タスク型ダイバーシティを推進する教育環境を目指して - Inside BEAU Op.12
2017年には経産省の「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」の発表(2018年6月改訂)や、労働力人口減少に伴い多くの国内企業がダイバーシティ経営に本格的に舵を切り始めるなど、「ダイバーシティ」に関する注目度は近年ますます高まっています。
“ボーダーレスでタスク型ダイバーシティを推進する教育環境”と“地域社会に密着した持続可能な教育環境”の実現を目的として、BEAUは 現在高校生を対象に教育プログラムを提供しています。
今回は、BEAUが取り組んでいる「タスク型ダイバーシティ」について小原 涼 (BEAU 代表理事)が、解説していきます。
二種類のダイバーシティ
主に経営学においては、ダイバーシティには二種類あると言われています。”デモグラフィー型”と”タスク型”です。
デモグラフィー型ダイバーシティとは、国籍や性別、年齢など属性の多様性のことを言います。"デモグラフィック"といえば、性別、年齢、住んでいる場所など人口統計学的な属性の総称のことをいいますね。簡単に言うなら、目に見えやすい部分の多様化です。
女性の活躍推進、LGBTQ+や宗教、国籍の多様性を考慮するなどは、表面的に言えば”デモグラフィー型”の取り組みです。デモグラフィー型は統計的に算出できるため成果が目に見えやすいという特徴があります。現在、日本の民間企業におけるダイバーシティ経営の方針の多くは”デモグラフィー型”であるのも事実です。
一方で、近年少しずつ脚光を浴びつつあるのが”タスク型ダイバーシティ”
タスク型ダイバーシティとは、能力・知識・経験など実力の多様性のことを指します。
一見、対極にあるようなデモグラフィー型とタスク型ですが、能力・知識・経験などの内面的な実力が多様な環境下では、外面的な属性も多様であることが多いため両者の関係は切っても切れないのです。
そもそもなぜ、ダイバーシティが教育で注目されているのか?
まず、学習理論がどのように展開されているかを軽く振り返りたいと思います。
以前、学習理論は長く、刺激と反応(行動)の繰り返しによって学びが形成されるという「行動主義」が圧倒的に支持されてきていました。その後、個人の思考のメカニズムに注目し、学習者が自ら、理解を構造的に作り上げていくとする「認知主義」が注目されます。そして人々で形成されるコミュニティーへの参加、人と人との対話の中で学びが起こるのだとされる「状況主義」へ学習理論は変遷していきました。
そして学校教育について触れますと、平成29・30年改訂学習指導要領「生きる力 学びの、その先へ」では”主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)” の視点からの授業改善と、”社会に開かれた教育課程” が基盤となって考えられています。
学習観がこのように変化したことによって、一斉指導型の”知識を蓄えるための学び”だけでなく、学び合い型の”対話をとおして知識を作り出していく学び”も積極的に取り入れていこう というスタイルにだんたんと変わっていきました。
「学び合い」とは、学習者同士が、互いに持っている知識や経験を共有し、両者の持っている知識や経験をさらに広げていくという効果があります。知識を作り出していく学び=「知識創造」をより良いものにしていくためには、学習者らは似た者同士よりも、経験や知識に多様性があるほうが長期的に見て優れている― そのため、学び合い型の学習を取り入れていくために、ダイバーシティ(多様性)の重要性も注目されているのです。
BEAUが取り組む”タスク型ダイバーシティ”
様々なバックグラウンドをもった人との出会い。そして、互いに教え、互いに学ぶ、社会に開かれた学習環境を私たちは目指しています。
BEAU LABO
BEAU LABOでは、共通の専門分野に興味のある高校生が学校や学年の枠をこえて集まります。そして、企業や行政、社会人や学生のサポートを受けながら探究学習を行っていきます。
「地域経済」「まちづくり」「国際問題」「メディアコミュニケーション」「宇宙」の5つの分野を、地域社会に密接に関わりながら3か月間で探究していくプログラムです。このプログラムの特徴は、福井県の高校生たちが、興味のあることを学校と両立しながら、しかし日常的に多様な環境で学ぶことができるというところにあります。
BEAU Leadership Program
1泊2日間、様々な背景をもった高校生たちと、福井県内外から集まった大学生スタッフが寝食を共にし、明日から使える「リーダーシップ」について学ぶことができるプログラムです。実際に福井県内外で活躍する社会人リーダーとの対話はもちろん、多様なバックグラウンドをもった仲間と共に夢や目標について語り合える充実した2日間のプログラムになっています。
次回のBEAU Leadership Program 開催は2020年3月31日(火)~4月1日(水)です。申し込みはこちらから
多様なバックグラウンドをもった多世代との出会い、地域社会での多様な学びは、これらからの社会を生きる高校生たちにとって、そして私たちみんなにとって一生の財産になり得ます。私たちみんなにとって最高の教育(BEAU:the Best Education for All of Us)とは何か...を、常に問い続けながらこれからも“ボーダーレスでタスク型ダイバーシティを推進する教育環境”の実現に取り組んでいきたいと思います。
InsideBEAUでは、一般社団法人BEAU(登記準備中)の取り組みやプロジェクト紹介、教育観や設立の経緯、事務局メンバーやオフィシャルパートナーの想いや価値観について、毎週更新していきます。
小原 涼 (Ryo Kohara)
BEAU Platinum Partner,CEO&Founder
一般社団法人BEAU代表理事(設立準備中)
2000年9月19日、福井市に生まれる。2010年に3年弱中国の上海に滞在。そこで経済や経営、金融に興味を持ち、2017年12月福井市で(株)RUProductionを創業。2019年3月 北陸高校卒業し、7月に東京に移住。現在は東京と福井県で教育事業を行っている。
https://www.ruproduction.net/ryokohara