クズみたいだが味のある本
今年亡くなった古書マニア、唐沢俊一は、古書収集の方針を次のように書いた。
「名作とか傑作の類は、何度でも重版されて、ずっと手に入るから捨ててよい。しかし、クズみたいな本は、二度と手に入らない。手元に置け」
以下の本は正真正銘のクズ本である。
著者、瀬木 志津夫は、高卒の印刷工から身を起こして司法試験に合格し、弁護士になった苦労人だ。
難しい裁判で勝利したとか、社会運動をやったとかではない。著書もこれ一冊きりだ。
なんでこの本を自分が持っているかといえば、祖父が著者の葬式でもらってきたのだ。饅頭本というやつだ。
饅頭本(まんじゅうぼん)とは? 意味や使い方 - コトバンク
自宅に放置されていたこの本を祖父の遺品から見つけて読んでみたら、悪くない。意外とおもしろい。
瀬木氏は、電算機によって、写植の活字を拾う仕事がなくなってしまってしまって、仕方なく弁護士になった人なのだ。
昔の仲間の生活が破綻していく様子が書いてあって。印刷業界の苦しさが伝わってくるのだ。
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