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英語以外の現地の言語を学ぶ選択|海外・香港

海外で暮らすことになったり、働く場合、その国、都市の言語を学ぶかどうかは、とても大切な選択になります。英語のように世界の共通語なら、学んでおいて間違いないと思う方が多いと思いますが、現地の言葉ならどうでしょう?

英語だけでいいと思っていた時期

わたしは香港へ移住する前は、オーストラリアで英語を学んでいました。海外に出る前の職場に元CAの先輩がいて、外国から来られたお客様に流暢な英語で会話をしているのを聞いた時に「かっこいい!」と憧れたのがはじまりでした。

英語は、学んでみると、どこに行っても便利な言語だし、映画も音楽も本もスポーツもビジネスも…世界共通の言語としても機能するし、これさえ学べば世界は大きく広がった!そんな気になっていました。実際、英語が出来るようになると、世の中には、こんなにも考え方も見方も常識も違う人たちがいるんだなと、交流を通してリアルに広がった世界を楽しみ、学んでいきました。

そんな中で、結婚を機に香港へ移住。
香港は広東語、英語、普通語(中国語)が公用語。英語ができたら、暮らしていくには不自由はない、とても便利な都市でした。香港人のパートナーとも英語で充分コミニュケーションはとれていたし、正直言うと、香港では英語があるから、中国語も広東語も学ばなくてもいいと本気で思っていました。

現地の言葉(広東語)を学びたくなった理由


でも、実際に住み始めると、香港の中にも英語が得意としない人はたくさんいたし、英語を話す人たちも、香港人同士なら広東語で話している人がほとんど。

わたしが広東語を学びたくなったひとつ目の理由は、この香港人同士の広東語の会話に入っていきたくなったからでした。親戚同士で飲茶に行っても会話に入れない時も多かったし、同僚同士が会話している内容がよくわからないときは、特に楽しそうな話をしているときには、入っていきたくて仕方がなかったものです。

ふたつ目は、現地での生活がよりローカル化していくと、生活の中で必要に駆られてと言うのもありましたが、わたしに何かと不平を言っていた義理の母に広東語で言い返したいと思ったのがひとつ目の理由。笑。

みっつ目は、広東語で話すようになると仕事でもプライベートでも「仲間」と思ってもらえて、日本人(駐在員)の人たちが収集できないだろう「話」や、公共の電波も含めて、普段の人々の会話からの「情報」の量が英語で仕入れるよりも圧倒的に多いことでした。

現地の言葉の変化から見る香港の移り変わり

わたしが住みはじめた1990年後半。香港では、英語も中国語も広東語も話せる人が多くて、特に年配の方は語学が非常に長けていると感じたもの。おまけに中国大陸から香港へ移り住んだ人は、中国の出身地の言葉も話せます。

だから、2〜3つの言語が話せるというのは香港では、すごく当たり前のことでした。パートナー子どもたちも4つの言語が話せますし、義理の母も3つの言語。ちなみにわたしも日本語を入れて3つの言葉が話せるようになりました。

英語も中国語も広東語も公用語で、香港の人は国際都市という環境に慣れていたので、海外からの移住者や旅行者には、住みやすい街だと思います。特に日本好きの香港人が多い香港では、日本に対して好意的に思ってくれているので、日本人にも住みやすい都市のひとつだったことは間違いないでしょう。

1990年代から2000年代は、普通語(中国語・北京語)を香港でしゃべっていると下に見られる風潮(いわゆる差別)があったので、広東語以外の言語だと、香港人は英語を話すことを選択していた。そんな時代でした。日本人の友達は、上海人のパートナーとお子さんがいましたが、家族では日本語と中国語がメイン。「当時は、中国語を話すと冷たくあしらわれたものよ」と言います。それは、側から見てもわかるようなものでした。

2010年代以降は、英語を話すことが苦手な香港人が増えたように感じましたが、それでも、話せる人は多かったと思います。

今年、2024年、街はずいぶん様子が変わっていました。街中で聞かれる中国語(普通語)の量がすごく増えました。中国大陸からの移民も増え、以前なら、大陸の人が香港で普通語を話すのに少し申し訳なさを感じたものですが、今は、普通語を話すことは「当たり前」。すでに照れも申し訳なさも必要ない、市民権を得た言葉になっていることを実感しました。英語を聞く量は、すごく減ったように感じました。

現地の言葉を学ぶ利点

わたしは香港に暮らしていく中で、現地語を学ばなくても良いと思っていましたが、のちに自己流で、独学で学び、生活、仕事の中で広東語を使うようになっていきました。この選択は正しかったですし、わたしの人生の財産になりました。

やっぱり学んでよかったと思うのは、香港人の人たちの会話の細やかなニュアンスを読み取れたり、英語で話すよりも現地の人からは多くの情報を得ることができたことです。

また、中国での仕事があるときには、日本人と思われるよりも香港人と思われる方が都合が良い時期があったので、そのときには、広東語で話し、香港人の女性のふりをしたこともあります。

また、仕事では、日本人として中国で会議に参加するときには、最初の頃は日本語と英語しかわからないフリをして、参加をしていたこともありました。交渉相手と私の通訳とのやり取りの中で、交渉相手が通訳に対しておかしなことを言い出すと、広東語で切り込むこともしました。すると交渉相手は大いに驚くのですが「井上の前では悪いことはできない」と後に笑い話になったことがありました。

これは、香港の職場でも同様でした。駐在員の方で広東語がわかる方は多くなかったので、現場のスタッフは表向きはいい顔をしていても、広東語で本音を漏らしたりします。そういった細かいことですが、

現地の言葉ができるということで、コミニュケーションでの利点が多く、特に交渉では本当に役に立ったものです。


最後に

現地語を学ぶ機会があるならば、ぜひ学ぶことをおすすめします。
英語はもちろんビジネスの共通語なので、一番にお勧めしますが、現地の言葉が学べる環境なら、学ぶことをお勧めます。

駐在員として、短期間であったとしても、現地の言葉が話せるだけで、現地の社員の対応もより温かみのある交流もできるでしょうし、何よりもコミニュケーションがぐんと近くなるものです。現地スタッフも駐在員の現地での覚悟と心意気と努力を見ているものです。

ビジネスを、組織をスムーズに運営するひとつのエッセンスとしては、活かせるはずです。また、現地に長期間住むのであれば、英語以外の現地の言葉を学ぶことを100%オススメします。

では…


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