【3】街と迷宮と
「街を案内するよ、エルルちゃん」
「エルル先輩。私はお店の片付けがあるので、また宿で」
海賊少女マリスが、農家の娘エルルを「星海の海豚亭」の外へ誘います。
踊り子のミキは、看板娘の人魚ちゃんと何か話してる模様。
さて、ここで質問です。
「ここ『サイコーゼ』は、できたばかりの港町だよ」
「わたしぃはぁ、スーパーサイアゼリヤだぁ!」
ちょっと違います。いきなりボケをかますエルルちゃん。どうやら、人を笑わせずにはいられない性分のようです。
「港町に山岳都市、城塞都市に寺院都市。冒険者が集まる街はたくさんあるけど、共通してるのは人の行き来が多いことだね」
「もしかしてぇ、オティス商会ですかぁ?」
エルルの問いかけに、うなずくマリス。
「オティス商会は、異世界を股にかける冒険商人。新しい世界が見つかれば商人を派遣して街を作るし、この世界『カラヴィアン』も例外じゃない」
あたりを見ると、まだ工事中の建物もあちこちに。そのひとつから、エルルの姿を見つけて手を振る者がいます。
「お〜い、エルルっち!」
「ゾーラさぁん!」
工事現場で働く、ドレッドヘアにゴーグル姿のたくましいお姉さん。彼女もエルルの知り合いでしょうか。服が汚れるのも構わず、ハグを交わす二人。
「あの後、新しい世界が見つかったって知らせがあって。オレっちたちは、オティス商会が建てた街で育ったから、恩返しに街作りを手伝ってるっす」
「わたしぃの田舎に来て街を作っていったのも、オティス商会でしたねぇ」
単なる個人商店でなく、地球で言うなら国際的大企業でしょうか?
それでいて、このフットワークの軽さ。
「サイコーゼは最高だぜ、さあ行こうぜ!」
マリスとゾーラも、拳を突き合わせてニッコリ。どうやら、街の名前の由来みたいです。日本語のダジャレ?
「この街は『オソレの海』の謎に挑む冒険者たちの拠点なんだ」
「コワイ海ですかぁ?」
再び、ここで質問です。
ダンジョンRPGの元祖「ウィザードリィ」は、古典的な地下迷宮。「世界樹の迷宮」は文字通り、巨大な樹木が冒険の舞台に。「不思議のダンジョン」シリーズでは、自然環境そのものが変幻自在の迷宮。
それなら、海がダンジョンでもおかしくないでしょう。危険度は地下迷宮を上回るかも。「世界樹の迷宮3」でも、船に乗って海を冒険できました。
「あとで、ボクの船も見せてあげるよ」
夕日も沈みかけてきたので、エルルとマリスは一日の仕事を終えたゾーラと一緒に宿屋へ向かいます。工事関係者の宿舎にもなっているそうです。
「オカエリ!」
「オツカレサマ〜」
南国風な内装の宿に入ると、どこからか人の声がしますが。姿は見えず。
「あれぇ?」
エルルが、ふと上を見上げると。観葉植物の枝に灰色の鳥がとまってます。
「ツバメノヤドヘ ヨウコソ」
接客していたのは、なんと鳥のヨウムでした。ヨウムのお宿…。
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