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【水平社宣言を読む】ケモノの皮はぐ報酬として、生々しき人間の皮をはぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代価として、暖かい人間の心臓を引き裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた
水平社宣言には、当時の差別への怒りが書き込まれていますが、その一つとして、「ケモノの皮はぐ」「ケモノの心臓を裂く」という表現が使われています。これは部落差別が江戸時代の身分差別に起因し、被差別身分の中に、死んだ牛馬の処理に従事した人びとがいたことを意味しています。 そこで、江戸時代の身分制度と死牛馬(斃牛馬)処理について、簡単に説明しておきたいと思います。 ●死んだ牛馬の処理と関連産業 江戸時代の村では、農作業で使う牛馬が死んだ時に、その処理をする人を特定して任
【水平社宣言を読む2022】吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集団運動を起こせるは、寧(むし)ろ必然である。
融和運動に対して、当事者自らが立ち上がり「吾等の中より人間を尊敬する事によつて自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。」という主張は、水平社の性格を表すものとして注目されています。 『よき日の為めに』には、まず佐野学による「解放の原則」において、「特殊部落民の解放の第一原則は特殊部落民自身が先づ不当なる社会的地位の廃止を要求することより始まらねばならぬ」と述べられています。 そして、宣言文に込められたのが「吾等の中より」「人間を尊敬する」という表現
【水平社宣言を読む2022】過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々によってなされた吾等のための運動が、何等の有難い効果をもたらさなかった人間を勦(いたわ)るかのごとき運動は、かへつて多くの兄弟を堕落させた
「何等の有難い効果をもたらさなかった」という「吾等のための運動」、そして「かへつて多くの兄弟を堕落させた」という「人間を勦(いたわ)るかのごとき運動」とは、部落改善事業(地方改善事業)や、融和運動のことでした。それはどのようなものだったのでしょうか。 ここでは水平社創立前後の動きを紹介します。 ●水平社創立前後の部落改善事業(地方改善事業)・融和運動 1920(大正9)年 1920年、政府は部落改善予算として5万円を計上し、京都府など16府県に合計43,00