見出し画像

毒親育ち視点で見るジャンケットバンク ジヤックポット・ジニー

 初のハーフライフ対戦相手、雛形。彼が作品に登場するより前に、担当行員・土屋田が「社会人マナーが迷子の状態」で宇佐美班にやって来る。上辺だけ強そうに見せ掛けた土屋田。伊藤班の同僚は勿論、担当ギャンブラー雛形にも見下される存在であるのだが、それに気付いていない。むしろ、この時点だからこそ、あんな態度でいられたのかも知れない。
 さて、雛形の職業からして、材料費に金が掛かるのは明白。芸術分野は、それだけで稼ごうとするなら、技術を得るまでの資金が莫大である。油彩画に使う絵の具にしろキャンパスにしろ、検索してみれば値段が分かるが、その購入費もギャンブル由来なのかと思ってしまう。

 美術の授業は、中学の三年間しか受けていないのだが、その担当教師の癖が強かった。期末試験で答えに「マネ」「ミネ」「モネ」と書いた生徒は、その設問を全て不正解にしたそうだ。「マネ」と「モネ」だけ記入して空白が有った場合は2問分の得点が得られるが、教師が「ふざけている」と判断した上で不正解扱いにしたと答案返答時に言い放っていた。
 また、別の教師は、まるで棟上げ式の餅撒きの如く、答案を巻きながら返却した。餅とは違い、テスト用紙は空気抵抗を受けてヒラヒラと動いて何処に落ちるか分からない。生徒が自分のテスト用紙を掴むまでに点数が他の生徒にバレないとしても、いい歳した大人が仕事でやる時点で何かが狂っている。
 中学の三年間でそんな美術教師に当たったせいで、美術に関わる仕事をする人に良いイメージがそもそもない。それに加えて、裏方を担当している昼間からも「ヤベェ奴」と言われている。それが分からないのは、土屋田だけだ。

 土屋田・イン・ワンダーランド

 お花畑の頭だから、担当ギャンブラーに見下されていようが、実は良いように操られていようが、それがはっきりと示される時が来るまで気付かない。なんなら、楽に稼がせてくれと祈り出す。4巻巻末の「影響を受けやすい傾向あり」は納得の考えの不安定さだ。
 そして、思い通りの展開になったら声を上げ、それで雛形にも怒られ黙る。影響を受けやすいにも程がある。

 ゲーム中、雛形が写し出された鏡。画家らしく額縁に入っているが、それは多数の他者が組み合わされて作られた顔。つまり、他者を見て理解したつもりで、それから得たものを自分のものにしたつもりもであり、自分自身は無い。それが、土屋田を見下していながら「影響を受けやすい傾向」の土屋田と似た弱点だった。
 実際、雛形は土屋田にしてきたようなやり方で敗北している。真経津側からすれば、対獅子神や対村雨以上に、鏡の反射を思い出させる作戦だった。

 自分自身がなく、影響を受けやすいのは、否定的な言葉を与えられ続けた毒親育ちも同様。それを踏まえると、獅子神がギャンブルで何かを見付けようとしているのも頷ける。他にもやり方があるとも思うが。
 自分自身を見失なわないこと。これが、生き残る為に必要なのかも知れない。

サポートして下さるとは、こちらからも貴方様の幸福を願わなければなりませんね。感謝の意を示します。