エラスポール

今日も病院実習の時のノートを参考に勉強します。
今回は注射用エラスポール®についてです。

一般名はシベレスタットです。
適応は「全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害の改善」です。
この疾患については勉強不足で正直ちんぷんかんぷんなので割愛。
本日は配合変化を中心に勉強します。

添付文書には、調製時にはアミノ酸輸液との混注は避けること、カルシウムを含む輸液を用いる場合(本剤の濃度が2mg/mL以上)や輸液で希釈することによりpHが6.0以下となる場合は沈殿が生じることがあるので注意すること、と記載があります。
以下、配合変化の起こるメカニズムについて簡単に説明していきます。

①酸性下での結晶析出
エラスポールの成分であるシベレスタットナトリウムはpHが酸性側ではナトリウムが解離し、溶解性の低いフリー体となって結晶が析出します。配合試験成績で特に問題のない組み合わせでもちょっとしたpHや温度の変化により結晶が析出する可能性があるので注意が筆意用です。

エラスポール反応式1


例:ソリタ-T3号輸液(pH5.72)、アクチット注(pH5.45)、ヴィーンD注(pH5.32)。( )内はエラスポールと輸液を配合した際のpH実測値。

エラスポールと輸液配合変化

②Caイオンによる沈殿の析出
シベレスタットナトリウムのNaイオンはCaイオンとの塩交換を起こし、新たに生成されたCa塩の溶解性が低いため結晶が析出します。
⇒Caを含む輸液を使用する場合は、エラスポールの濃度を1mg/mL以下で使用すること。エラスポール溶解する際はCaを含む輸液で直接溶解せず、あらかじめ生理食塩液または注射用水で溶解した後にCaを含む輸液と配合すること。

エラスポール反応式2

③低温化での結晶析出
エラスポールは溶解性が低いため、温度が低下するとより結晶が析出しやすくなります。特にpHが低い輸液に溶解した場合はエラスポールの溶解度が低下しているため、より結晶が析出しやすくなると考えられます。

④残存率が低下する場合
1. アミノ酸による分解
エラスポールアミノ酸輸液と配合すると、経時的に分解されます。分解の原因にはL-システイン、L-リジン、L-アルギニン、L-ヒスチジン、アミノ酢酸が関与しており、特にL-システインによる影響が大きいことが確認されています。また、配合した時のpHが高いほど分解は促進される傾向にあります。
2. アルカリ性下での分解
エラスポールは配合してpHが8.0以上になる場合、経時的に加水分解が促進されます。
例:ダイアモックス注射用(pH9.0~10.0)、ネオフィリン注(pH8.0~10.0)、ユナシン-S静注用(pH8.0~10.0)。( )内は添付文書記載の規格pH。
3. 添加物(亜硫酸水素ナトリウム)による分解
エラスポールは添加物に亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)を含む輸液と配合すると経時的に分解されます。これはNaHSO3の量が多い場合、pHが高いほど促進されます。

エラスポール反応式3

具体的には、イノバンシリンジとの混注で白色沈殿、ガベキサートメシル酸塩との混注直後に混濁、レタメックスとの混注直後に混濁、ハンプとの混注後6時間から不要物の析出、ナファモスタットとの混注直後に白濁、ニカルジピンとの混注直後に白濁、バンコマイシンとの混注直後に白濁、などです。
エラスポールに関しては配合変化がかなり多いため、組み合わせを覚えると死んでしまうので、エラスポールを見かけたら配合変化は大丈夫か調べる癖をつければいいのかなと、僕は思っています。

まだ実際に調剤したことがないので投与の際の注意点はあまりわかっていませんが、前後にフラッシュすればいいのかな?

薬剤師になってからエラスポールに出会ったことはないので、病院実習で出会っててよかったと思いました。

おしまい。

【参考文献】
・添付文書
・注射用エラスポール®100 配合試験成績