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『新版 システム工学とは何か』システム工学の適応範囲が広いことを知ることができる(システム工学)

 著者のひとりの渡辺茂氏は日本システム工学会の会長、日本マイコンクラブ初代会長。もうひとりの著者の須賀雅夫氏は、シンクタンクに勤務し、CAD/CAMなどの書籍なども書いている。

 本書ではシステム工学は「①オペレーションズ・リサーチ」「②情報理論」「③サイバネティクス」「④基礎数学」「⑤コンピュータ」という5つの源流があるという。①はランチェスターの法則がはじまりで、戦争に応用された。②はシャノンが提唱した電話回線理論がはじまりで、あるできごと(事象)が起きた際、それがどれほど起こりにくいかを情報量やエントロピーという尺度で表す。③はウィーナーが提唱したもの。サイバネティクスとはギリシア語で「舵をとる人」という意味で、目的地にたどり着くための船の舵をとるような修正動作(フィードバック)を行うことを指す。システム工学は①②③④⑤を源流とし、1960年代にアポロ計画により第一段階が完成。1968年に創設されたローマクラブにより地球規模での資源、人口、環境汚染などの未来が予測されたことで、システムダイナミックスなどのシュミレーション手法が効果をあげ、1979年代のシステム工学は社会システムをテーマとした。1980年代は人間がテーマとなり、人工知能やエキスパートシステムがシステム工学のテーマとなった。

 本書は著者の専門からか、コンピュータ・システムやCAD/CAMがシステム工学としてまとめてあるが、未来予測の手法としてトレンド法、デルファイ法、シミュレーションが解説してあることは特筆すべきだ。なぜなら、どのような製品や商品にも開発期間や普及期間があるから、現時点からの未来を予測しておく必要がある。本書は、純粋なシステム工学の書籍と言うよりは、システム工学とともに発展してきたコンピュータ・システムとソフトウェア、シンクタンクなどが渾然と解説されている印象を受ける。システム工学の適応範囲が広いことがもたらした結果だろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。