分程度で補給が終わります。
2. 水素の製造方法
水素の製造方法は大きく分けて3種類あります。
①水の電気分解
水素と酸素を反応させると、水ができましたよね?その逆をすればいいということです。
水(厳密には電解質を添加)に電気を流し、水素を発生させます。
利点は純度の高い水素ができることですが、あまり効率は良くありません。
②化石燃料から取り出す
石油や天然ガスの中に含まれる物質と水を反応させることで、水素ができます。
例えばメタン「CH4」と水「H2O」を反応させると、二酸化炭素「CO2」と水素「H2」が発生します。
この方法は大量製造に向いていることが利点です。
③バイオマス(不要な木材等)
基本的には②と同じようにガスと水を反応させます。難しくなるので、省略
3. 課題の整理
①コスト
最大の課題です。
水素の製造方法で見た通りですが、水の分解では電気を使いますし、石油ガスの分解では石油ガスを使います。
当たり前に、電気や石油ガスをそのまま使った方が安上がりですよね。水素はどう頑張ってもそれらのコストより高くなります。
②結局CO2出てるじゃん問題
水の分解 ⇒ 電気を使うので、電気が火力発電だったりしたらCO2出てる
石油ガスの分解 ⇒ 分解すると、水素だけでなくCO2も発生する
4. 現状の解決策
(画像引用 東芝プレスリリース)
①再生可能エネルギーで水素を作る(CO2問題の解決)
水の電気分解をするにあたって、その電気を太陽光発電など再生可能エネルギーで作ったものとすることです。
実際に2020年3月から福島県で実証実験が開始されています。
②安い原料から水素を作る(コスト問題の解決)
安価な石炭の中でも、燃料としては使い物にならない「褐炭」と呼ばれる低品質な石炭を使って水素を製造するプロジェクトが川崎重工・岩谷産業・丸紅で始まっています。
③二酸化炭素を地中に埋める(CO2問題の解決)
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)と呼ばれる、二酸化炭素の回収・貯蔵技術を使います。大気中に放出せず、地中に埋めてしまおうという発想です。②とセットで実証実験が行われています。
この技術は既に実用化されていて、工場や発電所で回収されたたCO2を地中に埋めています。それぞれの施設ではなく、水素製造施設でまとめてできれば、大幅なコスト削減が見込まれます。
5. もはや水素社会への流れは止まらない
水素利用の現状課題と解決策を整理しました。
最大の問題はコスト。紹介した解決策もありましたが、お気づきのようにやはりどう頑張っても化石燃料より安くなることはないでしょう。
しかし、水素利用の流れは止まらないと考えられます。
それは、「政治」と「金融」からの圧力です。
政治の圧力は先日の政府発表もありました。世界では二酸化炭素排出に税金(=炭素税)を課すことを検討している国もあり、日本でも炭素税の布石と見られる「排出枠」の設定が電力会社へなされるそうです。
世界ではESG投資(環境・社会・企業統制への配慮が義務付けられる)10年以上前から始まり、今も加速し続けています。現状は二酸化炭素の「削減」が評価されていますが、近いうちに二酸化炭素を排出する企業は投資対象から外れ、資金を調達できなくなるでしょう。
就活生の皆さんは環境という論点をあまり気にすることなく企業を選んでいるかもしれませんが、要注意です。
Sharpが買収され、東芝が潰れかける時代です。5年後にその会社がありますか?ESG格付けを見てみてください。ワーストは有名企業ばかりですから。
From Matt