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毒親育ち視点で見るジャンケットバンク ライフ・イズ・オークショニア中編

札を使い切る前にチームで2勝すればライフダイヤ獲得

 村雨の指示に従い、1セット中に「4」と「3」の札で落札をした獅子神。2勝目に合計7チップ分の電流を流され、時雨から実験台扱いまでされる。それでも、勝利は勝利なので、担当行員の梅野が大事そうにライフダイヤを抱えた。
 だが、ゲームの勝利条件の1つは「ライフダイヤを先に3個獲得すること」である。既にデッドラインの約半分まで電流を浴びてしまった獅子神、そのまま村雨の考えに気付かないままでいたら、死因が感電死になってしまう。

 そもそも、落札に使用したチップが蓄積されるのが「デッドラインチューブ」である。観客にも分かり易いよう、かなりの大きさで作られたデッドラインチューブ。それは、誰がどれだけのチップを使って落札したかを示し、感電死へのカウントダウンも兼ねている。

 獅子神だけが電流を浴び、その反応を見て電流の危険度を判断した時雨と山吹。確かに、獅子神の苦しむ姿から情報は得られただろうが、正面に座る医師(サウンド・オブ・サイレンスで、真経津に現れた肉体的ダメージからも診断材料を得ていた)に比べれば、得られた情報は遙かに少ないと言う説が有力です。

 2セットでは山吹が2勝し、ライフダイヤを手に入れた。そして、担当行員の加賀は誇らしげにライフダイヤを掲げ、楽しそうに梅野に絡んだ。そのツンデレぶりを梅野は理解出来ず、加賀の想いを分かっていそうな渋谷は梅野の問いを受け流す。なお、11巻オマケ漫画の「仲良くなろうと勇気を出した加賀」と「投げかけられた言葉の善し悪しの割合で好意度合を測る梅野」の話はオチが神。

 3セットでは、獅子神が一度は競り勝つものの、時雨の一勝と残り札による山吹の勝利で終了。刑事ペアが2個目のライフダイヤを獲得し、優勢となる。

チーム戦だけにチーム毎の戦略が異なる

 3セット終了時点で、獅子神だけに電流を浴びせた村雨と、どちらも電流を浴びた刑事ペア。あまりにも獅子神のレベルが低い為、刑事ペアも対戦相手を舐めてかかる。否、村雨は舐めてかかるように仕向けていた。

 村雨の賭けは、獅子神があることに気付けるかどうかに掛かっていた為、ある程度までは「感情のようなもの」を敵に与えていた。それすらも、獅子神は判別出来ず、村雨が「感情のようなもの」を消しても気付かない。しかし、刑事ペアが「その変化に気付いたこと」に、獅子神は気付く。

 つまり、そのシーンだけで、村雨と刑事ペアの実力差が明らかになる。流石は、「めっちゃキモいやつ」だの「バケモノ」だのと評価される村雨である。毒親育ちも円滑なコミュニケーションの為に「感情のようなもの」を出すことはあるが、自分の感情が自分でも分かっていないことは多々有る。傷付いていても、虐げられても、それを表情に出さないどころか笑って流そうとする毒親育ちはどれだけいるだろうか?

唐突に始まるインナーチャイルドの話

 電流を浴びている内に、怒りを思い出した獅子神。その怒りは、自分が置かれた境遇に対するものではなく、自分自身を「幸福にしてやれない自分自身」へと向いていた。
 インナーチャイルドは、満たされない子供時代を過ごした大人が抱えている内なる子供。エッセイ漫画であらば「理解のある彼君」とやらが出現し、その子供を癒してくれる。しかし、当人の性別に関係なく、「内なる子供を癒してくれる誰か」に出逢えるかは運次第でしかない。

 また、「他人に甘えるどころか、他人に頼ることすら苦手な人間」は、運良く癒し手に出逢えても(人を信じられない性格も相まって)、その出逢いを無駄にしがちである。その上、露骨な可愛がりも、このタイプには逆効果である。無償の愛を知らないで育った場合、どうしても「こんな自分に優しくするなんて、何か裏があるのだろう」と考えてしまうからだ。

 臆病な獅子神もまた、そうやって他者との親密な関係を避けてきた可能性がある。メールをスルーされた上に、弱い方(オーバーキルにて、強い方ではないと示された)と言われても、「ジュースとか奢れよ」で流してくれる獅子神。タメになる対戦を見られる分は差し引くにしても、対人関係がなんだか可愛くさえ思える。

 そもそも、真経津から誘われなかった場合、二人の関係は「複数居る対戦相手」で終わっていただろう。そこを、気分屋ルーシーの対戦後、獅子神を面白そうと考えた真経津(笑顔で放つ「変なの」から判断)が、連絡先を手に入れて(嘘を交えながらの)遊びへのお誘い。その育ち方からして、友達と「金の掛かる遊び」をしたことが無さそうな獅子神は、なんだかんだパーティーを楽しみにしていた説がある。

 獅子神と誕生日を同じくする江渡貝くんであれば、剥製の出来を褒めてくれた相手に気を許す。その上、歪んだ巣から解放して貰った後には、鶴見中尉に入れ込む程だった。
 だが、臆病な獅子神の場合、それが通じないように思える。そもそも、インナーチャイルドが求めているものは人それぞれである。

 インナーチャイルドを癒す
 =自分自身を幸福にする

 その方法は、十人十色。他人のエッセイを鵜呑みにしたところで、インナーチャイルドが癒される訳でも無い。だからこそ、自分の頭で考えねばならないのだ。

続く

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