放送大学について

 放送大学の全科履修生(継続入学による修業年限通算の認定で3年次相当)として昨年4月に入学した。それ以前は科目履修生や選科履修生として興味ある科目をつまみ食い的に履修していただけで入学資格や卒業要件などほとんど意識していなかったので授業以外のことはよくわかっていなかった。 
 もうすぐ全科科履修生としての初年度が終わり、4月から2年目に入ることになる。この1年間で様々な規定などがわかってきたので少し説明をしようと思う。
 
 放送大学は名前だけは結構知られている(新聞のラジオテレビ欄に番組が掲載されているので)が、誤った理解をする人がまだ多いので、概略を説明しておく。
 
1.        日本の法律「放送大学学園法」に基づいて設立された学校法人放送大学学園が設置・運営する通信制の私立大学である。主務官庁は文部科学省と総務省の双方の所管となっている。

2.        設置されているのは、学部が一学部一学科(教養学部教養学科)のみで、その中に6つの専攻コースがある。
大学院は一研究科一専攻(文化科学研究科文化科学専攻)のみで、修士課程は7つのプログラム、博士後期課程は6つのプログラムに分かれている。

3.        入学要件は、学部が高等学校(および相当)卒業で入試無し、大学院修士は学卒(および相当)に加えて選考試験がある。

4.        学部の卒業要件(学士)は選択必修科目を含めて計124単位以上を取得すること。

5.        放送大学の特徴は、上記(全科履修生と称する)以外に、科目履修生(1期、半年間在籍)と選科履修生(1年間在籍)という学生種があることで、この学生種には入学要件はない。卒業研究を除くすべての科目を履修することができるし、履修に際しては、全科履修生と全く同等の扱いを受ける。

6.        高卒の学歴が無くても、上記5の科目・選科の学生種で入学して所定の単位を取得すれば、全科履修生としての入学が認められるという放送大学のみの特例もある。(高卒認定ではないので他大学への入学要件にはならない)
 

以下は私の主観である。

7.        英語名称The Open University of Japanが示しているように日本では最もオープンな大学であるといえる。当初はThe University of the Airであったらしいが、開学の趣旨からして先輩格であるイギリスのThe Open Universityにあやかって改名したのではないかと思う。

8.        「放送」という言葉からの連想で、NHK学園(通信制高校)やNHK文化センター(カルチャースクール)と混同する人が時々いるが、NHKとは全く関係がない。

9.        学生は放送授業のすべてをインターネット上でいつでも視聴できるので、番組表を確認しながら放送を見るとか、録画予約する必要はない。証明できるデータをもっているわけではないが、私の見聞の限りではほとんどの学生が放送授業をインターネットで視聴していると考えられる。

10.    放送大学は入試無しで入れるから」とか「まともな大学なわけがない(NHKTVの教養番組やカルチャーセンターと勘違いしている)」から学生のレベルが低いと思っている人がいまだにいる。実は放送大学の学生が高いのは平均年齢だけではない。学歴は平均すれば他大学よりも高いのである。博士を持っている学生は意外と多い(元学長が正規の学生として授業を受けていたりするから油断ならない)し、修士なら掃いて捨てるほどいる。学士はそれこそ石を投げれば必ず当たるくらいたくさんいる。特技を持っている人(というか専門家だったりする)ももちろん多い。だから印刷教材(教科書)の間違いや試験問題の間違いなど容赦なく指摘するし、放送/対面授業(スクーリング)の記述式レポートなどに力作があったりするので、教える側も大変だと思う。

11.    再入学を繰り返して学部にある6コースそれぞれを終了することが可能となっていて、そういう人には「名誉学生」?!という称号まで与えられるのも面白い制度である。(「教養学部を6回も卒業してどんな意味があるのか」という意見もあるだろうが)

12.    都道府県に最低1か所は学習センターというものがあって、そこでスクーリング(対面授業)が行われる。講師は放大の専任教員のみではなく、近隣地域の大学の教員や実務専門家の場合の方が多い。対面授業のシラバスを見ても他の大学では考えられないほど多くの外部講師が授業を担当している。これも放大の大きな特徴であって、したがって授業内容はまことに多彩である。そのため、授業内容に関しては、いわゆる「大学のカラー」のようなものは存在しない。ちなみに放大と単位互換協定を締結している学校は400校を超える。

13.    授業の難易度もまちまちというしかない。平均点が公表されている放送授業では単位取得が容易な科目(平均点が90点以上)もあれば難しい科目(平均点が60点以下)もある。対面授業では事前に英語文献のコピーが送られてきて、「予習しておけ」というものもある。かつては、対面授業は出席するだけで事実上単位がもらえるという牧歌的な時代もあったようだが、今では伝説に過ぎない。


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