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いのちびとメルマガ(109号)

『教師となる、恩師となる道』
(2020 .11号より)

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 校内暴力で荒れた時代、Uさんは憧れの中学校教師となった。
 やんちゃな生徒とは、トコトン一緒に向き合った。一緒に映画に行く、ラーメンの早食をする、自宅に泊めたりもした。「刑事ドラマのかつ丼かなぁ。ダメなことはダメ。でも、それだけでは通じません。俺もやるから、みんなでやろまい。一緒に笑って、涙を流し、汗をかきました」

 一人だけ遠くの高校を受験する生徒がいた。
 試験当日、「心細くしていないか」と、早朝に自宅を訪問して励ました。生徒は「自分が結婚するときは、U先生に仲人をお願いする」と心に決めた。十数年後、その夢は叶えられた。

 教頭、校長となった学校では、多くの保護者が昔の教え子だった。
「そんなことをしているとU先生に、ど叱られるぞ!」と、保護者同士が冗談を言い合い全面協力してくれた。

「教員と教師には違います。子どもの提出物を認印だけで済ます教員もいれば、何行も朱書きを入れる教師もいる。どこまでやるかは教員任せ。教員は教えることを業とする人、その上に子ども等から信頼と尊敬が得られる人が教師です」

 今、A大学教職課程センター室で教師を目指す学生の育成指導に携わっている。
同大学には教育学部はない。法学、経済、経営学部などの学生が教師を目指す。教師と成るべく心を養成する「U塾」も主催。モットーは「子どもの幸せを追究する日本一心豊かな教師の育成」を掲げる。

「学校現場は問題が山積み。子どもたちに寄り添う教師としての心を育てる、それが一番大切です」。「『明朗・愛和・感謝が教師の心』という直接合格とは無関係と思われることに目を向けると、人間的な成長があることにやがて気付きます」

 その指導は、卒業後も続く。
 教員一年目の全ての教え子の赴任校を訪ねては、授業参観や校長と面談。「こんな授業じゃ、あかんぞ!」「ハートはあります、不出来な子ですがよろしくお願いします」。この六年で百二十四名の教え子が教壇に立ち、全国で活躍中である。

 今年、二カ月ほど入院と自宅療養をした。
「いのちを思います。教師人生で、病気や事故で教え子を亡くした時は本当に辛かった。私が死んでも、私の思いを学生が『教師』となってバトンタッチしてくれる。それが最大の喜びです。残りの人生も、いのちと心を大切にする教師づくりができることに感謝し全力投球です」

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