人間を助けるいのしし ❶
いのししがニュースになるのは、ほとんどが農作物が被害にあったとか、コンビニで買ったお弁当の入ったレジ袋を盗られたとか、害獣扱いされるケースが多いけれど、もちろんそうではない話も有ります。
『暮しの手帖』誌には子供の小さい頃からずっと長い間お世話になってきました。いよいよ処分しようと思ってざっとページをめくっていましたら、藤城清治さんの影絵でおなじみのお話(お話 香山 多佳子)の中に「黄金のいのしし」というお話が載っていました。こんなお話です。
大昔のこと、オランダの人びとは大地を耕し食べ物を作ると言うことを知らず、けものを狩り、魚を捕まえ、落ちた木の実を集めるという暮らしで、食べ物の蓄えができず、飢え死にするということもありました。高い空の上からそんな様子を見ていた神様たちは、大地の恵みを知らない人間たちをかわいそうに思いなんとかしようと相談しました。
相談の結果、硬い大地を掘り起こす事ができるような大きな牙を持つけだものを作り、人間の世界へ送るを決めました。そして大きなかまどで金の塊を溶かして捏ねまわしたところ、大きな牙を持った金のいのししが出来上がりました。
地上に送られたいのししたちは走り回って硬い地面を大きな牙で掘り起こしました。耕された大地に麦や野菜が育つようになり、オランダの人々は食べ物を貯えることを知ったというのです。