『知識創造企業』 日本と西洋の経営手法を統合する普遍的な経営モデルは既に完成している(業界の歴史)
1996年に発売された本が、新装版として発売されたものだが、当時の日本企業を研究したもの。2013年の週間ダイヤモンドが「100年後も読みつがれるベスト経営書」としていることから、不易流行な経営とはどのようなものかを知るために読んでみた。
この本の目的は以下の3つ。
1)西洋の学者とマネージャーに日本生まれるの知識創造理論を提示すること
2)日本企業のたゆまないイノベーションはなぜうまくいったのかを新たに説明すること
3)日本と西洋の経営実践を統合し、企業経営の普遍的モデルを創り出すこと
1)としては、暗黙知をメタファー、アナロジー、コンセプト、仮説、モデルを形式知として明示化することとある。また、形式知を暗黙知に内面化するには、書類、マニュアル、ナラティブ(物語)として言語化、図式化する必要がある。このように、個々人の体験が暗黙知ベースで内面化されることで、これらは非常に重要な組織的な財産となる。しかし、ここではよくいわれる、日本語コミュニケーションの本質的な特性からの論考ではなく、日本企業の製品開発例からの解説にとどまってる。
2)としては、ハイパーテキスト組織とミドルアップダウンマネジメントをまとめている。ハイパーテキスト組織というのは、縦割りの従来型のビジネスレイヤー組織に、プロジェクトレイヤー組織が被る形の組織で、ITインフラとして知識ベースレイヤーもハイパーテキストが被るように存在する。そして、プロジェクトレイヤーのマネージャーが知識マネジメントの中心になるため、彼らが連続イノベーションを生み出す鍵と位置づけている。本書をドラッカーが称賛しているようだが、それは経営管理者(マネージャー)の役割を連続イノベーションの源泉としているからだろう。
3)としては、「知識創造」というコンセ嘔吐で組織のマネジメントのすべての分野(企画、製品開発、人事、生産、マーケティング、会計など)を再検討、再構築を目指すが、本書では実践的提言と理論的発見の断片的解説にとどまっていて、普遍的なシステムにはなっていないようだ。
本書を読んで明らかになったことは、特に3)は、2)と1)を含めて普遍的なシステムとして、2つの方法で完成しているということだ。ひとつは、パーマネントな方法として、トヨタ自動車の車両主査制度を基軸とした経営システム、もうひとつは、アドホックな方法として、糸川英夫氏のシステム工学(創造性組織工学)だ。これらはすでに体系として完成し、環境変化にアジャストし日々改善されている。ただし、それらが形式知として応用できるようなカタチにミーム化され、オープンになっていないだけだ。念のため、続編の『ワイズカンパニー』も読んでみよう。
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。