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『いのちの授業 あの日から』(137号)

「人生を物語ること」
(いのちびと2021.7号より)

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「いい話で、本当に感動しました」

「いのちの授業」に参加された方から頂くメッセージです。私の話は、子どもが病気で死ぬ話です。「人生の大不幸」が「いい話」になることは、「不思議な話」です。そこに、「いい人生」にするヒントがあるように思います。

 景子が亡くなった直後から、私は子どものことを話さなくなりました。

周りの人の言葉に、心の中で反発していました。「がんばってください」には、「何をこれ以上、頑張るんだ!」。 「お気持ちが分かりますよ」にも、「分かるはずがない!」。「もう話しても無駄だ」。そして、今まで以上に働きました、「もう大丈夫だ!」と。でも、装っている自分を感じていました。

 一周忌が過ぎた頃、私的な手記を書き始めました。

 小児がんの支援活動に携わる中で、私の体験を何かのお役に立ててほしい。景子の生きた証を遺そうとの思いでした。

 しかし、一ページが書けませんでした。そのときの情景、悲しみ、涙、苦悩が蘇ってきました。約二年をかけて三百ページに及ぶ原稿ができました。「怒り」が満ちていました。何回も何回も書き直す=内省を経て、「ありがとう」の言葉がやっと書けるようになりました。

 五年後、子どもの分まで生きることとは何かを問いかける中で、ある思いが芽吹きました。

 景子が「いのちのメッセージ」を遺してくれている。自分の体験を物語ることを通じて、生き抜く・支え合う・ありがとうの思いをバトンタッチしよう。それが「いのちの授業」のスタートとなりました。

 今、しみじみと実感することがあります。

自分の人生を物語ることは、困難を意味づけて、「いい人生」にする扉を開いてくれる―。

 悲しみを話すとき、心は揺れ動きます。でも、時を重ねて何度も語る中で、感謝の思いが芽吹いてくれます。やがて、あのおかげで、本当に大切なことを教えてもらった。涙を流した分だけ、幸せになれるんだ。そう思える日がきっと来てくれます。

 涙するときこそ、自分の人生を物語ってみてください。「いい人生」にするために…。

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