この声を好きになる方法をまだ知らない

自分の声がずっと苦手だ。

客観的に聞くのが嫌すぎて説明が難しいけれど、女子の割には低い。そのうえなんだか鼻にかかった?というのか詰まったような感じ。

要するに、「かわいくない」声である。

小学生のころ、まだ携帯なんてもってなかったので、遊びの約束は家の固定電話でやりとりしていた。
ある日、いつものように友達から電話がかかってきたときのこと。

「〇〇ですけど、いのすけさんいますか?」
家族と勘違いしたんだろうな、と思い、わたしだよ、と教える。

「あ、なーんだ。お兄ちゃんの声かと思った〜」
ハハハと軽ーく言われて、わりと傷ついた。
もちろん彼女にはなんの悪気もなかったんだろうけれど、当時から声にコンプレックスを持っていたことが明らかなエピソードだ。

声が低いとカラオケも嫌になる。
女性なのに、同性アーティストの曲が全然歌えない。
わたしの推し、あいみょんは恐らく声が低い方に分類されるアーティストだと思う。
けど、わたしにとっては十分に高い。『マリーゴールド』で精一杯だ。
一緒に行った友達が『愛を伝えたいだとか』を気持ちよさそうに歌うのを見て、心底うらやましいと思った。
YOASOBIなんて夢のまた夢だ。

「キー下げればいいじゃん」と言われたこともあるけれど、それはなんか悔しい。
好きなマンガが実写化するのと似たような抵抗感がある。

コンプレックスは他にもいっぱいあるけれど、声は群を抜いて嫌になる。
だって、変えようがないんだから。

たとえば真っ黒で太い髪も好きじゃなかったけれど、パーマやブリーチで思い通りに変えることができた。

人見知りしてしまう性格だって、社会に出てコミュニケーションの場数を踏んだら、随分とマシになった(当社比)。

でも声は、生まれつき備わっている。
化粧をしたり、他の人と取り替えたりなんてできっこない。

声優やアナウンサーといった職業の人がいるから、訓練をすれば操れるようにはなるんだろう。
でも、今のわたしに現実的ではなさすぎる。


「低い声で落ち着くから好き」と褒めてもらえたことはある。
驚いたけれどうれしかったので、自分の声を好きになれるかもしれない、と期待が膨らんだ。
褒めてくれる人もいるんだし、「嫌い」なんて言わんどこうと、気持ちに蓋をした。
でも状況は変わらず、変な声で嫌だと思う。
録音した声を聞いて、周りの人にこんなん聞かせてるなんて...とゾッとする。  

ありのままの自分を受け入れるのが大事、なんていうけれど、この声はまだ好きになれそうにない。
変えれるものなら変えたいとたびたび思う。
一度でいいから、高くてかわいい声で話してみたい。
カラオケでYOASOBIを熱唱したい。

もしかしたら、テクノロジーの発達で声を変えられる未来だって訪れるかも...?なんて諦められず妄想したりする。

もう開き直って、諦めがつくまで言ってやろう。
低くてつまったかわいくない声で、「わたしはこの声が好きじゃない」と。




いいなと思ったら応援しよう!

いのすけ
よければお願いします(^.^)いただいたサポートはnoteの軍資金(本/ほかの方のnote/おいしいもの)に活用します!