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2夜 思い出せない再会

「あだだだ…」
「すみません、大丈夫ですか?」

まだ夢の中。空から落ちてきて、近所のスーパー銭湯の入口前。
私は起き上がると、金髪の女の子に声をかける。

もちろん、女の子を下敷きにしたままなんてバカなことはやってない。漫画やアニメではよくあるけど、リアルでは犯罪にも等しい。ここは夢だけど、おっさんは許可なく女子に触れてはいけない生き物なのだ。

幸い、大した怪我もないようで。
女の子は起き上がると、こちらを見下ろしてくる。

「すみません」
「ユッフィーさぁん?」

私は、違和感に気づく。何かが変だ。
目の前の女の子は、こんなに背が高かっただろうか?
見た感じは、北欧系のゆるふわな子だけど。

それになぜ、その名を知っている。「ユッフィー」は、私がRPGやPBWなどでよく使うアバターの名前だ。小説の主人公にも。

「日焼けしてるけどぉ、ユッフィーさぁんですよねぇ?」
「ええ、そうですの」

私は、彼女に心当たりがない。けれどユッフィーの何を知っているのか興味がわき、キャラの口調で答えてみた。
さすが夢と言うべきか、声も女の子のそれに変わっている。

「うわ〜ん!ユッフィーさぁぁん!!」

すると、いきなり抱きしめられた。その胸はささやかだった。
背丈が違うから、女の子は身をかがめて。

「ユッフィーさぁん、会いたかったですよぉ!」

私の柔らかな胸に顔をうずめて、感激のあまり泣きじゃくる女の子。
あれ、私の胸?そんなに太った覚えはないぞ。中年だし、お腹が出てくるのは避けられないが。

改めて胸元を見たら、私に抱きついている女の子より大きかった。
私のおっぱい。思わず、目を奪われた。結構な重さがある。
いつの間にか、首にぶら下がってる謎の首飾りも気になるけど。

声が違う。乳房がある。彼女の背が高いんじゃなく、私の背が縮んだ。
さっきまで蝶になってたかと思ったら、今度は褐色肌でロリ巨乳な女の子になっていた。さすが夢だ、カオスだぜ!

「自分で触る前に、女子のハグで女子だったと気付く。新しいですの…!」

さっきまで、リアルを引きずってたのに。
夢ならではの解放感が急にこみ上げてきて、つい内心を口走ってしまった。漫画やアニメじゃあるまいし。

「ユッフィーさぁん?」
「な、なんでもありませんの」

金髪の女の子が、不思議そうに私の顔をのぞきこんでくる。距離が密です。
中身はおっさんでも、見た目が女子同士のスキンシップなら、犯罪じゃないですよ?

私はまだ、この子の名前を知らない。正確には、思い出せない。
夢は忘れるものだ。目覚めれば、私たちは現実の忙しさに流される。

夜の夢を渡る大冒険で、ユッフィーと彼女は…旅の仲間だったのだろうか?

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夢を渡る小説家イーノ
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