ウジ虫を増やせ!イエバエ養殖編!
種名 :イエバエ
用途 :医薬、化学工業、食品、農業、林業、環境保護
飼料 :残渣、何でも
1サイクル期間 :約15日、年間7~10世代、加温時約24世代
消費飼料(g)/ head: 不明
産卵数 :平均600個
適正温度 :24℃~30℃
収穫時期 :通年
年間平米あたりの収穫量 :1サイクル 500グラム
養殖難易度 :低
設備: ビニールハウス
必要人員 :1人~
開始時の最低投資金額: いくらもかからない
キロあたりの飼料コスト: 残渣の場合無料、飼料の場合それなり
課題 :周囲に民家がないような土地が必要
はじめに
私は昆虫を育てるのが好きで、趣味でいろんな昆虫を育てたり、リサーチしたりしています。この養殖シリーズでは私の自育経験や調べた内容をもとに養殖方法をまとめたり、模索したりしています。昆虫養殖は発展途上です、間違った点もあるかと思いますが、よろしくお願いたします。
イエバエ養殖に関して
今回はイエバエ!数少ない全世界に生息する昆虫です。全世界にいるということは全世界で養殖が可能です。そしてこの昆虫はかなり養殖に向いていて、昆虫産業の中ではエリートな存在!全世界で今効率的な養殖が研究されています。
概要
イエバエ(Musca domestica)は、家庭や農場、食品加工施設など、人間の周りに広く分布し、一般的な家蝿(housefly)のことを指します。
イエバエは人間の生活環境に適応しており、ごみ、糞、廃棄物、食品の残渣などを餌として好むため、これらの場所でよく見られます。イエバエは非常に高い繁殖力を持っています。1匹の雌は平均して600個以上の卵を産み、卵から成虫になるまでの期間は比較的短いです。自然界でも本種は、鳥類、昆虫、爬虫類などの捕食者の主要な餌となり、生態系内で食物連鎖の一部として重要な役割を果たしています。
イエバエは自然界で重要な役割を果たす一方で、養殖においても有用な生物です。
養殖効率
更に以下の生態的特徴のお陰で、養殖に向いている昆虫と言えます。
幅広い用途:イエバエは医薬、化学工業、食品、農業、林業、環境保護など、さまざまな用途に利用できます。これにより、需要の幅広い市場に供給できます。
飼料の柔軟性: イエバエは残渣やさまざまな食材を飼料として利用できます。そのため、飼料の調達コストが低く、持続可能な飼料供給が可能です。
短いサイクル期間: イエバエの飼育サイクルは約15日で、年間に7~10世代もの個体が育ちます。これは生産量を増やす効率的な方法であり、迅速な生産が可能です。
高産卵数: イエバエは平均一ヶ月間断続的に約600-1000個の卵を産みます。この高い産卵率により、生産量が増加しやすくなります。
ただし、イエバエの養殖には周囲に民家がない場所が必要とされるなど、一部の課題も考慮する必要があります。しかし、その多くは適切な場所の選定や管理方法によって克服できるものです。総じて、イエバエの養殖は効率的かつ持続可能な方法で多くの産業に貢献できるでしょう。
社会的・経済的価値
ウジ(イエバエの幼虫)は、非常に高いタンパク質含有率を持ち、その栄養価は非常に高いです。は以下の特徴を持っています:
高タンパク質含有率: イエバエの幼虫は60%以上のタンパク質を含んでおり、食品としての優れたタンパク質供給源となります。
必須アミノ酸の多さ: イエバエの幼虫には必須アミノ酸が多く含まれており、魚粉の2.3倍もの必須アミノ酸が含まれています。これは、栄養バランスに富んでいることを示します。
微量元素の豊富な含有: イエバエの幼虫には鉄、亜鉛などの微量元素も含まれており、これらは健康に重要な栄養素です。
貴重な成分: イエバエの幼虫には抗菌ペプチド、レクチン、インターフェロン、キチンなど、健康に有益な成分が含まれています。
