消化性潰瘍

こんにちは、いのたろうです。
今回は消化性潰瘍について勉強していきましょう。

1.消化性潰瘍の病態生理

消化性潰瘍とは、胃や十二指腸に生じるびらんで、胃酸やペプシンなどの攻撃因子と粘液、プロスタグランジンなどの防御因子の不均衡によりもたらされ、原因はNSAIDsの投与、アルコール、喫煙、ストレスなどがあげられます。患者は、心窩部痛、胸やけ、げっぷ、腹部膨満感、悪心・嘔吐などを自覚症状として訴えますが、消化管出血が起こるまで無症状の患者もいます。胃潰瘍は食後に痛みを感じることが多いですが、十二指腸潰瘍では空腹時や夜間に痛みを感じるという違いがあります。
ちなみに、粘膜筋板を超えた組織欠損を起こした状態を潰瘍、組織欠損が粘膜層にとどまるものをびらんというので覚えておきましょう。

日本人ではNSAIDsの服用による消化性潰瘍が最も多く、次にH.pyloriの感染があげられます(これらが二大要因)。また日本では十二指腸潰瘍より胃潰瘍のほうが多く、前者は若年者に多く男女比は3:1と男性に多く、後者は中年以降に多く男女差はないと言われています。
診断は胃や十二指腸の上部消化管内視鏡検査により確定しますが、消化性潰瘍であれば、H.pyloriの感染も確認します。
治療は、出血性潰瘍ではまずは内視鏡的治療が行われます。また、潰瘍の疼痛のため、PPIなどの酸分泌抑制薬を使用します。H.pylori陽性であれば除菌を行います。
患者によっては低用量アスピリンなどの抗血小板薬や、NSAIDsの服用により胃潰瘍を起こしやすいこともあるため、服用している薬剤を確認することが大切です。NSAIDsによる上部消化管障害の病態は、粘膜に対する直接作用や、COX阻害による胃粘膜のプロスタグランジンの減少で、粘膜防御能が減弱することにより起こります。患者の薬剤の服用歴を確認し、NSAIDsが原因と考えられる場合は、その薬剤を中止します。ビスホスホネート製剤やステロイドも発症に関与している場合があるようです。

基本的には良性疾患であり、予後は良好であると言われています。H.pylori陽性では2-3%が潰瘍に至りますが、除菌成功例では、潰瘍再発率が著しく抑えられます。

2.消化性潰瘍患者に対する検査

出血性ショックを起こしている患者は、頻脈、発汗、頻呼吸、錯乱などを示すことがあります。出血量を推定し、輸血や輸液が行われます。また、吐血している患者では出血性潰瘍の可能性があるため、Hb、PLT、RBCなどの検査値から、出血傾向の有無を確認し、治療を始めます。また、内視鏡によって出血性潰瘍が認められた場合には、内視鏡的止血術が試みられます。
止血法としては機械的止血法、薬剤局注法(血管収縮薬、硬化薬)、凝固法などを状況に応じて使い分け、場合によって併用します。ここは難しいので僕は深掘りしないでいきたいと思っております。

H.pylori感染の確認については、H.pylori抗体測定、迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法、尿素呼気試験、便中H.pylori抗原測定などがあり、除菌療法により、胃潰瘍の治癒促進効果、再発予防効果が得られます。H.pyloriはウレアーゼ活性をもち、尿素からアンモニアを産生し、そのアンモニアが胃酸を中和するため胃内でのH.pyloriの生存を可能にしています。それらを利用して上述した検査を行っています。多分。

NSAIDsによる消化性潰瘍発症のリスクファクターは上位の項目ほど、リスクファクターとなり、数が増えるほど発症リスクも上昇します。ちなみに消化管出血を伴った潰瘍既往歴がある場合がリスクが最も高く、それに続いて複数のNSAIDs、高用量、抗凝固薬などがあります。
あと、PPIやエカベトナトリウム水和物はH.pyloriに対して静菌採用を有するため、これらの服用を除菌判定直前4週間前にやめないと偽陰性になってしまうため注意が必要です。

