理念浸透の強さが裏目にならないための、MVVオンボーディングの必要性
カミナシのようなスタートアップに限らず、ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)浸透の重要さは広く謳われており、採用観点に取り入れたり、表彰や評価、社内メッセージングなどの既存社員向けの施策に取り入れている企業も多いのではないでしょうか。
今回は、社内施策でも初期に位置する「入社オンボーディングにおけるMVV浸透施策のあり方」について、自社での取り組みも紹介しながら書いてみました。
カミナシのMVVに対するスタンス
私たちカミナシも、組織が小さいときからMVVを事業成長と組織運営の重要な要素として位置づけてきました。
以下のCEO諸岡のnoteは確かカミナシの社員数がまだ10名前後だったころに書かれたもので、早期からMVVを含む組織文化を重視していたことがわかります。
経営陣は今もなお、MVVに関してはマインドシェアを高く持ち、日々色々なシチュエーションでミッション・ビジョンを語り、バリューを率先して体現し続けています。そして経営陣に限らずメンバーも同様に、MVVの理解と体現を高いレベルで実践しているメンバーが多くいることも、手前味噌ですがカミナシの大きな強みだと思っています。
(カミナシメンバーの発信noteの多くにバリューのフレーズが自然と登場していることもそれを物語っています)
現場で行われる日々のコミュニケーションの他にも、HRとしても全社規模の取り組みを行っています。特に半期ごとに行われる All Hands Meeting (全社総会)では、ワークショップやディスカッションなどを通じて、毎回全社員が強度高くMVV と向き合い、理解や咀嚼をできるような機会を設けています。
▼過去の All Hands Meeting での取り組み
MVV浸透の強度が高いがゆえの課題
しかし半年に1度のAll Hands Meeting というスパンの場合、その間に入社してくる新規入社のメンバーが数ヶ月の間MVVの理解・咀嚼機会を得られずに最大半年近く経過してしまうことになります。
当然、All Hands Meeting以外でもHRの他の施策や、チーム内での会話、経営からの発信などを通じてMVVにふれる機会は多くあるものの、入社初期は特に実業務のキャッチアップに忙しく、それが終われば本格的に実務コミットして言っていく過程で、MVVに対してじっくりと時間を取って考えることはなかなか難しいはずです。(実際そういった声も聞きました)
こういった状況で、前述の通り既存メンバーが強度高くMVVの理解・体現をできるような取り組みをしていった結果、
既存メンバーと新規メンバーのMVV理解度や体現度のステータス差分が大きくなってしまう
そして現場メンバー自らでそれを解消する時間を取ることも難しい
という状況が構造上起こりやすくなってしまっていると考えました。
入社初期のうちに、しっかりと時間をとることの重要性と効用
そこで、新しく入社したメンバーもMVVへの理解や解釈を深め、MVVという側面からも組織にオンボードしていけるよう、入社初期に行っている入社オリエンテーションの1コンテンツとして、ワークショップを企画・実施することにしました。
ワークショップ設計のポイント
本ワークショップは、毎月の中途入社者を対象に、3時間のオンライン形式で実施します。設計にあたって特に注力したのは「丁寧な思考の足場を設けること」と「対話も活用し解釈を深める」ことです。
MVVはただフレーズを覚えていれば良いのではなく、自分なりの解釈を通じて実践におちていきます。
そのため、一方的な説明は最小限に抑え、グループに分かれた参加者同士の対話や個人の思考・内省の時間をできるだけ多く設けました。
ワークショップの具体的内容
ワークショップ全体の大きな流れは
導入
第一部:ミッション・ビジョン編
第二部:バリュー編
となっています。ご参考までに、3時間のプログラムの流れをご紹介します。
導入
まずワーク全体の説明や、チェックイン的にグランドルールとしたい考え方についてお伝えします。
この時間で何を目指すのか?というところの目線合わせをまずは行っています。
「ミッション・ビジョン・バリューいずれも深く理解・咀嚼して自分のものとして語れるには時間がかかる」という大前提を共有したうえで、「今日で完璧になろう」ではなく「今日、第一歩目を踏み出そう」というスタンスでワークに臨むというスタンスを共有しています。
MVVのような抽象度の高いテーマでの議論やワークでは、「正解を出す」「きれいに整理して語る」ということを常に行うことはなかなか難しく、むしろそれを目指すことが自身の思考やアウトプットを制限してしまい兼ねません。
そこでグランドルールとして「正解かどうかにこだわりすぎない」「荒削りさを歓迎する」というような目線合わせも同時に行っています。
その他にも、カミナシとしてのMVVそれぞれの考え方などの情報提供も行い、目線を合わせたうえでワークに入っていきます。
第一部 ミッション・ビジョン編
ミッション・ビジョン編では、まずCEO諸岡が「ミッション・ビジョンの自分ごと化」について以前のAll Hands Meeting で語った内容を参加者で確認しつつ、
1. 自分の価値観を再確認する
2. ミッション・ビジョンを再解釈する
3. 自分とミッション・ビジョンの紐付きを見つける
という3ステップでワークを行います。
第二部 バリュー編
バリュー編では、5つあるバリューの内容や設定背景について補足も入れながら説明をしていきつつ、自身の業務に当てはめた具体的な体現イメージを考えていくワークを行います。
キャッチーなメインコピーとサブコピーの行間にある想いや解釈ズレが起こりやすい部分については特に丁寧に説明しています。
ワークは比較的シンプル。
その他、ワーク進行のポイント
先ほど「グループに分かれた対話」と記載しましたが、社歴が浅くまだ関係性が深まっていないメンバー同士だけで活発なディスカッションや対話を行うことは、誰であってもなかなかハードルが高いはずです。
そこでHRメンバーがファシリテーターとして各グループ(ブレイクアウトルーム)に参加し、会話の進行でつまづきそうな部分のフォローや、会話が停滞した際の問いかけなどを行いながらサポートしていくスタイルにしています。
実施から得られた気づき
実のところ実施からまだ数ヶ月ですが、実施してみて良かったと思う点が既にいくつもありました。
まず参加者のメンバーからは「MVVに落ち着いて向き合う時間を、入社初期のこのタイミングで取れて良かった」というフィードバックも貰え一安心しています。
またワークの内容を自己開示の一環でご自身でチーム内に展開してくれているメンバーもいるなど、想定以上の効果も見えてきています。
また今後に向けての新たな進化ポイントも見えてきています。例えば数カ月後のフォローアップ機会を設けたほうがより効果的かもしれない、というアイディアもHR内の振り返りからはでていたりするので、MVVのオンボーディングと浸透という領域については、まだまだ試行錯誤を続けていくことがたくさんあるなと感じています。
まとめ
ということで今回は、「入社初期」の理念浸透施策のデザインについて着目してみました。表彰や評価など、ハレの施策がどうしても思いつきがちですが、実は第一歩目を早期に踏み出しておけることの効用は大きいように感じます。
繰り返しになりますが、MVVは単なる言葉ではなく、日々の意思決定や行動の指針となるものです。このワークショップを通じて、新しく参加するメンバーがMVVを自分なりに解釈し、実践していく第一歩をサポートできる体制を作れたのは良かったなと思います。
それでは!