このような栄養価と成分の豊富さから、イエバエの幼虫は世界中の科学者や一部の国で注目され、ハエ工場が設立され、イエバエの幼虫由来のタンパク質を栄養補給や産業用途に利用するために開発されています。現在、イエバエの幼虫の養殖は高タンパク質の粉末の生産だけでなく、リン脂質、キチン、タンパク質、ウジ虫油(脂肪)、インターフェロン、抗菌ペプチド、レクチン、アラントインなどの多くの貴重な製品の生産と抽出にも関与しており、食品、農業、化学工業、医薬品、環境保護など多岐にわたる分野における製品アプリケーションに貢献しています。ハエ産業は新しい農業産業として注目され、持続可能な栄養供給と環境保護に寄与しています
養殖に関して
ライフサイクル
ハエは「完全変態昆虫」に属し、卵、幼虫(ウジ虫)、蛹(ハエ種)、成虫(ハエ)の4つの段階を生涯に繰り返します。
このうち、卵期間は1日、幼虫期間は4~6日、蛹期間は3~4日で、ハエは羽化後4日で性成熟し、交尾・産卵を始めます。ハエの寿命は長くても1か月です。実際の生産では、繁殖ハエの各バッチは、繁殖の 20 ~ 25 日後に適時に駆除する必要があります。人工繁殖条件下では、温度が適切である限り、ハエは毎年繁殖することができます。
捕獲
捕獲場所の設定: イエバエがよく活動する場所、例えば鶏舎や豚舎など、イエバエの生息が見られる場所に捕獲場所を設定します。
イエバエをおびき寄せる材料の用意: イエバエをおびき寄せ、産卵させるための材料を用意します。一般的な材料として、小麦ふすま、米ぬか、ワインの搾りかすなどが挙げられています。これらの材料を水と混ぜて特定の混合物を作成します。
イエバエの誘引と産卵: 作成した混合物を捕獲場所に配置します。これにより、イエバエが混合物に誘引され、そこで産卵する可能性が高まります。
卵の収集: イエバエが産卵した卵を収集します。これらの卵は、後で人工的に飼育するための種バエとして使用されます。
孵化と人工飼育: 収集した卵から孵化した幼虫を飼育し、成虫に育てます。これにより、新たな世代のイエバエを飼育し、必要に応じて利用できるようになります。
飼料
成虫の餌
ハエ成虫の主食: 自然条件下では、ハエ成虫の主食は液体物質であり、甘いジュース、牛乳、砂糖水、腐った果物、タンパク質を含む液体などが含まれます。しかし基本的に少食です。
飼育下での餌: きれいな環境でハエを飼育する際には、以下のような餌が一般的に使用されます。
粉ミルク
黒砂糖
白砂糖
魚粉
卵
イエバエ幼虫ペースト
糖化発酵小麦ふすま
糖化小麦粉ペースト
ミミズペースト
幼虫の餌
幼虫の飼料の種類: ハエウジの飼料として、以下のような材料が使用できます。
鶏糞
豚糞
牛糞
ワイン粕
砂糖粕
豆腐粕
屠殺場屑
小麦ふすま
米ぬか
要するになんでも食うんですね。
飼料の条件: 飼料の基質は短く、細かく、新鮮である必要があり、含水率が65%から70%の範囲内であることが重要です。
混合比率: 実験によると、純粋な鶏糞と豚糞を一定の比率で混合すると、幼虫の繁殖効果が良好であることが示されています。牛糞を使用した場合、飼育効果が劣る可能性があると述べられています。
混合プロセス: 鶏糞と豚糞を混合し、適切な含水率(80%)に調整するために水を加えることで、イエバエの幼虫の飼育効果を向上させることができると述べられています。
卵のケア
卵の培養材料: ハエの卵は、小麦ふすま、米ぬか、粕などの培養材料の表面に均等に散布することができます。培養材料に卵を埋め込むことが適切です。ただし、このような培養材料には動物の糞便を使用しないでください。
培養プールの設定: 幼虫の繁殖プールの各平方メートルには、35〜40キロの培養液を注ぎ、液体の厚さを4〜6センチメートルに保つことが適切です。培養材料の表面は通気を容易にするために不均一にできます。
卵の接種: 各平方メートルあたり20万〜25万粒の卵を培養液に散布します。これにより、1日に1万〜2万のイエバエの給餌能力を確保できます。
飼育環境: 幼虫の飼育室は暗くし、直射日光を避け遮光します。培養物内の温度はできるだけ25℃~35℃に保つことが重要です。
