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いのちびとメルマガ(115号)

『あなた と みなさん』
(いのちびと2021.1号より)
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 学校などに伺うとき、思い浮かべるようにしていることがあります。
 今日の子どもたちと同じ年齢のとき、自分は「先生とどんな思い出があっただろうか」。それを思うと、子どもの眼差しを感じられるからです。二つの思い出があります。

 保育園の年長のときです。
 私は、手先が不器用で折り紙が苦手でした。特に鶴は折れなかったのです。ある日、クラスのAちゃんが入院して、みんなで千羽鶴を贈ることになりました。みんは、スイスイと折っていきます。でも、私は一羽も折れません。何とかつくったものは、カエルのようでした。

 すると先生が、みんなの前で言ってくれました。
「中ちゃんは、中ちゃん。〇〇ちゃんは、〇〇ちゃん。みんな、それぞれの鶴があるんだよ。一生懸命に折ってくれてありがとうね。Aちゃんも喜んでくれるよ」。小さな胸が熱くなりました。

 小学五年生のとき、私は「先生は大嫌いだ」との態度で先生に接していました。
 私の父は教師をしており、父の教え子が何人も学校にみえました。「鈴木先生の息子か、がんばれよ」と同級生の前で何度も言いました。「えこひいき!」だと、同級生に無視され、小池に落とされたりしたこともありました。やがて、先生に近づかないようになっていました。
 
 ある日、私だけを担任の先生が自宅に呼んでくれました。
 プラモデルを一緒に作りました。ラッカーも塗る本格的なゼロ戦が完成です。「中人にやる。二人だけの秘密だぞ。先生は、中人のことが大好きだからな」。また、胸が熱くなりました。それから、先生たちと少しずつ話ができるようになりました。

 先生の話を、何万回も聞いてきました。「みなさん―」と言われた話はあまり覚えていません。「中人は―」と向き合ってくれた話は心に残っています。

 今、「いのちの授業」では、気になる子がいるとき、本当に心に刻んでほしいときは、「みなさん」ではなく、「あなた」と呼びかけています。

 ひとり一人に向き合うこととは? 自分は向き合っているか?を思います。あなたはいかがでしょうか。

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