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採用チームの貢献価値は、まだ進化する - 組織開発経験が気づかせたそのポテンシャルと、今思い描く採用チームづくりのビジョン

実は、今月より採用チームのマネージャーを担うことになりました。

僕のHRキャリアのスタートは採用だったのですが、その後軸足を移し、直近では組織開発の領域にどっぷりと浸かり、人事制度設計や理念浸透など、いわゆる組織人事領域における様々な経験をしてきていました。

そしてその経験を経たうえで改めて採用という領域に向き合い直したところ、新たな気づきをかなり得ています。人事制度の設計や運用、組織課題への対応、理念浸透の施策立案など、組織開発の実務経験を通じて培った「組織づくり」に対する視点が、人材採用という活動の可能性を大きく広げていける可能性がある、と採用領域に戻ったときに気づいた、というわけです。
今回のnoteでは、組織開発どっぷりだった男が、改めて採用領域に向き合ったときに見えた景色について、綴ってみたいと思います。

半ば自分語りぎみではありますが、リクルーターとしての今後のキャリアを考えられている方や、採用チームをマネジメントされている方にとって、多少なりとも示唆を得ていただけるようなものになれば嬉しいです。

組織開発視点で見えてきた、人材採用活動の奥行き

採用は組織づくりのファーストステップである、という強烈な実感

採用は、「良い組織づくり」のファーストステップであり、1丁目1番地です。これは以前から頭では理解していたものの、組織開発という領域での実務経験を経て、今ではより深い理解と実感を伴ってハラオチしています。

ただ、組織開発と採用の両領域に実務者として関わった今、この領域同士は言葉で語られる印象以上に密接につながっている(つながっているべき)であり、その接続を強く持てたとき、とても高いレベルでの人材マネジメントが行えるという感覚を抱いています。

どういうことかと言うと、組織開発の実務で私自身、オンボーディングや人材開発・組織開発、理念浸透、その他組織課題の解決など、様々な局面に携わりましたが、やはりすべての始まりとなる「人材採用」による期待値あわせのレベルや、時には不幸にも起こってしまったエラーが、オンボーディングや人材開発など各組織開発領域においても重要な因子として影響力を及ぼしている、要は採用領域と組織領域は独立しあっているのではなく、完全地続きになっているのだと強く感じました。(文章で書くと至極当然のような印象なんですが)

これはつまり、組織開発の立場から「採用フェーズでこういう取り組みができるのではないか」というイメージがいくつも浮かんでいた、ということでもあります。

採用は組織づくりにおける「いくつかある選択肢うちの1つ」でありつつも、すべての起点となる極めて重要なピースであると強い実感をもっていますし、だからこそ、組織開発の観点をもって取り組めることがたくさんある!と鼻息を荒くしているところでもあります。

つまりどういうこと?というコメントもいただきそうなので、2つほど例を用いて語ってみたいと思います。

例えば①:チームづくりビジョンを人材要件に転化する

組織開発の視点から採用を見つめ直すと、求人一つを作るにしても、より多面的に思考をすることができるようになります。単なる求めるスキルセットや経験の羅列にとどまらず、この求人で入社した方が参画後に実現するチームの未来、獲得するケイパビリティや解決が進む課題、あるいはその人自身が数年後にどういう挑戦機会を得て、その結果会社にインパクトを与えているのか。こういうことを想像しながら求人票に反映していく、というようなこともできるようになっていくと思っていますし、このような求人要件の深さを出していくアプローチは結果として求職者とのFit&Gapの質を高め、よりお互いが幸せになる人材採用を実現できるアプローチになるとも感じています。

具体的な例としては、こんなケースがあり得るかもしれません。例えばマーケティングチームの組織づくりのビジョンとして「全員が将来的にはマーケティングジェネラリストになってほしい」というものがあったとします。そんな中でも、ジェネラリスト人材の希少性や足元の状況をふまえ直近ではWebマーケターやイベントマーケターなど、特定領域のスペシャリストも募集をしていくというようなこともあるかもしれません。

このとき、「将来的には全員がジェネラリストに」というビジョンをふまえてこのスペシャリスト求人で求める人物像を考えていくと、その人自身が高いレベルでイベントを企画・実施できる、という要件に留まらず、「その専門性をチームに還元できる(=他のメンバーがその専門性を獲得する支援ができる)」という要件も満たした人材であるべきではないか、というような新たな要件要素を提案できるのではないか。

要は、こんなことを考えています。

例えば②:人材パイプラインを意識した採用戦略

また、別の例としては、人材開発、タレントマネジメントという観点から、採用要件の観点を構築していくこともできるかもしれません。

例えば、今度はセールスの採用の例で考えてみます。例えば、シニアクラスとミドルクラスのセールスパーソンをそれぞれ同時に採用募集開始する場合を考えてみます。この時、ミドルクラスの求人要件を意図的に第二新卒のような若手のハイポテンシャル層にぐっとフォーカスするという提案をするというようなアクションも、タレントマネジメント観点で起こり得ます(純粋な採用難易度の観点ではなく)。