幼虫の摂食と発育: 幼虫は飼料表面から下層へ層状に摂食し、3齢になると再び表面に戻って蛹化します。幼虫の密度が高すぎると、栄養不足になり、個体の発育不良が発生する可能性があるため、適切な密度管理が必要です。
設備とインフラ
成虫の飼育ケージ
ハエ成虫の飼育ケージの構造: ハエを飼育するためのケージは、木材、鋼鉄、または鉄線で長方形の骨格を持ち、そのサイズは農場の敷地に合わせて調整できます。周囲はプラスチック製の窓ガラス、ガーゼ、または細かい銅製の金網で覆われています。
穴と長袖: ハエケージの片側に直径20cmの穴が開けられ、30cmの長袖で連結されています。これにより、給餌や操作が簡単に行えます。
飼育スペース: 1匹のハエ成虫が占有するスペースは、4~10立方センチメートルです。大型ケージの場合、4万~5万匹のハエ成虫を飼育できることが示唆されています。
休息用の布: ハエ成虫が休むための場所として、ケージ内に布が掛けてあることが言及されています。
幼虫の飼育設備
幼虫を飼育するため、小規模な場合にはプラスチック製または木製の容器を使用し、蓋が必要。
大規模な飼育では、地面にレンガを敷き、長方形のプール(長さ1.2メートル×幅0.8メートル×高さ0.4メートル)を使用することができる。
屋内やビニールハウス内の大規模な飼育では、ウジトレイとしてプラスチック製のポット以外にも、鉄、木材、プラスチック製の箱や可動式スクリーンの上部を使用できる。
幼虫の分離
幼虫の成熟と分離:
幼虫は通常4〜5日で成熟し、摂食を停止して蛹化のために湿った繁殖地から離れます。
光線屈折率をマイナスに変更することで、幼虫の分離と収穫を促進できます。
分離箱の使用(小規模飼育用):
分離箱は小規模な飼育に使用され、幼虫を分離します。
ふるい板の上に幼虫を混ぜた培養基を置き、光源を設置します。熊手を使用して培養基をひっくり返し、幼虫が穴を開けて下に移動し、ふるいの上の培養基を残すようにします。
16メッシュの米篩を使用して培養物の一部を振動させて分離する方法もあります。
大規模飼育用の分離:
大規模な供給の場合、屋外分離槽と直射日光を使用して分離が行われます。分離槽にふるいネットを設置し、培養物を攪拌し、ふるいメッシュを通して幼虫を分離します。
分離された幼虫は乾燥させるか、必要に応じて保存するために予備に取っておくことができます。
蛹の収穫:
蛹が必要な場合、老熟幼虫が蛹化するために乾燥した基材面を探し、培養材の上に木材チップや薪チップを敷いて穴を開け、蛹を分離および収穫します。
また、分離した幼虫を乾燥したオガクズに入れ、蛹化を待ってから分離することもできます。
注意点
飼育管理。ハエ飼育管理は「3点技術、7点管理」です。イエバエはライフサイクルが短く、繁殖量が多く、次々に次の成長プロセスに変態します。よって日に日に管理内容が変わったりしますので、綿密な管理計画が必要です。また、イエバエは病気を媒介する昆虫であり「四大害虫」の一つであるため、イエバエの逃走防止も重要です。
事例
日本では株式会社ムスカが養殖に成功している。https://musca.info/
日本でこれをやり遂げた技術力と情熱は本当に素晴らしい。心から応援しています。
昆虫食ブームで怪しい会社が次々と現れ、投資を集めては消えてゆく中、ムスカは正真正銘の本物であると言えましょう。株を買いたいw
やってみたいと思ったら
ぜひお声がけください。私はさまざまな昆虫の養殖に携わり、世界中の文献を所有しております。情報提供や、経験を生かしたご助言がきっと出来るかと思います。
参考文献
高效养殖致富直通车:蝇蛆高效养殖技术精解与实例
古今東西の養殖本を読んでおりますが、事例や写真も多く素晴らしい一冊、世界一の蝿養殖本です。
参考サイト
https://baike.baidu.com/item/%E8%9D%87%E8%9B%86%E5%85%BB%E6%AE%96%E6%8A%80%E6%9C%AF/4992877
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