『オスとは何で、メスとは何か?「性スペクトラム」という最前線』生物学から人間社会へ
オスとメスを別々のものとしてとらえるのではなく、スペクトラムでとらえることを「性スペクトラム」という。スペクトラムとは、太陽光をプリズムで分解すると、7色の光の帯が徐々に次の色に変化するようにみえる。性はスペクトラムのように、オスからメスへ連続する特性をもっている。
例えば、エリマキシギという鳥は、強いオスが縄張りを主張してメスを囲い込む。弱いオスは子孫を残すことができないので、メスに擬態したオスが出現し、自身の子孫を残す。トンボの場合、交尾のメスが池や沼に産卵することで、オスが交尾しようとメスの産卵行為を妨害する。それを防ぐためにメスがオスに擬態する。
性を決めるのは、性ホルモンとXとYの性染色体だ。XXがメスに、XYがオスになることがわかった。細胞分裂では精巣にも卵巣にも細胞は分化できる。哺乳類より進化の古い魚類は、これによって性転換能力をもつクマノミなどの種類がいる。
哺乳類では、Y染色体の特定領域に性を決定するSRY遺伝子が発見された。他の鳥類、爬虫類、両生類、両生類、魚類には別の性決定遺伝子が存在することがわかった。
遺伝子以外で性が決まる生物もいる。ワニやウミガメの卵は地表に近いものと遠いもので温度差が生じる。その温度差で性が分化する。
また、それぞれの臓器の細胞にも性がある。脳を構成する神経細胞にも性がある。脳の機能にも性差が現れると考えることもできる。この点はこれから研究が深化する分野だ。
本書は、性はオスとメスの2つの極でとらえるのではなく、オスからメスへと連続する性スペクトラムでとらえるべきだと生物学が明らかにしてきた。このことが人間社会に浸透することを狙いとしている。
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