
シニアになって働く意味を考える③ ~「人の能力」なんて、会社の持つプラットフォーム次第~ (改題・内容変更なし)
定年前後のシニアに「働く意味」についてインタビューした記事です。
一般的に、働く意味はおおざっぱに以下の2つにあると言われます。
1)自分の好きな仕事、やりがいのある仕事、社会的使命感のある仕事のために働く
2)家族のため、趣味や自分の余暇を充実させるために働く
ところが実際にシニアの方々にお話を聞くと、どうもそんな単純なものではないようです。そこで、シニア一人一人のインタビューを積み重ねて、「働く意味」のスペクトラムを描けたらいいかなぁって思っています。どんな平凡な人生にもドラマがあります。
定年・再雇用前研修でお尻に火が付く
Tさんは、1986年に大手エレクトロニクスメーカーに新卒入社後、一貫して電子デバイスの設計者として順調にキャリアを積み上げる。チームの責任者として重責を担っていた50歳の時、会社のリストラ策で部署ごと地方工場へ異動となり自宅からの長時間通勤を余儀なくされる。56歳の「定年・再雇用前研修」をきっかけに、住宅ローンや子どもの教育費を冷静に計算して「もっとずっと長く働きゃなきゃ!」とお尻に火が付いたという。天然ののんびりした性格に筆者も啞然となる。
「定年前研修を受けるまでは仕事に没頭していて、将来の自分の働き方や家族との暮らし方など考える時間がなかった」と言い、このままここで働き続けるべきか、自分は何がしたいのかを初めて考えるようになる。その後の行動が迅速で、すぐにいくつかの転職サービスサイトに登録する。
シニアにはメジャーな転職斡旋会社はダメ
Tさんのキャリアの特徴は特定の電子デバイス設計というニッチな専門職だったため、メジャーな転職斡旋会社ではマッチングが難しかった。ところが、多くの転職サイトに登録していたことが功を奏し、Tさんが属すニッチ分野に特化した転職支援会社が現れる。このエージェントは転職先企業の本音ベースの要望(譲れる点、譲れない点)を把握していて、Tさんの経歴職歴書のすり合わせだけで、待遇面の合意を残すだけで成約一歩手前までまとめてきたそうだ。転職希望のシニアにとってありがたい存在だ。(待遇面の問題の一つは単身赴任になることだったが、月1~2回の帰省手当が出るという好条件で成立。65歳まで雇用され給与も前職と同水準というからスゴイ!)
2019年3月(当時57歳)から在職しながら転職活動を始め、その年の9月には内定をもらい、個人的な事情から翌年2020年3月末日退社、4月初日から再就職先での業務を開始、社会保障費未支払いのギャップ期間がなしという好条件での転職成功例だ。
「人の能力」なんて、会社の持つプラットフォーム次第
Tさんの「人の能力」への考え方は、仕事について悩んでいる人には大変に示唆的だ。「結局、よい仕事ができるかできないかは、属する会社が持つ“プラットフォーム”に合わせて自分のいいところを引き出せるかで決まる」と言う。
つまり、その会社が持つ組織や仕組み、人材、設備や情報システムなどをひっくるめた会社の風土みたいなものを、どこまで理解しそこに合わせられるか。
当たり前の事だが、仕事は一人では成立しない。特に日本企業では、チーム戦で個人戦ではない。Tさんは、転職先の“プラットフォーム”に乗っかって、自分なりの味付けを少しふりかけて、仕事を楽しんでいる。ベテランの妙技だ。
大企業でクサっている、悶々としているシニアにも、どこかに活かせる場所がある
Tさんにシニアへのアドバイスを聞く。同じ会社で長く働いてきた我々シニアの個人個人の能力はみんな同じようなもので、その会社の“プラットフォーム”に合わせてきただけだと言い、「これまでのキャリアで培った専門性を活かす場所は必ずあるはずなので、まず自分にあった転職支援エージェントを見つけること。今の勤める会社に在職しながら相性の合う相手を気長に待つ、だから、スタートは早めに」という言葉に納得させられるのではあるが、定年前研修後で一気にここまで達観できるのかとむしろ驚く。
とは言え、将来は?「脳みその健康一番」がモットー
住宅ローンと子どもが大学を卒業するまでの学費のために65歳を過ぎてもまだ働く必要があるTさんではあるが、体より“脳みそ”を使ってする仕事が多い今、専門性を磨き続ければ必ずどこかで働けると言い切る。Tさんの今のモットーは「脳みその健康一番」なんだそうだ。確かに「柔らか頭」だ。
後記
「属する会社が持つ“プラットフォーム”に合わせて自分のいいところを引き出す」と言うTさんの言葉は、仕事は一人ではできないからこそ「働く意味」が生まれると言われているように思います。
Tさんの転職例のように、特定の企業だけ、特定の職種だけに集中して転職条件をマッチングさせる2次、3次転職斡旋エージェントの裾野の広さに、私も驚かされたことがある。幅広く多数の転職先を紹介できる大手転職斡旋会社は、若い転職希望者にはよいがシニアには向かないと思います。2023.03.04投稿 (2023.03.05少し編集)
(2023.04.01改題、リード文変更、内容変更なし)
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