【2】酒場の新入り
酒場を訪れる冒険者。危険な探索から帰ってきたのでしょう。くぐる入口は西部劇の酒場みたいなスイングドアかもしれませんし、居酒屋ののれんかもしれませんね。
酒場の店名や内装なども、思い付く限りメモしておくと雰囲気が出ます。
冒険者があたりを見回すと、新顔の姿が見えます。さて…
ここからは、具体的にサンプルを出していきます。挿絵はAI生成で試作してみました。変なとこも多いけど、50%くらいイメージに近ければいいや。
舞台は、海賊映画に出てきそうな南の島。荒くれ者が集まる港町の酒場に、ひとり浮いた感じの農民の娘がやってきました。彼女の名前は「エルル」。知り合いに誘われて、この街へやってきました。この子が新入り。
必ずしも、自発的な理由でなくていいのです。誰かに雇われたり誘われたりすでにパーティを組んで冒険をこなしてきた、でも。
この世界の名は「カラヴィアン」。誰が付けたか謎ですが、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」が由来でしょうか。「世界樹の迷宮3」も明らかに海賊映画をモチーフにしていますね。
酒場の名は「星海の海豚亭」。店の真ん中では、巨大な金魚鉢みたいな水槽に入った人魚がにこやかに手を振ってます。彼女の瞳には、星が見えます。この土地の先住民「ホシビト」です。
カラヴィアンの海には、ヒトデ以外にも星形のサンゴや、星の模様の魚などが住んでいて。それで「星の海」と呼ばれています。
「エルルちゃん、カラヴィアンへようこそ!」
探索から帰ってきたベテラン冒険者は、海賊風の身なりをした少女。エルルより年下にも見えますが…
「姐さん、お帰りなさいませ」
酒場に出入りする屈強な男たちから親分と慕われているようで、ただものではなさそうです。
「マリスさぁん!」
はじめての土地で知り合いを見つけて、エルルの表情が明るくなります。
「そうそう、ミキちゃんもこの店で働いてるよ」
海賊少女マリスと、農民の娘エルル。そして踊り子のミキが、再会を祝して乾杯のエールを運んできました。看板娘のポジションは人魚の子に譲って、ここではメイド服姿でウエイトレスをやってるようです。
「エルル先輩、では再会を祝して」
「かんぱぁい!」
三人の声が唱和して、木製の樽型ジョッキが高く掲げられます。
ここで、ビデオゲームのダンジョンRPGを遊ぶ際にぜひ考えてほしいことがあります。
そのヒントは、映画版D&Dにありました。
全員が、何らかの形で知り合い。危険な冒険で背中を預ける仲間はやはり、信頼のおける人物でなければ。土壇場で逃げられたり裏切られてはたまったものではありません。MMORPGやPBWなどでは、実際あることです。
ひとりで遊ぶダンジョンRPGでも、迷宮のウワサを聞いて集まってきた冒険者の中にどんな危険人物がいるか分からないと想定することで、新たな物語の生まれるきっかけになるでしょう。
「世界のニュースを日本人は何も知らない④」に、こんな話がありました。
アメリカ人がフレンドリーな真の理由は「私は危険人物ではありません」と主張しているのだというのです。
国土がとても広いアメリカは、おたずね者が素性を隠して遠方の土地へ逃げることはよくあり、よそ者は怪しい奴と見られがちです。
アメリカで起きた殺人事件について放送しているバラエティ番組でも、よく見かけるパターン。
これ、まさに迷宮のウワサを聞いてきた冒険者が集まる街そのものですね。さすが、RPG発祥の国アメリカ。想像を広げる助けになりますね。
お話は、エルルたち三人娘の物語に戻ります。彼女らの積もる話を聞いてると、どうやら三人は別の街で知り合い、親しくなったようです。そしてそこで何らかの出来事があり、みんな街を出た先で、マリスがエルルを誘った。
彼女らには、どんな事情があったのでしょうか。
なおこれは、私の小説「ベナンダンティは拡張現実の夢を見る」の前日談にもなっています。