読書メモ「はじめての地域防災マネジメント(災害に強いコミュニティをつくる)」
1.目次
1章 災害を理解する
1.日本と災害
2.防災マネジメント
3.防災計画のいま
2章 避難から復興へ
1.避難から生活再建へ
2.避難のマネジメント
3章 復興から強靭化へ
1.被災から復興へ
2.災害に強いまちづくり
4章 災害ボランティア
1.災害救援・復興支援活動とは
2.ボランティアとは何か
3.災害ボランティアを側面的に支える
5章 地域で支える
1.防災に取り組む身近な組織と活動
2.自主防災組織を作ろう、見直そう
3.平常時の見守りや備え
6章 社会と心のレジリエンス
1.「災害弱者」と災害に強いまちづくり
2.「災害弱者」を対象とした支援の現状
3.被災時のこころのケア
7章 グローバルな視点からの地域防災
1.国際基準と国際的な枠組み
2.防災と国際協力
2.読書メモ
1章 災害を理解する
①災害の分類
災害が分類されて定義されています。自然災害と人為災害。自然災害の中 には、水気象学系災害(風水害、雪氷災害、その他)、地質学系災害(地震、火山、斜面災害)、生物学系災害(インフルエンザなど)
②防災マネジメント
【発災前】
・被害抑止を支援する施策(担い手:市民)
・被害軽減に向けた取組み(担い手:市民)
・災害予知と警報が来る前の準備(担い手:市民)
【発災後】
・被害評価を迅速に行うシステム構築(消防、警察・災害対応組織)
・災害対応の支援(担い手:行政・被災者支援組織)
・復旧の支援(担い手:行政・被災者支援組織)
・復興の支援(担い手:行政・被災者支援組織)
・次世代への伝承(担い手:被災者支援組織、被災者)
【共通】
・対応を円滑にする情報マネジメント(災害対応・被災者支援、市民)
③防災計画に関する全体像
・上位の法律:災害対策基本法、国土強靭化基本法
・国レベルの防災計画:防災基本計画、国土強靭化基本計画
・都道府県・市区町村の防災計画:地域防災計画、国土強靭化地域計画
・居住地域レベルの防災計画:地区防災計画
2章 避難から復興へ
①避難から生活再建へ
第一段階:命を守る
防災気象情報を5段階の警戒レベルで整理されています。
レベル3で高齢者避難、レベル4で避難、レベル5で垂直避難
第二段階:身を寄せる
避難所での生活、避難所運営が書かれています。避難所準備と運営
高齢者や障害者、妊産婦、乳幼児向けに福祉避難所を整備する。
第三段階:仮住まい
応急仮設住宅、生活再建への経済的支援について整理されています。
仮設住宅の広さは30㎡で一年毎に更新する仕組み。
第四段階:新しい日常へ
東日本大震災では災害危険区域などの指定により元の土地に家を
建てることができなかった。まさに街の再建ですね。
②避難のマネジメント
目黒巻:目黒公朗教授が開発された被災のシミュレーション
クロスロード:災害時の判断シミュレーション
防災訓練:知識の応用技能、技能、態度の習得、成果物の獲得が目的
図上訓練:阪神淡路大震災以降に広まった技法。被災シミュレーション
避難所運営訓練:よく利用される技法はHUG(HinanjyoUneiGame)
3章 復興から強靭化へ
①被災から復興へ
・復興とは何か
「復旧は前の状態に戻すこと。」
「復興は一度衰えたものが再び盛んになること。」
災害復興とは元の状態に戻すのではなく、発災前より勢いのある状態
を目指すことが大事
・東日本大震災以降の復興関連法制
東日本大震災の復興状況が整理されています。
被災者支援、住まいとまちの復興、産業・生業の再生、福島の復興・
再生が整理されています。
・大規模災害復興法と自治体独自の復興計画
・事前復興と国土強靭化
アンブレラ計画をイメージで記載されています。災害に関する公的な
計画が整理されて、わかりやすく記載されています。
②災害に強いまち作り
・施設や構造物の整備
・リスクコミュニケーション
・BCP
・学校における防災教育
・防災士による防災教育
・防災無線等を通じた防災情報の提供
・公民連携強化
4章 災害ボランティア
①災害救援・復興支援活動とは
・自助・共助・公助
阪神淡路大震災で使われるようになった自助・共助・公助ですね。
まずは自分自身を守る。近くにいる人を助ける。救援を待つですね。
・専門性の有無
DMAT(医療系)、DWAT(福祉系)、防災士が専門家ですね。
・災害ボランティアの立ち位置は?
自助共助公助で言えば、ボランティア活動は共助になります。
災害ボランティアの方にもノウハウが蓄積されています。
②ボランティアとは何か?
