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3夜 悪夢のゲーム

「おや、新たな参加者でしょうか?」

ユッフィーと、ささやかな胸の金髪娘が再会のハグを交わしていると。道路側から、男性の声が聞こえた。一度聞いたら忘れない、おどけた口調に女子ふたりが振り返る。

「お疲れ様ですぅ!」

知り合いだろうか。目の前の金髪娘は、平然とあいさつを交わしてるけど。

枯れ木のように細い手足と身体の、動くピエロ人形。まるで、見えない糸で釣られて誰かに操られているような。気のせいか、どこかで見た気がする。

「エルルさん、彼女は?」
「わたしぃのお友達ぃ、ユッフィーさぁんですぅ!」

金髪の子、エルルって名前なのか。もう知り合いってことになってるから、改めて名前を聞けずにいたけれど。

「『悪夢のゲーム』へようこそ、ユッフィーさん。ワタシは案内人として、参加者のミナサンに仮面をお配りしています」

そう言って、名刺代わりに差し出してきたのは白い仮面。無表情で、どこかぞっとするような不気味さ…背筋に悪寒が走るのを感じた。やはりここは、悪夢の中なのだろうか?

ちなみに、彼ら人形には特に個体名などなく。道化でもピエロでも、好きに呼べばいいとのことだった。

「まず、仮面の説明を聞いてもいいですの?」

理由は分からないが、目の前の道化からは外見の不気味さ以上の底知れない何かを感じる。私が、仮面を受け取るのをためらっていると。

「ワタシを警戒していますね、青い髪のお嬢さん」

脳裏にフラッシュバックする、強烈なイメージ。寒気を感じるけど、くもりガラスのようにぼやけて思い出せない。

ユッフィーの髪は頭頂部がブルーで、下に向かってターコイズブルーのグラデーションになっている。アニメのキャラみたいに長い、外ハネのツインテールが風に揺れていて。

「その髪の色は、仮面を受け取る前から『アバター』に変身している証拠。その上、悪夢のチカラまで敏感に感じ取った。興味深い地球人です」

道化の顔である仮面の、うつろな眼窩が。ユッフィーに視線を向けてくる。
寒の戻りかと思うくらい、寒気が急に強くなってきて。思わず、自分の腕で自身を抱くようなしぐさをとっていた。

「この仮面にはアバターへの変身だけでなく、他のプレイヤーとの通信など各種便利機能がありますから、悪夢のゲームを戦い抜くなら必須ですよ」

要するに、仮面の形をしたスマホみたいなものだろうか。

「ピエロさぁん」

ユッフィーがうなずいていると。
そこへ唐突に、エルルが頬を膨らませてツッコミを入れてきた。

「『悪夢のゲーム』じゃなくてぇ『勇者育成プログラム』ですよぉ」
「その呼び方、気に入らないですね」

一瞬、エルルと道化人形の間で視線がぶつかり、火花が散った。知り合いではあるが、ライバルなのだろうか?

「『悪夢のゲーム』はもともと、ワタシたちのもの。アナタがおかしなことをしなければ、乗っ取られるなんてザマには」

エルルと道化の間には、何かいろいろあるようだ。

(ほう、そういうことか)

そのとき、ユッフィーの胸元で赤い宝石がギラリと光った。一同の視線が、谷間の首飾りに集まる。気のせいか、誰かの声が聞こえたような?

「なんでしょう、その首飾り。何かの『ヒュプノクラフト』でしょうか?」
「さぁ、なぁんでしょおねぇ?」

道化人形も、赤い宝石の首飾りに興味を示す。エルルの方は、何か知ってる風なそぶりだが。わざととぼけているのだろうか。

それにしても、知らない言葉が一気に出てきた。
「悪夢のゲーム」と「勇者育成プログラム」に「ヒュプノクラフト」。

この夢が、位置情報ゲームの「D J Pドラグーンジャーニー・プロムナード」と現実の夜景が混ざったキメラな理由とも、関わりがあるのだろうか?

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