原発は“あるある詐欺”だ。2050カーボンゼロが危うい。曖昧模糊を信条とする日本的意思決定の真相。
日本もようやく菅首相が2050年のカーボンゼロ(脱炭素)を打ち出した。
僕はこのところ日本のエネルギー問題を調査・分析しているが、どこか居心地の悪い変な気分に陥っている。
原発問題である。
ご存知のように小泉純一郎元首相は原発廃止論を打ち出して、意気軒高にあちこち講演して歩いている。しかし自民党政権は馬耳東風を装っている。
だが、このまま推移すると原発は放っておいても滅びることがわかってきた。
写真・表をご覧いただきたい。
2050年カーボンゼロを打ち出してはいるが、そのためには2030年の電源構成において自然再生エネルギーの比率を45%ぐらいにしないとならない。
ところが政府見通しは24%で、これではとても無理だ。
◎左図が政府見通し
真ん中のREは再生エネ比率 この場合24%
◎中図は現状のまま推移した場合 RE30%
◎右図は2050年ゼロなら
2030年に達成すべき目標 RE45%
※自然エネ財団
カーボンゼロから少し離れてここで重要な視点を提示しておきたい。
原発の存在である。政府見通しでは2030年に20%(赤色部分)だが、現状政策を続けていると、再稼働が困難な原発、運転期限が過ぎて廃炉になる原発などで2030年に原発比率が3%に減少してしまう。
小泉さんが叫ばなくても原発は滅びつつあるのだ。
これが曖昧模糊を信条とする日本的な意思決定の真相なのだ。不決断を解決策としてズルズル行く。あの昭和16年の世界だ。
菅首相も二階幹事長も経済産業省も、原発は必要だと言い続けるだろう。原発は要らないなどと言って電力業界や産業界の反撥を招こうとは微塵も思わない。しかし3.11以降、再稼働や新設は難しい。その現実をただ容認しているだけ、ホンネは無理をして先に進もうとは考えていない。その間に自然現象のように原発はたくさんの負債を残し国民にツケを押しつけ消えていく。誰も責任をとらない。野党が原発を潰すのではなく自民党が争点を隠して飼い殺しにするのだ。
そして新たな戦場は石炭火力vs再生エネに移った。既得権益層は原発を見て見ぬフリをしつつ石炭火力という砦を死守しようとする。
気候変動の現在、石炭火力を推し進めれば日本は産業構造の転換に乗り遅れるばかりか、世界の笑い者になるだろう。
結論 原発自然消滅は、日本人の意思決定の無意識の自己欺瞞がなせる業(わざ)である。
政府は25日グリーン成長戦略を発表した。
以下、読売新聞の見出しは原子力を強調しているが、実際には小型原子炉の開発、という当てにならないわずかな記述しかない。(拡大写真)
2050年の前に2030年の目標を明確にしない限り玉虫色で誤魔化しているのは現実的な対応とはいえない。つまり原発がないのにあるというのはあるある詐欺で、ほんとうはそのぶんの再生エネ比重を増やさないと間に合わないはずだ。
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