これはどういう例え話かというと、組織における人材のパイプラインやポートフォリオを意識した戦略的な採用設計です。リーダー、マネージャー、シニアマネージャー、役員クラスのそれぞれの人材、あるいはそれぞれの候補人材がバランスよく組織に存在しているか。そういった人材のポートフォリオ、パイプラインを意識した上でミドルクラスのセールス採用を捉えることで、単純なスキルや経験、また足元の貢献価値だけでなく、その人がその後のキャリアで組織においてどういう立ち位置になっていってもらうのか(=組織がどのような人材パイプラインを抱えることになるのか)、そのためにスキルや経験以上に求めるべき要素は何か、そういった観点から要件を設計していくことができます。

この例でいくと、あくまでイメージですが、

  • 現状、中途採用が主体なのでシニアクラスが集まっている。これ自体は良いことだが、その人達のキャリアアップの先した後で後任となるファーストラインマネジャー候補が内部にいない

  • つまり、将来も常にファーストラインマネジメント人材を外部採用をかけ続ける状態が考えられる。

  • そして当然マネジメント人材の採用難易度、オンボーディング難易度はともに高い。

  • だとしたら、数年単位でマネジャーやその先の幹部候補になり得る伸びしろの大きいハイポテンシャル人材を戦略的に受け入れ、社内で成長支援しながら、内部でのキャリアアップによってマネジメント人材を担ってもらうのはどうか

というような思考を元に人物像を提案していくことができるかもしれません。

これらの高い解像度を武器にした、採用プロセスのグレードアップ余地

上記2つの例で語ったようなプロセスをもとに組織開発領域まで広がった視野は、採用プロセス各所のグレードアップにも活かすことができると感じています。

例えば、カジュアル面談で何を語るのか、どういった時間を過ごすのかというところをもう一段具体的にする。単純な会社やチームの説明だけでなく、今採用しているポジションの期待値や、参画後にチームに起こる変革、そしてその人自身が中期的にどのような挑戦機会を掴んでいくのか、という「その人の入社後の世界」をより具体的に、鮮明に語ることができ、候補者さまも「自身がその世界の中に存在しているとイメージできるか?」を確かめることができる。結果として双方にとって価値のある時間を過ごし、採用選考においてもより効果的な時間にしていくことができそうです。

あるいは求人票についても、その人が入ったことによるチームの変革や価値創造を語りつつ、候補者視点で見ると、この求人にエントリーし入社することで候補者自身にどういったベネフィットがあるのかを明確に示すことができる。その候補者が期待されている価値発揮や価値創造に対して関心を持てるというベネフィットであり、その価値発揮やパフォーマンスを通じてどのようなキャリアステップがあるのかというところもイメージしながら求人票を眺め、応募するかどうかを判断できるようになるかもしれません。

・・・

かなり長めに記載してしまいましたが、これらの例を示しながら語りたかったこととしては、(少なくとも私が以前まで認識していたもの以上に)リクルーターとして現場組織に提供できる介在価値は、想像以上にとても多彩で、それゆえに面白い、そしてその結果として成果をもっと伸ばすことができそうだぞ、ということかなと思っています。

そういうことができるポテンシャルが、リクルーターというロールにはあるんじゃないかと、そう感じています。

採用チームと事業部門の協働スタイル

ここまで、だいぶリクルーター視点のポテンシャル連呼のような内容でしたが、人材採用はチーム戦。現場での協働をどのようにすることで、ここまで書いたような価値発揮を実現できるのか?について、考えていることをここから書いてみたいと思います。

Hiring Managerとの協働関係の構築

現在私が所属しているカミナシでは、リクルーターが書類選考や面談、スカウトを直接行うことはありません。いわゆる全社採用、あるいは現場連動型と言われる採用スタイルを取っており、現場部門のメンバーがスカウトやカジュアル面談といった採用選考実務を担当し、Hiring Managerがそのアサインメントやハンドリングを行う形式です。最近のスタートアップやベンチャーでは多く見られるフォーメーションだと思います。

この場合、リクルーターは、Hiring Managerのアクションに対する助言やコンサルテーションのような働きかけ、リクルーターならではの視点をもとにHiring Managerの思考を補完していく、またそういったアプローチも含めて選考プロセス自体に対するオーナーシップと牽引力を発揮していく、そんな関係性を築いています。

この体制で成果をあげていくうえで重要なのは、リクルーターの採用プロフェッショナルとしての関わり方だと思っています。現場のHiring Managerのオーダーを御用聞きのようにこなしていくのでもなく、逆にリクルーター自身が考えるやり方を一方的に指揮・命令するのでもありません。このようなどちらかにパワーバランスが寄った関係性をつくるのではなく、対等な協働関係を構築するのが理想で、カミナシでもそれを志向しています。

