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『本物のオッペンハイマー』適切なタイミングで適切な場所に存在する(世界の歴史)

 これは映画『オッペンハイマー』にちなんで作られたと思われるオッペンハイマーのドキュメンタリー(44分)だ。オッペンハイマーはドイツ移民のユダヤ人で、物理学を学び、23歳のとき理論物理学が発展していたドイツのゲッチンゲン大学で博士号を取得した。その後、 カリフォルニア大学バークレー校やカリフォルニア工科大学教授となった。

 物理学者のレオ・シラードに依頼されたアインシュタインは、ウランによる連鎖反応が強力な爆弾となることと、政府と物理学者とを仲介する仕組み作りの必要性を、ルーズベルト大統領に手紙で訴えた。ナチスドイツの核エネルギー開発のプレッシャーもあり、この手紙の3年後に生まれたのがマンハッタン計画だ。オッペンハイマーは科学部門のリーダーとなった。

 オッペンハイマーの思想には、ヒンズーの『バガヴァッド・ギータ』が大きく影響している。
 王族(クシャトリヤ)である主人公アルジュナに対し、ヴィシュヌ神の化身クリシュナが言う「あなたの職務は行為そのものにある。決してその結果にはない」という言葉には、好ましくない結果が降りかかってくる場合でも、それを引き受けて生きていかねばならないことを意味している。まさにオッペンハイマーの人生そのものだ。
 また、インタビューでオッペンハイマーは、原子爆弾の実験で最初のキノコ雲を見た時のことを回想し、「私は死神になり、世界の破壊者となる」と語ったが、 これも『バガヴァッド・ギーター』の中から引用した一節だ。 

 オッペンハイマーは左派思想であったが、共産党員ではなかった。そのためFBIから監視も受けていたという。にも関わらず、マンハッタン計画のリーダーだった。

 このドキュメントで印象的だったのは、歴史の中の適切なタイミングで適切な場所に存在していた、という意識が、オッペンハイマーにはあったということだ。歴史の中で大きな分岐点となった人物には、自分の力ではどうしようもならない偶然の積み重ねからの必然性を感じることがあるのだろう。

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Creative Organized Technology 研究会(創造性組織工学研究会)
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。