スタイルは「夫婦忍び罠猟」
単独忍び猟
「単独忍び猟」それは、猟師にとって何だかカッコイイ言葉である。
その名の通り、ひとりで山に入って獲物を捕る猟のスタイルなのだ。
すべて自己責任になってくるので、知識や技術が必要なうえ、万が一のリスクも高いが、自由度がある点が魅力的だ。
銃猟の場合、この単独忍び猟の他、複数人のグループで行う「巻狩り」というスタイルが一般的で、初心者はベテランハンターと共に同行して、知識と技術を磨くことになる。役割があるので色々学べたり、心強い一方でグループならではのルールや責任が生まれるといったデメリットがある。猟仲間がいない方にとっては、猟友会に入ってメンバーたちと経験を積んでいくのが手っ取り早い方法かもしれない。ただ、一概にどれが良いとは言えないため、自分に適したやり方で猟を行うのが良いだろう。
夫婦忍び猟
わな猟は、ほぼ単独である。銃のような危険性は少ないが、初心者にとっては、わな猟であっても不安しかない。使ったこともない器具の取り扱いに設置。登山道から外れたフィールドでの活動。動物の気配や別のハンターたちの音。人気のない山の静寂さ。全て怖い。先輩ハンターと一緒に挑む人もいるが、夫は手探りではあるものの、誰にも気を遣うことなく自由気ままに猟を行いたいため、単独で始めた。いや、厳密には私も割と参加しているので、”夫婦忍び猟”である。
忍びの対象
はっきり言って我々は陰キャだ。他のハンターと極力遭遇しないことを願っている。ハンター仲間とワイワイできるタイプではない。余計な人間関係にも悩みたくない。特に、猟友会すら入っていないため、バレたら何があるというわけではないだろうが、何となくバレたくないという心理があり、有害駆除で山に入っている方のテリトリーには気を配った。ひたすら森に忍んでは、誰も立ち入っていない場所を選び、罠を設置したのであった。まるで完全犯罪を目論むかのように、コソコソと森に入っていくのである。そう、つまりは、動物ではなく人間を忍んで猟をしているのだ。
免許なし妻の役割
妻である私は免許は持っていないので、直接罠を設置することはできない。そのため、単独の夫をサポートする形で猟に参加している。一緒に山を歩き、フィールドをチェックし、動物の痕跡を探すのが主な役割である。
これがやってみると思いのほか楽しい。私はアメリカドラマが好きで、「LOST」や「ウォーキングデッド」といった作品の中で、登場人物が森の中を歩き、動物の痕跡を探して獲物を捕らえるサバイバルシーンがよく流れていた。
当時は、そんな足跡なんて簡単にわかるの?と思っていたのだが、よくよく意識して森を観察すると、獣道から足跡、泥のすり跡といった痕跡が至るところに残っていた。それらを探偵気分で探しては、夫に報告して罠の設置ポイントを二人で決定した。罠の設置後は、見回りを夫の代わりにすることもあったが、幸いにも今のところ一人の時に、獣に遭遇したことはない。
どちらかと言えば、森で人に遭遇する方が怖いかもしれない。陰キャという意味もあるが、「森ってよく死体を埋めてるよな・・・」なんて事を考えるのであった。