ファシリテーターとしてのふるまいが成功の鍵ではないか

ここに、前述した「中長期的な組織づくりを意識した多彩な提案」をしていくことを考えたとき、この協働関係を更に進化させていく余地もありそう、と感じています。

前述のマーケターの例にしてもセールスの例にしても、前提としてリクルーターが現場のHiring Managerが思い描く組織ビジョンや、あるいは感じている組織課題を、本人との対話を通じて鮮明に捉える必要があります。現場のマネジャー以上に、組織のことを深く考え、解像度高くもっている人物はいないからです。

一方で、採用市場の最新トレンドや、採用選考プロセスそのものに対する理解度・実践知は、当然リクルーターの方にあります。

このように、それぞれが持つ別々の高い解像度を前提として「人材採用」という1つの目的を果たすためには、このテーマにおけるそれぞれの「見えている景色の非対称性」を意識することがとても重要だと思っています。
そして、その景色の違いを認識し、そのギャップを埋めながら目的を達成していくという、ファシリテーターのような役割が現場連動型のリクルーターには求められているはずなのです。

現場のHiring Managerが思い描く組織づくりを実現し、かつ採用選考において彼ら彼女らが適切な意思決定やアクションを取れることで、人材採用活動が正しい方向に向かえるよう、リクルーターはそれに必要な働きかけや情報提供、対話をしていく。

これを実現するためには、人材採用というテーマにおいてリクルーター者自身が見ている景色と情報の非対称性のある現場のHiring Manager(あるいはその他の採用ステークホルダー)が、リクルーターの意見やその背景を理解し、納得・ハラオチし、正しい方向に一緒に進んでくれるために、どういった情報提供や働きかけ、アプローチが必要かをリクルーター自身が考え、適切なコミュニケーションのオプションを選択しながら対応を進めていくというファシリテーション能力が必要です。

より広い視野を持つ採用チームであるために、マネージャーとしてできること

ここまで、結構偉そうに、大きなことを語ってきた気がします。実際、過去の自分自身のリクルーターキャリアをふまえても、ここで書いていることを十分にやれていたかというと全くそんなことはありません。世間一般的にも、俯瞰的な視野を備えたリクルーターの方は希少ではないかと思います。

ただ、そのうえでも、ここまで書いてきたことを実現できる採用チームを、僕はつくりたいと思っています。

リクルーターが組織開発的な視点を身につけるには、まず人事としての一般教養として、いわゆる組織論や人材開発、組織開発の理論を知っておくことが重要です。ただし、これは単なる知識として知っているというよりは、肌感覚としてもち、普段の業務でも自然とそういうレンズでものごとを眺められるようになっているということが大切です。

  • 自分自身の仕事をより多面的・立体的に捉えるために、採用という領域に知識や視点を閉じず、組織づくり全体に視点を広げる。

  • そのために必要な知識を取り込み、自分自身の視野を広げていく。

こういうことを言っているわけですが、これは一朝一夕には身につかないかもしれません。しかし、不可能ではないはずで、組織開発チームとの連携や、採用チームの習慣や価値観を徐々に進化させ、視野を広げていくことができるはずと思っています。

おわりに:採用という営みの奥深さ

私自身、組織開発に携わっていた時には、採用領域に戻った時にこれほどの新たな気づきが得られるとは想像していませんでした。しかし、一度採用から離れ、組織開発領域にどっぷりと浸かった経験があったからこそ、人事という領域が有機的につながっていること、そして採用がその重要な一部であることを、体感をもってより深く理解できたのだと思います。

今、採用に携わっている方の中には、HR領域のファーストステップとして採用から始められている方もいらっしゃると思います。その方に対しては、採用が独立的な営みではなく、あらゆるHR領域と連動して相関関係を持ちながら成立している営みであること、採用以外の観点からとても多くのヒントや価値発揮の材料を得られるのだということを、ぜひ知っていただけたら良いなと思いますし、ぜひ組織開発の沼に浸かってみてほしいです。

逆に、組織開発に携わっている方には、採用というものを組織開発の一つとして捉えていただきたいですし、実はいろいろな観点を提供して採用プロセスに価値提供出来うる、ということを知ってもらえたらなと思います。

さいごに

思いのままに筆を走らせたら、だいぶ長文になってしまいました。。ここまで読んでいただいた皆様、お付き合いありがとうございます。

ここに書いていることは、執筆した現時点では、僕自身の、たった一人の熱狂かもしれないです。また、採用チームのミッションや必要なケイパビリティのほんの一側面しか語れていないとも思います。

ただ、採用チームマネージャーとして、組織づくり、その先にある事業推進を担う立場として、これくらいの熱狂をもちながら、最強と自身を持って言える採用チームを作っていきたいと思っています。

どういうことかというと、、今、一緒に採用チームで働いてくださる仲間を熱烈募集中ですので、ぜひ興味を持っていただいた方、お話させてください。

あと、X(Twitter)もやっているのでぜひ絡んでください〜 👉️ @INOUERAY

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