ハワイ少女

その少女はいきなり乗ってきた

タンタラスの丘に景色を眺めに行った帰りだ
タクシーに乗っていた僕らに運転手が
『あの子を乗せてもいいかい』
そう聞いてきた
するとそこにはまだあどけなさが残っている少女が
坂をポツポツと降っていた
僕はあまりこだわりがない
これも旅の思い出だと思い
運転手に『イイですよ一緒に乗せてあげてください』
そう言った
すると運転手はニコリと笑い少女の真横でタクシーを止めた
少女はこっちを向いてニコリと笑った
運転手が『カモン』そう言うと少女は嬉しそうに乗ってきた
僕達はその少女と少しだけ話しをした
小学校の4年生で、学校の帰りらしい
いつもこの坂を降るのが疲れるとこぼしていた
坂を降りる途中、少女のクラスメイトを追い越した
その時少女が窓を開けて何かを叫んでいた
それが何かは聞き取れなかったが
とても楽しそうで、見ている僕もなんだか嬉しい気分がした
少女からプルメリアの香りが、かすかに香ってきた
どうやら庭先に生えているプルメリアの花を掌で叩いて
自然のフレグランスを作っているようだ
坂を下りると少女は僕達に一礼をして路地に消えていった
少女が降りていった車内には、少女が残していった
プルメリアの香りと、爽やかな雰囲気が漂っていた
僕達はこの島がまた少しだけ好きになった

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