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「人の集まりをデザインする」問いかけが繋ぐ地域と未来 - BEAU LABO 第18期 ディレクター紹介 vol.01 瀬川悟 - Inside BEAU

【自己紹介】
瀬川 悟 | 弓削商船高等専門学校 情報工学科 4年生
愛媛県西条市出身、中学校まで育つ。高専進学を機に、愛媛県越智郡上島町の弓削島へ移住し、現在はこの島で4年目の生活を送る。島での暮らしは、人口が少ないからこその温かい人々とのつながりに満ちており、2年生の頃にはその魅力に心を奪われ、地域との関わりを深めたいと感じる。イベント運営や清掃活動などのボランティア活動に積極的に参加し、「人の集まりをデザインする」という言葉を掲げ、活動を続ける。
そうした活動を通じて、自分が「人の集まり」が大好きだと気付き、自らイベントを企画したいという思いが次第に強まる。特に心に残るのは、地元丹原町で2018年まで38年間続いた「丹原七夕夏祭り」。このイベントは、街の人々の笑顔や活気、地域全体が一体となる姿が象徴的で、今も鮮明に記憶に残る。
そんな思いを胸に、「〜高校生が企画する〜丹原まるごとマルシェ」を立ち上げ、企画・運営に取り組む。結果として57店舗が出店し、4500人もの来場者を迎える大盛況のイベントとなり、七夕祭りのような人の集まりを再現することに成功する。
その後も「さいじょう級のさいじょうマルシェ」の実行委員長を務め、愛媛県今治市の「せとうちみなとマルシェ」の実行委員としても活動し、幅広く地域に貢献する。人と人をつなぎ、地域の魅力を発信し続けることに情熱を注ぐ。

3ヶ月のラボ活動のテーマと仮説

私が地域コミュニティラボでの3ヶ月間の活動にあたって立てたテーマは、「答えようとするなむしろ問え」という座右の銘に基づいている。この言葉は、実業家の孫 泰蔵氏が著書『冒険の書 AI時代のアンラーニング』に記したものであり、私の探究心を刺激し、活動に取り組む上での指針となっている。
活動を続ける中で、よく「大学入試のために頑張っているのか」「就職の面接のために活動しているのか」と尋ねられることがあった。しかし、私の中には、ただ純粋に「人が大好きで、人の笑顔が見たい」という思いがあり、特に丹原でのマルシェ活動は恩返しの気持ちから始めたものだ。地域の人々が笑顔になり、私自身もその過程で心から楽しさとワクワクを感じていた。そういった背景がある中で、「面接や就職のため」と言われることが悔しく、自分が楽しんでいる活動は、単なる手段ではなく、探究そのものだと強く感じた。
そこで立てた仮説は、探究することの本当の楽しさやワクワク感は、自分が「好きだ」と思うことに対して問いを立て、その問いに答えを見つける過程にあるというものだ。高校での総合的な探究の時間などを踏まえると、探究をAO入試のために行っている生徒も少なくないと感じる。だが、そうした生徒たちにも探究の面白さを知ってもらい、「入試のため」ではなく「自分自身が楽しむため」に探究する高校生が増えるのではないかと考えた。この仮説をもとに活動を展開し、高校生にとって探究の意義を深めていきたい。

最終的には、「答えようとするなむしろ問え」という言葉を胸に、探究そのものの楽しさを再発見し、純粋に問いを立て続ける姿勢を広めていきたい。

仮説に対する試行錯誤と発見、気づき、挫折

今期の地域コミュニティラボは12人という非常に多い人数で構成されていた。当初、週ごとに問いを出し、それについてラボの時間内でディスカッションをする形式を採用していたが、人数が多いため、ラボ生たちが当事者意識を持たず、ディスカッションがうまく進まないという課題に直面した。この状況に頭を悩ませ、「どうすればラボ生たちが主体的に関わり、探究に楽しさを見出してくれるのか」と試行錯誤を重ねた。
私が立てた仮説にもあるように、ラボのモットーは「答えようとするなむしろ問え」である。探究活動を3ヶ月で終わらせるのではなく、その面白さをラボ生たちの心に火を灯し、継続してほしいと願っていた。正直、私はこのラボ活動が地域コミュニティに限らなくても良いとさえ思っていた。伝えたいのは、探究の魅力そのものであり、問いを通じて自身の関心を深めていくプロセスだった。活動の中で感じたのは、自分がディレクターという業務に集中するあまり、ラボ生と同じ目線で探究する機会を失っていたということだった。探究の楽しさを共有したいという思いで始めたはずの活動なのに、気がつけば「ディレクター」としての役割ばかりに気を取られ、ラボ生たちとワクワクを共感できていなかった。そうした距離感が、自然とラボ全体に壁を生んでしまっているのではないかと感じた瞬間だった。