・ボランティアの理解
ボランティアの魅力や価値は「自発性・主体性」もしくは、
「社会性・公益性」にある。あくまでも自発性と主体性が大事ですよね
・ボランティアになるということ
「放っておけない」「我慢できない」という気持ちが形になる。
ボランティアになることを後押しするには、後ろ押しをするボランテ
ィアプログラムが大事。
・ボランティア活動の諸相
被災者と活動者をつなぐ災害ボランティアセンター
被災した住家などでの活動
避難所などでの活動
被災地にいかなくてもできる活動
・災害ボランティアを側面的に支える
復旧・復興を加速させる三者連携の動き
行政、災害ボランティアセンター、NPOの三者連携が重要。
ボランティアコーディネーション
ボランティアコーディネーターの役割
受止る、求める、創り出す、発信する、集める、まとめる、高める
5章 地域で支える
①防災に取り組む身近な組織と活動
・自主防災組織を理解する
法律上の位置づけは、自主防災組織は災害対策基本法になる。
「市町村長は、自発的な防災組織の充実を図り、市町村の有するすべ
ての機能を十分に発揮するように努めなければならない。」
自主防災組織の増加と実際
きっかけは阪神淡路大震災になりますね。世帯数のカバー率は、
ここ15年で20%上昇しており、84.3%となっています。
カバー率が高いのは兵庫県で97.7%です。
・防災活動に取り組む身近な組織とその活動内容
民生委員の普段の活動を活かして見守り活動による要配慮者の把握、
避難訓練や避難所運営の支援に関わることが多い。
②自主防災組織を作ろう、見直そう
・既存の自主防災組織を充実する・見直す
班編成を行うが自治会のように街区ごとに行うのではなく、道路を挟
んだ向かい合わせで班を編成するのが発災時に有効に機能する。
・自治会の防災部門がない場合に新たに設立する
自主防災組織の組織編成は、本部、情報連携班、給食給水班、
避難誘導班、救護救助班、消化班などで編成される。
・防災学習会などの自主活動をする。
組織が無い場合は、防災学習会などを開催し、防災サークルや防災グ
ループを作り、行政や近くの公民館、NPOなどの協力を得てできる
所から進めて行く方法もある。
・近隣地域や関係団体と防災ネットワークを作る
自主防災組織がうまく機能しない、あるいは規模が小さい、高齢化な
どにより担い手が十分でない場合は、複数の自治会が1つの防災組織
を結成する場合もある。
③平常時の見守りや備え
・現実を知る
方法は二つある。1つ目は地理的空間把握であり、どこに危険がある
かを地理的に把握する。2つ目は災害時の避難や安否について具体的
に想像し、避難時に一人で避難できない人がどこにどの程度いるかを
把握する。
・地区防災計画を作る
地区防災計画書を策定するのに市町村は相談に乗り専門家等を派遣す
る予算を確保する必要がある。
地区防災計画書は、以下のことを記載する。
計画の趣旨・目的などの基本方針、作成主体の構成員、対象範囲、地
区の特性、予想される災害、主な取組み内容(平常時)と(災害時)
の取組みと組織体制、要配慮者の支援方法、具体的な防災対策、防災
マップ、緊急連絡先
・中長期の視点で環境を改善する
防災で忘れてならないのが具体的な対応方法を検討した際などに把握
した問題点を中長期の視点から改善する計画作りである。どちらかと
言えばハード面の改善が多い。狭い道路の拡幅、がけ崩れ危険個所の
対応、水利確保など。
6章 社会と心のレジリエンス
①「災害弱者」と災害に強いまちづくり
・災害弱者とは
自身の身に危険が差し迫った場合に察知する能力が無い又は困難
自身の身に危険が差し迫った場合にそれを察知しても適切な行動を取
ることが出来ない又は困難
危険を知らせる情報を受け取ることが出来ない又は困難。
危険を知らせる情報を受け取っても、それに対して適切な行動を取る
ことが出来ない又は困難。
一般的に女性、障害者、子供、高齢者、日本語ができない外国人
・阪神淡路大震災での災害弱者の発見
避難生活や復興の過程で災害弱者が取り残されてしまった。高齢者、
低所得者、外国人などが多くの犠牲になった。80歳以上の死亡率が
高かった。発災後に高齢者の間で震災後関連疾患、災害関連疾患が見
られた。
・東日本大震災での災害弱者
亡くなった方で60歳以上の高齢者が全体の2/3を占めている。全
体の死亡率が0.4%に対して障害者の死亡率は1.66%と高かった。災害
関連死の9割が66歳以上であった。
高齢化社会で要介護者の人数は飛躍的に増えている。2000年に218万
人であったが、2020年は681万人である。
・災害弱者が直面した困難
大きな災害が起こるたびに、高齢者や障害者をはじめとする災害弱者
