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【首輪】エッセイ?小説?ポエム?
首輪
いつも通るあの道にいる犬が、なかなか懐かない。
僕が通る度、欠伸をして眠たそうにしている。
たまに撫でてみようかと手を伸ばしても、ぷいっと尻尾を翻し、庭の奥へ逃げる。
諦めようかと素通りしようとすると尻尾を振って潤んだ目で「撫でて」とせがんでくる。
しかしその犬の首には僕以外の首輪がついている。
僕は犬が嫌いだ。
いつも一緒にいるあの人が、なかなか懐かない。
私といても、携帯を離さず眠たそうにしている。
たまに目線を合わせたくてキスをしようとしても、ふふっと微笑んで、顔を背ける。
拗ねているのを隠して澄まし顔をしていると、甘い声で「キスして」とせがんでくる。
しかしあの人の指には私以外との指輪がついている。
私はあの人が嫌いだ。