WHOがん疼痛治療ガイドライン
今回はがん疼痛治療ガイドラインについて勉強します。
2018年にWHOのガイドラインが改訂されたのでそこを中心にいきます。
まずWHO方式がん疼痛治療ですが、WHO(世界保健機関)が1982年に起案し、1986年に出版、1996年、2018年に改訂した世界基準の鎮痛薬によるがん疼痛治療法です。
ところで、僕らが大学で習った5原則覚えてますか?
①経口的に(by mouth)
②時刻を決めて規則正しく(by the clock)
③除痛ラダーに沿って効力の順に(by the ladder)
④患者ごとに個別的な量で(for the individual)
⑤その上で細かい配慮を(with attention to detail)
これがなんと、1つ削除され4原則になりました。
改訂版では③が削除されて④に含まれる形となりました。これは、同治療法が普及するなかで除痛ラダー、つまり鎮痛薬の選択のみが強調されていたことに対して、投与法も重要であることをわかりやすくしたものといえます。
以下に改訂内容の概要の図を示します。
詳細を知りたい人は「WHO GUIDELINES FOR THE PHARMACOLOGICAL AND RADIOTHERAPEUTIC MANAGEMENT OF CANCER PAIN IN ADULTS AND AOLESCENTS」で調べてみてください。
①経口的に(by mouth)
経口投与は患者1人で実施でき、他の人の助けを必要とせず、患者の自立を助けます。経口投与可能な患者に経直腸投与、経皮投与、注射投与を行うことには合理的な理由がありません。
②時刻を決めて規則正しく(by the clock)
鎮痛薬は時刻を決めて規則正しく反復投与します。投与量は、患者の痛みが消える量とすべきです。
③患者ごとに個別的な量で(for the individual)
オピオイド鎮痛薬には標準投与量や有効限界がないので、初回量はどの患者にも安全な少量とし、その効果をみながら50%前後のタイトレーションを行い、痛みが消失する量を求めます。タイトレーションには速放性製剤を使うのが能率的で、タイトレーション後に徐放性製剤に切り替えて患者の便宜を図るべきです。増量に恐れを抱いて中途半端な増量で満足する医師もいるようですが、これは基本原則に違反しており、是正すべきです。
④その上で細かい配慮を(attention to detail)
処方内容や服用法をわかりやすく書いた紙を渡すこと、鎮痛薬の副作用予防薬を処方すること、患者の心理面に配慮すること、などが大切です。
●鎮痛薬の選択
3段階除痛ラダーに沿って痛みの強さに相応した鎮痛薬を選択する
基本は先に示したラダーに従いますが、毎回必ず第1段目の薬から始めるべきではなく、痛みの強さに相応した段から最初の鎮痛薬を選びます。増量しても効果不十分な場合には、同じ段の他の薬に切り替えても解決はしないので、必ず1段ないし2段上の薬に切り替えます。痛みのアセスメントで中等度から高度の痛みと判断した場合は、最初に 処方すべきは第3段目の強オピオイド鎮痛薬です。
こんな感じです。大幅に変わったわけではないのですが、これからこの話を大勢の前でするときは4原則に変わりました!(ドヤッ)って感じで話しましょう。
ネットの記事などでは改訂後の記事でも5原則のままのものが散見されます。日々情報収集をして知識をアップデートしていくことが大事ですね。
近年、緩和ケアで使用できるオピオイドの種類や剤形が増えていますよね。ヒドロモルフォンやタペンタドールは新しめな印象ですよね。ヒドロモルフォンは米国等では古くから使用されていたので新薬っぽい新薬ではないですが。
ヒドロモルフォンが世界で初めて合成されたのは1922年でドイツで合成されました。それに対してフェンタニルは1960年にベルギーで合成されました。
ね!おじいちゃん新薬でしょ?
スインプロイク®(ナルデメジン)のようなオピオイド誘発性便秘症に適応のある薬も登場していますし、熱い分野です。
今回は書きませんが、各オピオイドの特徴や副作用などをこの機会に復習してみるとよいかもですね。
おしまい
【参考文献】
①WHO GUIDELINES FOR THE PHARMACOLOGICAL AND RADIOTHERAPEUTIC MANAGEMENT OF CANCER PAIN IN ADULTS AND AOLESCENTS
②Q&Aでわかる がん疼痛緩和ケア 第2版 じほう