が差別されたり、十分な配慮が受けられなかったりという状況が繰り
返されている。
・弱さの社会的見方の変化
変わらなければならないのは個人ではなく社会であるという考え。
入口に段差があり乗り越えられないのは個人の努力で克服するのでは
なく入口の段差を無くすべき。という考え。
・多様な生きづらさへの配慮と災害時支援
普段の生活の中で、この社会の脆弱性を放置しておくと災害時にはさ
らに大きな問題となり犠牲も大きく、復興への道半ばで多くの人が取
り残されてしまう。まさに災害対策は平常時からですね。
②災害弱者を対象とした支援の現状
・災害時避難の支援
要援護者を「要配慮者」と「避難行動要支援者」に整理された。要配
慮者は高齢者、乳幼児、その他特に配慮するものと定義されている。
避難行動要支援者は要配慮者のうち、災害が発生し自ら避難すること
が困難である人。
・福祉避難所
一般的な避難所では対応が難しいケースに対して、災害対策基本法で
は、高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患
者など、に対して福祉避難所を指定している。
・福祉的ニーズに対応した応急仮設住宅
災害救助法では、段差解消のスロープや生活援助員を設置するなど、
住宅サービスを利用しやすい構造及び設備を有し、日常の生活上特別
な配慮が要する複数の人が入居できる福祉仮説住宅
・レッドゾーン内の施設への規制
危険な場所に要配慮者利用施設を造らないことも防災の観点からは重
要である。
・当事者参画による復興の必要性(ジェンダの視点から)
避難所の運営から復興計画まで男性中心に進められ女性の声が届きに
くくなっている。東日本大震災の経験を踏まえ基本方針が策定された
「男女共同参画の視点からの防災・復興の取り組み指針」
③被災時のこころのケア
・被災者のこころの様子
発災時以降は、時間経過により3段階の反応を示す。
①茫然自失機、②ハネムーン期、③幻滅期
・被災者のこころのセルフケア
対応方法としては、休息を取る、食事や睡眠を十分にとる。お酒やカ
フェインを取り過ぎない。心配や不安を一人で抱えずに周りの人と話
す。お互いに声をかけあう。
・被災者のこころの支援
災害時支援の専門家でなくても、こころのケアができるようにWHO
が基本的知識や技術を整理したのが、心理的応急処置である。
・支援者のこころの支援
環状島と支援者の立ち位置で整理されている。
7章グローバルな視点からの地域防災
①国際基準と国際的な枠組み
・国境を越える人道支援に関する国際基準(スフィア基準)
2つの原則
災害や紛争の全ての被災者は尊厳のある生活を営む権利がある。援助
を受ける権利がある。
災害や紛争による苦痛を軽減するために実行可能なあらゆる手段がつ
くされるべきである。
4つの分野
給水、衛生、衛生促進
食料の確保と栄養
シェルター、居留地、非食料物資
保健活動
・防災に関する国際的な枠組み
防災の国際的な枠組みとして、仙台防災枠組みがある。
4つの優先すべき行動
災害リスクの軽減
災害リスク管理の強化
レジリエンスのための災害リスク削減への投資
災害に備え、効果的な応急対応とより良い復興
7つの目標
死亡者数を減らす
被災者を減らす
経済的損失を減らす
重要なインフラ損害や基本サービスの途絶を減らす
防災戦略を有する国の数を増やす
発展途上国への国際協力を強化する
早期警戒システムや災害リスク情報を利用できようにする
②防災と国際協力
・海外から日本へ
東日本大震災では世界の163の国と地域から義援金、物資、人道的
支援の申し入れがあった。その中にあ紛争中の国であったアフガニス
タンやイラクからも含まれていた。
・日本から海外へ
政府への支援:ODA、JICAを通じて支援を実施。
NGOを通じての支援:国内の63団体が災害に関するNGO
官民連携の支援:ジャパンプラットフォームによる支援
3.まとめ
地域防災のマネジメントという観点で記載されている。
最初に「災害を理解する」、「避難から復興へ」、「復興から強靭化へ」と記載され、災害のメカニズムから発災、復興、その先の強靭化へとマネジメント観点で記載されている。
次に「災害ボランティア」、「地域で支える」、「社会とこころのレジスタンス」が記載されており、一人一人の市民レベルから地域防災への関りが書かれている。具体的な事例と共に一人一人の行動に繋がることが記載されている。
最後に「グローバル視点からの地域防災」として、世界標準でスフィア基準や国際的な枠組みである仙台防災枠組みの解説が書かれている。
地域防災マネジメントに関して幅広く、網羅されており、参考文献も明記されており、随所に図解も入りわかりやすい内容となっている。