見出し画像

シニアになって働く意味を考える⑤ ~老後は損益分岐点でトントンに~ (改題・内容変更なし)

定年前後のシニアに「働く意味」についてインタビューした記事です。
一般的に、働く意味はおおざっぱに以下の2つにあると言われます。
1)自分の好きな仕事、やりがいのある仕事、社会的使命感のある仕事のために働く
2)家族のため、趣味や自分の余暇を充実させるために働く
ところが実際にシニアの方々にお話を聞くと、どうもそんな単純なものではないようです。そこで、シニア一人一人のインタビューを積み重ねて、「働く意味」のスペクトラムを描けたらいいかなぁって思っています。どんな平凡な人生にもドラマがあります。


67歳まで働くのがギリギリライン

 Yさんは61歳(2023.03時点)、保険関係の会社を60歳で定年し、同じ会社の再雇用制度で働いています。「再雇用で収入は大幅ダウンしたけど65歳まで働ける。67歳までの2年間は職を探さないといけないなぁ。67歳まで働くことはギリギリのライン」と言います。
 その理由は、61歳時の平均余命、年金受け取りの繰り下げ、高齢者給付金や加給年金、そして企業年金など全て考慮に入れ念入りに計算すると、寿命が来るまで最低限の生活がおくれることになるからだそうだ。
 詳しい計算方法を教えてもらったが、理解が及ばず結論だけを確認してみます。繰り下げで増額された厚生年金を67歳からもらい、会社員特権の企業年金、その他プラスアルファ(よく分からなかったのでこのように書かきます)で、余命計算で死亡する84歳までしのげるのだそうです。計算間違いはしゃれになりませんが、まぁ80歳も過ぎたら誤りにも気がつかない気がします。

そういう理論的なYさん、会社員人生も自分の適性を知って仕事を楽しむ

 大卒後1985年に現在の保険関係の会社に入社。入社後受けた適性検査に「接待の酒・麻雀・ゴルフはできません」と書いたことが考慮され(たと自身思っているそうで)、営業タスクのない保険支払い部署に配属されて転勤族となる。西日本で3都市(この間に結婚し、お子さん一人を授かる)、都心で2都市、北関東で2都市に赴任し、現在は都心本社に席を置く。会社員生活の前半18年間は保険支払い業務、後半の20年間はこれまた接待がない内部監査を専門とする業務で、現在に至っているそうです。本社勤務でも内部監査は全国の支店を一年中出張で飛び回るハードワークにもかかわらず、営業成績も気にせず、接待の気遣いもないので気楽だったと言います。今はコロナ感染もあってリモート監査が多くなり出かけることも少なく、さらに楽になったと言います。
 「えっ~、それってその筋のプロフェッショナルじゃないの?転職してみたら?収入も増えるかもしれないし」と聞くと、「所属会社では確かにプロだけど、一歩社外へ出ると役立たない」「所属会社のルールを熟知することで、社内での自分のバリューが決まる」なんだそうです。自分の適性をしっかり認識して(所属会社の)仕事のプロに徹していることが清いしスゴイ!と感心します。

多くの転勤経験からどこでもやってけると思えるし、保険支払いの厳しい現場体験が自信に

 これほど多くの転勤を経験し、「保険金詐欺は日常だ」という都市での厄介な仕事もこなしてきたことなどで、どこに住んでもやっていける自信がついたという。家族やYさんの仕事自体にも強いストレスだったに違いなく、家族みんなで乗り切り幸せな家庭をつくってこられたのだと想像できます。
 成人されたお子さんも、Yさんと同業の会社に就職されてYさんの家から通勤されているそうで、お父さんの持つ仕事観から影響を受けられたのではないでしょうか。会社員のお父さんが、自分の子どもに同じ職業で働いてほしいと思う人は稀だと思います。芸能人やスポーツ選手ではよくありますが、会社員には普通あまりないと思います。

老後は損益分岐点でトントンに

 「無事に67歳まで働けた後は?」と聞いてみると、「老後は損益分岐点でトントンに」とこれまたYさん独自の理論に、「それなに?」って即返してしまう。その意味を遠慮がちに聞くと、「その時その時で、いつまでこのペースで経済的生活が成立つか?をしっかり把握することで対応できるし、それしかない」とやや自信気に言います。その時は「そんなもんですか?」とその場では聞き流すも、後から徐々に腑に落ちてきます。

働く意味については?

 Yさんにあえて聞かなかったのですが、「自分の適性をしっかり認識して、背伸びせず自分でできる仕事のプロに徹することが働くこと」ではないでしょうか。Yさんがきっと遭遇したであろういろいろな困難を、そのことで克服してこられたのだと思います。
 

後記:

 Yさんは最後に「今の仕事も、やがてAIにある程度置き換えられていくだろう」と心配げに言う。二人ともこの流れにどうやって対応していけばよいかに黙り込む。もう我々シニアに対応する体力や時間がないみたいな雰囲気で、この楽しい会話が終わりました。
(2023.03.18投稿)
(2023.04.01改題、リード文変更、内容変更なし)

コメントを記入いただけるとうれしいです。
私個人への直接の問い合わせはココ。
https://note.com/innovajiiji/message
あるいは、一番下の
クリエイターへのお問い合わせ
をクリック

いいなと思ったら応援しよう!