フェントステープ
お久しぶりです。
最近はやる気が低迷しており勉強は捗っておりません。
久しぶりの投稿をしたいと思います。
内容は以前ツイートしたものに追加情報を足したものです。
ツイッターは文字数制限があるので簡潔にしか書けませんが、今回はもう少し詳しく紹介していきたいと思います。
まずは添付文書の適応を紹介します。
昔の添付文書のデータはないので比較はできませんが、今までは癌性疼痛に対しても他のオピオイドからの切り替えでしか使用することができませんでした。
しかし2020年6月にフェントステープの適応拡大により癌性疼痛に対してオピオイド未使用患者に対してもフェントステープを導入できるようになりました!!
慢性疼痛はだめですよ?
ではまず医療用麻薬について説明していきます。
オピオイドとは、オピオイド受容体に結合する物質のことを指し、医療用麻薬はオピオイドのうちの一つとなります。
そのオピオイドにはモルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなどの医療用麻薬に加え、β-エンドルフィンやエンケファリンなどの内因性ペプチド、ペンタゾシンやブプレノルフィンのような麻薬拮抗性鎮痛薬、非麻薬であるトラマドールなども含まれます。
麻薬というと怖いイメージがありますが、麻薬の捉え方は立場によって相違があり、一般人や行政にとっては覚せい剤や大麻、危険ドラッグ等も麻薬という分類に入ったりしますが、医療従事者にとっての麻薬は麻薬性鎮痛薬や麻薬性鎮咳薬を指します。
オピオイド製剤はいくつかあり、その中でも麻薬指定されているものは本記事の主役のフェンタニルに加え、コデイン高濃度製剤(10%散など)、モルヒネ、オキシコドン、タペンタドール、ヒドロモルフォン、メサドンがあります。
各オピオイドの特徴については今回は割愛します。
フェンタニルの特徴について紹介していきます。
フェンタニルは合成オピオイドであり、μオピオイド受容体の親和性が他のオピオイドより強いという特徴があります。鎮痛効果はモルヒネの75~100倍とも言われております。極性は脂溶性であり、剤形は注射製剤、貼付剤、舌下錠、バッカル錠があります。
またフェンタニルは主にCYP3A4で代謝されるため相互作用には注意が必要となります。
分布容積は3.2~6 L/kgと非常に大きく、組織に比べ血液中に存在するフェンタニルは非常に少ないといえます。クリアランスが高いので肝臓での代謝活性の変化による影響は少なく、肝血流量に大きく影響すると考えられます。なんか薬剤師国家試験の薬剤でこんな文言ありましたよね。
しかし。フェンタニルは血球への移行が考えられ、クリアランスを大きく見積もっている可能性もあるため、CYP3A阻害薬等の併用には注意が必要ですね。
剤形による特徴も簡単に紹介していきます。
①貼付投与
パッチとテープがあり、3日製剤と1日製剤が出ています。貼付剤の制御膜の面積によって投与量が調節されており、皮膚のコンディションによって薬物の吸収に影響がでます。温まると吸収が増強され、乾燥や垢の多い状態でははがれやすく、十分な効果が期待しにくくなります。ちなみに貼付部位の過熱時と非過熱時を比較すると過熱時はAUCが約2倍になるそうです。
②注射投与
投与速度が同じであれば、貼付剤と同等の鎮痛効果が得られるとされています。後述しますが、貼付剤は血中濃度が安定するまでに時間がかかるため、注射剤で速やかに鎮痛を行い、安定した段階で貼付剤に変更する場合もあります。注射剤は術中や術後に使われることもあります。
③口腔粘膜吸収剤
上述しましたが、舌下錠とバッカル錠があり、ROO(Rapid onset opioid)製剤と呼ばれており、従来のレスキューであるSAO(short acting opioid)製剤とは区別されています。使い方も従来のレスキューの考え方ではなく、必ずタイトレーションを行い、持続痛が適切に管理されている場合のみ使用が可能となります。詳しくは添付文書で確認してみてください。
フェンタニルを使用する際の注意点として、効果発現は貼付開始12~14時間後であり、剥離後も16~24時間程度は鎮痛効果が持続するため、迅速な投与量調節が難しいです。貼付後2日間は増量を行わないようにしましょう。
副作用である便秘についても他のオピオイドより起こりにくいとされています。ただ便秘にならないというわけではないので説明には注意しましょう。
また、他のオピオイドから切り替える際、便秘で下剤を服用している患者はフェンタニルに切り替えたことで逆に下痢になることもあるため、しっかりとモニターしましょう。
話は冒頭のフェントステープに戻ります。
そしてまとめます。
オピオイド未使用のがん患者にフェントステープを使用することができるようになったわけですが、
調剤する際には、
・オピオイド未使用患者の初回の場合、必ず導入には0.5mgから開始すること。
・血中濃度が安定するまでに時間がかかるため、連日の増量はしないこと。
・処方された患者に貼付剤から導入することが適切かどうかを検討すること。
3つ目が個人的に薬剤師らしい切り口かなと思います。
経口投与が困難な患者などに貼付薬が処方されたりすると思いますが、上述した通り貼付剤は鎮痛効果までに時間を要するので今すぐに痛みをとりたい患者には適切でなかったりします。
適応拡大したからと言って安易に使用するのではなく、患者に適したオピオイドを選択してあげましょう!!
以上!!!!