「ディレクターも一緒にラボ生と探究してみたら、もっと良いんじゃないか?」そんな気づきを得てからは、自分自身もラボの一員として同じテーマに没頭しようと思い直した。そして、4回目のセッションから、初めのアイスブレイクと最後の締めを除く全ての進行やファシリテーションをラボ生に任せ、彼らの主体性を引き出す形にシフトした。ディレクターである自分も対等な立場でディスカッションに加わり、一緒に課題に向き合い、探究のプロセスそのものを共に楽しむことを心がけた。
すると、ラボ生たちも自発的に意見を出し合い、ディスカッションがスムーズに進むようになり、場の一体感がどんどん深まっていった。ラボ生の視点や考え方に新鮮な刺激をもらい、自分自身もまた探究にワクワクする気持ちを取り戻すことができた。

この経験から、探究は「教える」のではなく「共に考え、楽しむ」ことが大切であると改めて実感した。ラボ生と対話を重ねることで、お互いの探究心が一層高まり、ラボ全体が活性化したのを肌で感じた。

最後のラボミーティングでは、探究の面白さをさらに感じてもらうために、「大学受験をするときに、自分が本気で学びたい大学を受験してね」という課題をラボ生に出した。一見当たり前に思えるが、実はそうではない。データによれば、大学生の4人に1人が大学選びを後悔している。だからこそ、高校での探究は成果を出すためではなく、自分が何を学びたいのかを見つめ直す時間であるべきだと考えている。この課題を通じて、ラボ生が自ら問いを立て、自分自身の学びたいことを探究し続けるきっかけとなってほしいと思った。

このような試行錯誤を重ねる中で見えてきたのは、探究活動は指導や管理のためにあるのではなく、参加者自身が楽しみながら問いを立てて深めていくプロセスであるということだ。挫折を感じた場面もあったが、「答えようとするなむしろ問え」というモットーを通して、ラボ生たちが探究の本質に触れることができたと実感している。

BEAU LABOの活動を通して得た学びや発見

BEAU LABOでの活動を通して、全てを自分が担わずにラボ生に役割を振ることの重要性を身をもって体験した。これにより、ディレクターがすべてを管理しようとするのではなく、ラボ生にファシリテーションなどの役割を任せることで、より主体的なラボ運営が可能であることを学んだ。ラボ生が自分たちで議論を進めると、より活発な意見交換が生まれ、結果として彼ら自身の探究心が刺激される。

また、ディレクター自身が全力でディスカッションに参加し、ラボ生と対等な立場で関わることで、ラボ全体の一体感が高まることも発見した。ラボ生が「自分たちの意見が尊重されている」と感じられる環境を作ることで、彼らの興味を引き出し、探究の面白さを体感させることができる。こうしたプロセスを通じて、探究活動は個人の好奇心と主体性が育まれる場であるべきだと再認識した。

今後の自分

常に「どうすれば良いだろう」「ここは何なんだろう」と問いを立て続ける姿勢を大切にしていきたい。その問いが生まれるたび、これまでにない新しい視点が見つかり、世界の見え方が少しずつ変わっていく。答えを急ぐのではなく、目の前の課題やテーマに対して疑問を持ち、考え続けることで、自分の中で理解が深まり、知識だけでは得られない洞察が芽生えてくるのだと思う。
こうした問いかけの連続は、人生というパズルのピースを一つ一つ見つけ、組み合わせていく作業に似ている。時にはそのピースがなかなか見つからなかったり、思うようにはまらなかったりすることもあるが、それもまた成長の一部だと捉えたい。問いを通して出会う新しい気づきや発見が、私自身の世界を広げ、理解を深め、より豊かな人生に導いてくれると信じている。問いかけをやめることなく、いつまでも自分の可能性を探究し続け、少しずつ自分という存在を形作っていきたい。

そして1度きりの人生を全力で楽しむ。

『答えようとするな。むしろ問え。』

瀬川悟(せがわ・さとる)
弓削商船高等専門学校 情報工学科 4年生(当時)
BEAU LABO 第18期 地域コミュニティラボディレクター



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