ちぇるのべるVol.2『月夜に照らされて』
――ウサギが餅つく満月の夜に、君は何を想うだろう。
昼間の太陽はまだ夏の盛りをそのままに燃えているが、夜は日に日に涼しくなってきている。
「今日は満月か」
聞き慣れた低い声がした方を振り向くと、そこには同居人 杉本正和の姿があった。身長百八十センチメートルを超える彼は、二、三日放置された無精ひげを撫でながら外を眺めていた。
「まーさんが外を見るなんて珍しいですね」
「俺にも気まぐれというものがあるんだよ」
私が彼と暮らしているのには、少しくだらない理由があった。数年前私