3.消化性潰瘍の薬物療法

消化性潰瘍はH.pylori陽性かどうかで治療法が異なってきます。H.pylori陽性の場合は除菌療法が最も有効であり、一次治療としてはPPIとアモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法を行います。PPIは具体的には、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾールがありますが、いずれも効果に差がないため、アドヒアランスの観点から除菌用3剤のパック製剤の有無や、後発品の有無、相互作用の違いを考慮して決定します。最近ではボノプラザンが従来のPPIよりも高い除菌率が期待できるためボノプラザンを使用する傾向があります。H.pyloriは抗菌薬に対して耐性を生じやすいため多剤併用療法を行います。用法用量はボノサップパックを例に挙げると、ボノプラザンとして1回20mg、アモキシシリン水和物として1回750mg及びクラリスロマイシンとして1回200mgの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与します。院内にはパックがないため油断しているとPPIが1日2回だと?!?!問い合わせだ!!で医師からため息をもらいます(笑)
一次治療で除菌に失敗した場合、二次治療としては、PPIとアモキシシリン、メトロニダゾールの3剤併用療法が推奨されます。除菌療法の副作用で最も多いのは下痢、軟便であり、予防に整腸剤を併用するとよいと思います。それ以外では、味覚異常、舌炎、口内炎などもあります。除菌終了後も安心せずに逆流性食道炎の出現には注意が必要です。保険適用外にはなりますが、3次治療もあります(シタフロキサシンを含むレジメン)。重要な注意点としては、3次治療を行う前にH.pylori感染を適切に診断できているか確認することです。まあ僕はちゃんと診断できてます??なんて医師に言えないので珍しい!って調剤しそうですが、、、(笑)

H.pylori陰性の場合は、酸分泌抑制薬であるPPIが第一選択薬となります。PPIをアレルギーや副作用のために使用できない場合は、H2受容体拮抗薬、選択的ムスカリン受容体拮抗薬、防御因子増強薬であるスクラルファートやミソプロストールなどを使用することもありますが、その際はまずH2受容体拮抗薬を優先します。ミソプロストールは子宮収縮作用があるため妊婦に対しては禁忌であるため知っておくとよいと思います。
PPIと防御因子増強薬との併用療法は、現時点で胃潰瘍治療の上乗せ効果のエビデンスがないので勧められていません。
ちなみに、飲酒によりPPIの効果が下がること、大量の薬剤を飲むため肝臓に負担がかかることより、除菌療法中は禁酒になります。メトロニダゾール服用であれば言うまでもなく禁酒ですけども。ちなみにメトロニダゾール服用終了後どれくらい時間をあければ飲酒してもいいかというと、はっきりと断言されたものは見つけられませんでしたが、2日間以上空ければ血中濃度は100分の1以下に低下するため、臨床的な影響は大分低くなるとのことなので、服用終了後最低2日間は飲酒は控えたほうがよさそうですね。

相互作用の観点からは、まずワルファリンがあげられます。PPIやクラリスロマイシン、メトロニダゾールはワルファリンの代謝酵素を介する薬物間相互作用によって、ワルファリンの代謝を遅らせ、結果としてワルファリンの効果が強まるため注意が必要です。ワルファリンの内服中止が可能なシチュエーションであれば中止して除菌を行うべきだと思いますが、中止が難しい場合であればINR等でモニターをしながら慎重に除菌を行うのがよいと思います。

次にクラリスロマイシンとの相互作用ですが、これはもう有名なので薬剤師ならどんな薬に注意するかイメージできますよね。これもまたリスクとベネフィットを考慮することになると思いますが、併用薬を中止できるのであれば中止してクラリスロマイシンを服用すべきだと思います。中止が難しい場合は併用によりどれくらい併用薬の血中濃度が上昇するのか、上昇することによって起こりうる有害事象は何かを考えて投与の可否を決めていくことになると思います。どうしても併用薬は中止できないけどクラリスロマイシンと併用するのはやめてほしいなあという場合はメトロニダゾールを用いた二次除菌レジメンで治療を行うことになりますが、メトロニダゾールも相互作用に注意が必要なので慎重に行きましょう。

胃潰瘍は一般にH.pyloriによる萎縮性胃炎を伴っており、胃がん発生のリスクも高いため、定期的な観察が必要なのも注意すべき点です。それ以外では特発性血小板減少性紫斑病(ITP)なども関連性が認められているようです。
それ以外ではPPIは添付文書上、投与日数制限があるのでそこも注意が必要です。

患者に指導をするときは、症状の消失が潰瘍の治癒とはならないことを説明し、自己判断で服薬を中止しないよう指導する必要があります。ボノプラザン以外のPPIは腸溶性製剤であるのでかみ砕いて服用しないよう患者に指導する必要もあります。

文字ばかりで非常に読みにくいですが、徐々にイラストや図を入れて改良していきたいです。第一回なので許してくださいな!

ではでは。