新卒・未経験からUIデザイナーになるリスク
『意匠』が弱いUIデザイナー
デザインは『意匠』と『設計』の二つの概念を内包している言葉です。
昭和から平成初期まで、日本におけるデザインは『意匠』としての概念で主に認知されていました。新しい視点による価値の発明とグラフィックのクオリティが重視された時代です。
しかし2007年のiPhone発売以降、日本にもUIUXという概念が広く認知されるようになります。『意匠』重視だった反動か、特にSaaS界隈ではデザインの民主化やデザイン経営などがバズワードになり『設計』に傾倒することになります。
昔から上流工程ができないWebデザイナーは制作会社の課題でした。つまり、企画や情報設計などの『設計』が弱いデザイナーです。
そしていまは『意匠』が弱いUIデザイナーが増えています。ドメイン理解やユーザーリサーチ、情報設計がしっかりできていても、最終的なアウトプットのクオリティが低いためにユーザー体験やブランドを毀損しているデザイナーです。
ですが、デザイナーを名乗るのであれば『意匠』と『設計』はどちらも重要です。どちらもプロレベルのスキルでなければ、このAI時代にデザイナーとして価値を出すことは難しくなっていきます。
正直、現時点でクオリティだけなら『意匠』が弱いUIデザイナーよりもAIの方が優秀です。
UIデザイナーは『設計』重視になりがち
ビジネスの特性上、Webデザイナーの業務は『意匠』8割、『設計』2割になります。理由としては
広告という特性上、人の目を惹きつけ興味関心を想起させるグラフィック力が重要になる
広く伝えるには新しさが必要なため、表現アイデアを鍛える必要がある
受託事業なので、さまざまなブランド・商品のデザインを担当できる
Webディレクターやマーケターがワイヤーフレームを作るため、情報設計が身に付かない
などがあり、Webデザイナーになると『意匠』を中心に鍛えることになります。
逆に、UIデザイナーの業務は『意匠』2割、『設計』8割になることが普通です。理由としては
ユーザー体験の5段階モデルにある通り、ビジュアルデザインはプロジェクト全体のほんの一部でしかない
早くリリースすること・デザインシステムによって体験を統一することを求められ、表現アイデアを考える機会がない
基本的に事業会社で同じサービスだけをデザインするので、デザインの幅が広がらない
サービスの価値をきちんと早く提供するために、デザイナーも戦略・設計から担当できる
などがあり、UIデザイナーになると『設計』を中心に鍛えることになります。
初期に学ぶなら『意匠』がオススメ
あなたがこれからデジタル系のデザイナーになりたいのなら、ファーストキャリは圧倒的にWebデザイナーをオススメします。
『意匠』には正解というものがなく、まだまだ暗黙知の領域なので習得が難しく時間がかかります。そのため、できるだけ若いうちに大量のデザインを経験して『意匠』がうまくなる戦略が有効です。プロのサッカー選手やピアニストになるのと同じで、早くからやればやるほど伸びます。
『意匠』を上げる方法はこちらで記事にしています。
『設計』は形式知になっていて情報設計や体験設計の知識が重要です。そのため、サイトや本などである程度勉強することが可能になっています。
また、形式知になっているため別にデザイナーだけができるスキルではありません。プロダクトマネージャーもエンジニアもできます。『設計』だけでデザイナーとしての価値を出すのには、さらにユーザーインタビューやファシリテーションなどの専門性を身につける必要があります。
キャリアプランをJカーブで考える
ただし、注意点として受託の制作会社は基本的に忙しいですし、事業会社よりも給料が低い傾向にあります。
そのため、
ストレス耐性が高い
健康で体が強い
デザインに没頭できる
はデザイナーの基本スペックです。
それでも、制作会社でWebデザイナーとして修羅場をくぐった方が業界価値があがり、将来の選択肢が増えていきます。デザイナーとして自信を持って働きたいなら『意匠』を磨きましょう。
UIデザインの役割や『設計』を知る
UIデザインに興味があるのなら、以下の記事や本を読んでみてください。
UIデザインは情報設計や体験設計、エンジニアの知識、プロダクトチームとのコミュニケーションやファシリテーション、デザインチームの組成など、ヒューマンスキルと多くの知識が必要です。
『意匠』が得意なデザイナーも、『設計』を習得すると世界が広がります。
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