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【1分読書】『イタチの胸』

『イタチの胸』
 下り坂を行くと、その先に一匹のイタチがいた。そのイタチは私がイメージするものより一回り大き黒々とし、こちらをじっとりと凝視している。坂道に足を進められ、徐々にスピードがついてくる。段々と自分の力ではどうしようもならなくなり、気付けば駆けていた。
 そのまま真っすぐおいで。
 イタチの口がそう動いた。錯覚では無く、たしかにそういった口の動きをしたのだ。もう、足の自由が効かなくなり、転んでしまいそうなくらいに早く走っている。
 こっちにおいで。
 次は音としてこちらに聞こえてくる。イタチの声は太かった。肉の塊のように転げる私は、そのイタチに抱かれる夢を見る。



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