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『藻類30億年の自然史 藻類からみる生物進化・地球・環境』 海洋深層水を海面に循環させる仕組みが必要(環境研究)

 ガイア理論から藻の歴史を知ろうとこの本を読んでみたが、藻の地球への影響の大きさに改めて驚かされる。藻の貢献を列挙してみると以下の7つになる。

1)太陽系の惑星で地球だけが酸素21%、二酸化炭素0.036%となっているのは、藻類によって原始大気の二酸化炭素から酸素を作り出したからだ。
2)酸素呼吸を可能とする現在の2000万種の生物多様性は、およそ30億年前の藻類(シアノバクテリア)による酸素発生型光合成のおかげだ。
3)オゾン層のおかげで有害な宇宙線と短長波の紫外線が防がれている。オゾン層は藻類の作り出した気体酸素のおかげだ。
4)農耕と石器文明には鉄を必用とする。18〜25億年ほど前の原始海洋で、藻類が放出した酸素により海水に溶けていた鉄が酸化し海底に沈殿し、鉄鉱床となった。
5)鉄があっても石油がなければ現代文明(アントロポセン)にはならない。採掘可能な原油の80%が埋蔵される中東は、1〜2億年ほど前の古地中海(テーチス海)で」大繁殖した藻類とそれを食物連鎖とする動物プランクトンの死骸が変性したものだ。
6)光合成と同時に、藻類は二酸化炭素を石灰岩(海生微生物起源)に閉じ込めてきた。
7)雨をもたらす雲を形成する凝固核は藻類により作られる。藻類がいなければ雨は降らないし、太陽光を遮ることもできなかった。

 これらの中で、気温に大きく影響する雲を作る仕組みにフォーカスしてみる。

 海苔の匂いは、DMSP(ジメチルスルホニオプロピオネート)の匂いだが、このDMSPは海藻や植物プランクトンが作る。ジェームズ・ラブロックはこのDMSPを前駆体として形成されるDMS(硫化ジメチル)が、大気に放出され、酸化して硫酸ゾルになり、水蒸気の凝固核になることを見出した。海に独特な磯の匂いがあるが、これがDMSだ。藻類は浸透圧の調整でDMSPを生産するが、藻類が捕食されたり、死んだりするとDMSPが溶け出し、海洋の細菌の働きでDMSに変換される。

 DMSを核とする雲の形成が気候の維持に果たす役割は大きい。雲ができると太陽の光を遮断するので、地球が吸収する熱量が下がる。DMSによって雲ができなければ地表の温度は10℃高くなるという。生物作用によって作られた物質が気候の制御をしているということだ。工場や車の排気ガスが雲の凝固核になると、酸性雨を降らすというが、古代から営まれる藻から生成されるDMSによる凝固核であれば酸性雨とはならないだろう。

 以下のラブロックのアイデアはまだ実行されていないが、海面の藻類を増やすことがいかに重要かが、この本からも読み取れる。

 波の動きを利用して水をくみ上げるため下端に逆止め弁を設けた長さ100〜200メートル、直径10メートルほどのパイプで海洋深層水をくみ上げ、海面の藻類に栄養分を与えて増殖させる。すると、二酸化炭素が減少して、硫化ジメチル(日光を反射する雲を形成する核の前駆物質)が生成される。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。