夫がいない、ひとりの夜。
夫が友人との飲み会のため、今日はひとりの夜。
結婚前は当たり前だったのに、結婚してからは少し特別な時間に感じる気がする。
何をしようか。それを考えるだけで、ちょっと自由な気持ちになる。
最近の夫は母親みたいなのだ。
私は本当にズボラ女代表で、ご飯もちゃんと食べずにお菓子をボリボリ食べてしまう。夫は私がご飯を食べないのを見越して、「温めるだけでいいから」と、スープを作って出ていった。
「疲れてるんだからちゃんと栄養とらないと」なんて言う姿、私が寝ていると湯たんぽを作って布団にいそいそ入れている姿を見ると、「お、おかん…!!!!」といつも思う。
付き合っていた時はここまでではなかった気がするのだけど、結婚してから世話焼きお母ちゃんが開花した気がする。
結婚する前は、「私が夫を支えるんだ!」なんて張り切っていたけれど、気づけこんな関係になってしまっていた。これは決して当たり前じゃないよなぁと感謝を忘れず、自分ができるところはちゃんとやっていこうと思う。
夫が作ってくれたスープを温めて、スプーンですくう。じんわりと優しい味が広がる。
夫が母みたいだなんて少し笑えるけど、このスープの温かさは、ちゃんと夫の味だ。
食事を終えると、静かなリビングが広がる。家の中が少し広く感じる。
ソファに座ってぼんやりしていると、ああ、夜ってこんなに静かだったっけなんて思う。夫がいるときは、何気ない会話で埋まっている時間が、ひとりだとこんなにも空白になるんだなぁと。
この空白もちょっとだけ贅沢な時間のようにも思える。誰かのためではなく、自分のためだけに動ける夜。ブランケットに包まれてうとうとしながら、最近あった整理できない感情を並べてみた。
嬉しかったこと、悔しかったこと、少しだけ羨ましくなった瞬間。そして、なんだか言葉にできないけど胸がチクっとした気持ち。それらが頭の中で行ったり来たりしている。
「何だったんだろう、あの感じ。」と心の中で呟くけど、答えは出ない。整理がつかないままだからといって、すぐに片付けなくちゃいけないわけでもない。そう自分に言い聞かせる。
感情って、無理に整頓しようとすると、逆に絡まってしまう。だから、こうしてただ眺めるだけでいいのかもしれない。どの感情も私が生きている証なんだと思えば、少し愛おしく感じるから不思議だ。
やがて、目が重くなり、思考の波が少しずつ遠ざかっていく。整理はまた明日。今日はただ、このブランケットの中で自分を許す夜にしようと思う。
ひとりの夜は、ちょっと寂しい。でも、その寂しさに寄り添ってみると、案外穏やかな気持ちになれるものだ。
「今日は自分だけの夜」と思いながら、でも明日はまたいつものふたりの時間が戻ってくる。それが、なんだか楽しみに思える夜だった。