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いのちの授業 あの日から(132号)

『サンタさん贈りもの』
(月刊「れいろう」より)
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 クリスマス・イブの日、三歳の景子は心配そうに言いました。

「お父さん、お家に帰ろう。サンタさん、私が入院していること知らないから来てくれないよ」。「大丈夫だよ、ちゃんと来てくれるから。お空にお願いすればいいよ」。「サンタさん、私は病院にいます。いい子にしていますから来てください」

 心配性の景子は、寝る直前にもう一度私に尋ねました。
「サンタさん、来てくれるよね」。「大丈夫だよ」。そして、「うん」と安心したように眠りました。翌朝、枕元にセーラームーンのおもちゃを見つけて、「お父さん!サンタさん来てくれたよ!」と大喜びでした。

 二年後、クリスマス・イブの日が訪れました。
 景子の体調はよくありませんでしたが、特別に一日だけの外泊許可をもらい家に帰りました。眠るとき私は言いました、「サンタさん、来てくれるからね」。すると、景子は小さく頷いて言いました。「やっぱり、お家がいいね…」―。

 景子には、お家に帰れたこと、家族みんなでケーキが食べられたことが一番のプレゼントでした。これが最後のクリスマスになりました。

 翌年から、クリスマスには、仏壇に大好きだったコアラのマーチとイチゴのケーキをお供えしています。やがて弟・康平も成長して、私がサンタをすることもなくなりました。

 サンタさんの贈りものとは、家族が一緒にいることを実感できる「幸せ」のように思います。
 サンタさんの贈りもの。もらって幸せ、贈って幸せ。みんなの家に、幸せが届きますように!  

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・鈴木中人の著書&会報「いのちびと」などから抜粋
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