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商人のDQ3【5】アリアハンの遺産

かつてアリアハンは全ての世界を治めていたのじゃ。
しかし戦争が起こって多くの人々が死んだ。
そして海の向こうに通じる旅の扉を封じ込めたのじゃ。

 アルバイトで日銭を稼ぐうちに、冒険者たちはこんな昔話を耳にします。そして問題の「旅の扉」は、険しい山々を迂回した東の果てにあると判明。全ては地道な聞き込みを続けた冒険者たちと、アリアハン城の図書館で古い文献に目を通し続けたアッシュ少年の努力の結実でした。

 さっそく、冒険者たちは東の山奥へ向かいます。

ここがいざないの洞窟じゃ。じゃが階段は石壁で封じられておる。

 ようやく海の向こうへ行けるかと期待していた矢先、冒険者たちは落胆しますが。

「みなさん、お待たせしました!」

 戦士クワンダに背負われたアッシュ少年と、シャルロッテがそこへ駆けつけます。そして取り出したのは、宝玉のようにも見える不思議な物体。

 旅の扉の封印を解くには、魔法の玉が必要。アッシュ少年が魔法使いたちに手伝いを頼んでいたのは、これの研究でした。

「古い文献だけで試作に行き詰まっていたところ、レーベの村に魔法の玉を作れる老人がいるとウワサを耳にしまして。彼に弟子入りして、やっと完成させることができました」

 シャルロッテが魔法の玉を石壁に仕掛け、全員が退避すると。玉からカウントダウンの音声が響き、直後に激しい閃光と爆音、立っていられないほどの揺れがあたりを襲います。やがて視界が晴れると、一行の目に入ったのは崩れた壁の奥へと続く通路。

「やったでち!」
「まだ終わりじゃありませんよ、シャルロッテさん」

 喜ぶのはまだ早いと、一同に告げるアッシュ少年。通路は石壁とは様子が異なり、長い年月を経てもサビひとつない不思議な輝きを放つ金属で外壁が覆われています。照明が不要なほどの明るさ。

「この先は、古代アリアハンの封印された遺跡になります。文献によれば、千年前の大戦で使われたカラクリ兵器が今もなお、侵入者を排除するために内部を巡回しているそうですから」

 行く先の困難を予想し、クワンダが表情を険しくします。通路の壁を調べてみますが、鉄とは異なる極めて強靭な材質で、並の武器では全く傷付きません。もし、カラクリ兵器の装甲が同じ金属だったなら。

「この先へ進めるのは、歴戦の冒険者だけだ。腕に自信が無ければ、無理はするな」
「僕はアリアハンで、みなさんの帰りを待ってます。冒険のお話、楽しみにしてますからね」

 一度戻ることを決断した冒険者に背負われ、帰ってゆくアッシュ少年。

「なに、誰かが向こうへ到達すれば、あとはルーラで連れてってもらえば」「空路もダメだぞ。空を見なかったのか」

 クワンダに指摘されて、冒険者たちが空を見上げると。遠くの空に飛竜や猛禽、ほうきにまたがった魔女たちの姿が。抜け目ない魔王軍。

「キメラの翼やルーラで飛び上がったら、その瞬間に集中攻撃されるか」
「アリアハンから脱出したかったら、遺跡を抜けていくしかないでちね」

 意を決して、シャルロッテとクワンダは通路の先へ進みます。


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