"史上最高の日本シリーズ"を読んだ
2年連続同一カードの「4タテ」は史上初
福岡ソフトバンクが昨年に続いて巨人を圧倒し、パ・リーグのチームとしては初となる4年連続日本一に輝いた。
日本シリーズが2年続けて「4勝0敗」で決着したことは過去1度あるが、対戦カードは違った。ONが全盛期だった巨人の《V9》時代でも「4勝0敗」は一度もない。MLBのワールドシリーズでは、ヤンキースが成し遂げるなど複数回あるものの、同一カードでの2年連続スウィープというのは、日米通じても初の出来事だ。
空気や流れを変えるプレーが出そうな気配すら感じられなかったくらい、想像以上の一方的な内容と結果。30年前の1990年、西武が巨人を4タテしたときも同じような感想を持ったが、今季はそのとき以上の差を感じる、見る側にとっても「野球観が変わった」ようなシリーズだった。
今回ほどではないけれど、ワンサイドになるのではと想像したのが、1992年の《西武×ヤクルト》だった。結果は予想した通り西武が日本一を勝ち取るも、その内容は球史に残る激戦で、最終第7戦も延長にもつれ込む大接戦。翌93年も同じカードになり、やはり第7戦までフルに戦って、こんどはヤクルトが栄冠を手にした日本シリーズだ。
「詰むや、詰まざるや」
その2年間の全14戦やサイドストーリーを、当事者たちの証言で振り返り、まとめられた『詰むや、詰まざるや 森・西武vs野村・ヤクルトの2年間』(長谷川晶一・著/インプレス)を、読んだ。
Web Sportivaでプレビュー的に連載され、読んでもいた。社会人になりたての、20代の若者だった当時の記憶もたどりつつ、一冊にまとまったものをあらためて堪能した。
全14試合中10試合が3点差以内のクロスゲームで、通算7勝7敗。森祇晶、野村克也という捕手出身の知将が率いたチームによる、一進一退の名勝負だった。ホームで王手をかけ、優位に立ちながら連敗して3勝3敗のタイにされるも、アウェーでの最終第7戦をモノにする。第4戦以降の星取は計らずも共通していたが――
92年と93年の結果は逆になっていたかもしれないし、西武あるいはヤクルトが2年ともシリーズを制していたかもしれない。そう思えるような、様々な場面での"タラレバ"を想像できる楽しさも味わえた。
この「西武vsヤクルト」とは対極の、"コールドゲーム"のような有様になってしまった2020年の「ソフトバンクvs巨人」。何年後か、西武を苦しめ連続日本一を止めたヤクルトのようなチームが出て、名勝負を繰り広げるシーンを見られたら…いいな。