いのちの授業 あの日から(138号)
「あの日の誕生物語を話す」
(私が一番受けたい「いのちの授業」<ごま書房新社>より)
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「いのちの授業・親子塾」では、お父さんお母さんから、子どもに誕生物語を話してもらいます。
妊娠が分かったとき、出産したとき、命名したとき、赤ちゃんのときに心配したことなど、その様子や思いを話すのです。子どもにとっては初めて知ることばかりです。
話すにつれ、お父さんお母さんの目は潤み、眼差しは慈愛に満ちていきます。
子どもも、安らかな表情で「ありがとう」の思いを芽吹かせてくれます。そして、子どもへの思い、お父さんお母さんへの思いを、それぞれありがとうカードに書いてもらいます。カードには、「生まれてきてくれて、ありがとう」「産んでくれて、ありがとう」の言葉がいっぱいです。感動の涙とともに。
私にも忘れられない「誕生物語」の思い出が二つあります。
私が小学生のとき、兄の同級生が肺炎で亡くなりました。
そのことを知ると、母はしばらく無言でした。そして、目を潤ませて私をみつめて言いました。「なかちゃん(=私)も、生まれてすぐに肺炎で入院したんだよ。お医者さんが『今夜がやまです。覚悟だけはしておいてください』と言って。本当に心配した…」。母の姿に、胸が熱くなったことを子ども心にも覚えています。
景子を授かったときについても、はっきり覚えていることもあります。
初めての子どもの妊娠がわかったとき、私は「そうか、そうか」としか言葉が出ませんでした。淳子は、お腹をさすりながら「私、お母さんになったんだ」と涙を流しました。その涙に、母になるときを感じました。
そのことを、景子がお嫁に行くときに話そうと思っていました。「お母さんは、涙を流していのちをつなげてくれたんだよ。景子もいのちをつないでね」。しかし、もう話すことはできなくなりました。もっと早く景子に話してあげればよかったと、今も後悔しています。
子育ては、ともに育み合うものです。
親も子どもも、笑って、泣いて、喧嘩して、悩みながら成長していきます。子育てができる「人生のとき」は限られています。子育ては、「人生の幸せのとき」だったと後から思うものかもしれません。
子どもの誕生日に、「あの日の誕生物語」を語ってあげてください。子どもにとっては、最高の誕生日プレゼントになってくれると思います。
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