
「新規事業開発は予算が少なすぎる!」
こんにちは、三菱総合研究所人材・キャリア事業本部の恩田です。
さて、突然ですがみなさん。新規事業開発の予算、足りてますか?私は足りていません。新規事業開発には様々なところでお金がかかります。リサーチやインタビュー、システム開発に人件費と留まることを知りません。しかしそれに対して投資される額は非常に少ないことは多々あります。彼の偉人は言いました。「予算を得るためには売上が必要だ。しかし、売上を上げるためには予算が必要だ。」と…。今回はそんな予算不足に困っている皆様向けに、新規事業開発予算の少なさの理由とそれによって発生する課題、その打開策について書いていきたいと思います。
①新規事業開発の予算が少ない理由
新規事業開発において予算が少ない理由は何でしょうか? それを語るには、まず経営層の心理を想像する必要があります。以下にその理由をご説明いたします。
1、ROIの不透明性
新規事業の多くは、投資対効果(ROI)が不透明であるため、経営層は慎重になります。既存事業で安定した収益がある中、不確定な未来にリスクを冒すのは心理的に抵抗があるものです。特に、過去に新規事業が失敗した経験がある企業では、この傾向が顕著です。
【背景例:製造業の事例】
ある製造業の企業では、過去に新しい製品ラインを立ち上げたものの、市場の需要を読み違えて在庫が山積みになりました。その苦い経験から、経営層は新規事業への投資を極端に控えるようになったそうです。ベタな話ではありますがもし自分がそのような経験をしてしまったら、周囲の目も気になり投資に積極的になれる気はしません。
2、既存事業優先の文化
多くの企業では、既存事業が最優先されます。売上や利益を直接的に生む部門にリソースが集中し、新規事業部門は「周辺的な存在」として扱われがちです。特に、予算策定時には営業部や製造部からの強い要望が優先され、新規事業部門の声が埋もれてしまう傾向にあります。これも非常に理解可能な考え方ではありますね。売上が見えているものと売り上げが見えないもの、どちらを重視しますか?と聞かれたら多くの人は前者を選ぶはずです。
【背景例:営業優位の組織構造】
営業部門が「このシステムを導入すれば売上が20%上がる」と具体的な提案をする一方、新規事業部門は「市場の可能性は未知数だがチャレンジの価値がある」と曖昧な説明しかできず、結果的に予算を獲得できないケースがあります。新規事業における“定量的”な指標はどうしても眉唾ものになってしまいます。いくらロジカルに数値を組み立てても、そこにいくつもの仮説が媒介するとなるとその数値に納得してもらうことは難しいでしょう。
3、短期的成果志向
新規事業は長期的な視点が求められますが、短期的な成果を求める経営層のプレッシャーにより、リソースが削られる場合があります。年度ごとのKPIを重視する企業では、短期的に成果が見えにくいプロジェクトは敬遠されがちです。
【背景例:KPI至上主義の影響】
新規事業チームが1年目に成果を出せなかったため、「来年度は既存事業に予算を振り分ける」と判断された企業があります。この結果、新規事業の進展が大幅に遅れました。新規事業のジレンマとも言える内容ですが、組織が合理的に生産性を追い求めた時、最もビハインドな位置に立たされてしまうのが新規事業といえるでしょう。
②新規事業開発予算がないと発生する課題
予算が少ないことでどのような課題が生じるのか、改めて一緒に見ていきましょう。
1、リサーチ不足でアイデアの質が低下
リサーチには時間とお金がかかりますが、予算不足により十分な調査が行えない場合、市場のニーズを正確に把握できません。その結果、的外れなアイデアを追求し、失敗するリスクが高まります。
【例:市場調査を怠った失敗例】
あるスタートアップは、競合調査を省略して製品をリリースしましたが、既存製品との差別化が不十分で、販売が伸び悩みました。
2、プロトタイプが作れない
プロトタイプが作れないことで、顧客からの具体的なフィードバックを得る機会を失います。これにより、製品やサービスが市場のニーズと乖離する可能性が高まります。
【例:プロトタイプ不足の影響】
試作品を用意できなかった企業が、リリース後に「想定外の使いにくさ」で批判を受け、販売停止に追い込まれた事例があります。
留意点:プロダクトの伴う事業であると、プロトタイプによる検証は必須でありつつもそこから得られたフィードバックがどこまで信用できるかは未知数です。そういった観点での不確実性も新規事業の立場を弱くする負の影響を与えていると考えられますね。
3、人材確保が難航する
新規事業は魅力的なビジョンやリソースがなければ、優秀な人材を引き付けることが難しいです。予算不足はこの魅力を削ぐ要因になります。また、そもそも優秀な人材は所属元の部署が離さない可能性が高く、本人が新規事業をやりたいと考えていても、それが部内でもみ消されてしまう可能性もあります。
【例:人材流出の背景】
新規事業部門に配属された社員が「予算がなくてやりたいことができない」と感じ、異動を希望するケースがあります。
4、士気の低下
予算が限られていることで、チーム内のフラストレーションが溜まり、やる気が低下することがあります。最悪の場合、優秀なメンバーが離職してしまうことも。予算がない状態でやれることというのは限られています。その中でベストを尽くすべきという考え方もありますが、あまりにも予算が使えないとメンバーのモチベーションは次第に下がってしまうでしょう。
【例:士気低下の連鎖】
チーム内で「どうせ予算がないからできることは限られている」と諦めムードが広がり、次第にプロジェクト全体が停滞し自然消滅するケースもあります。
③新規事業開発予算の少なさを打破するには
ここまで新規事業開発予算が少ない理由とその影響について触れてきました。新規事業なんてやるもんじゃないのかな…そう思ったあなたのために解決策も記述していきたいと思います。是非お試し下さい。
1、既存のリソースを最大限に活用する
社内の既存リソースを洗い出し、それを有効活用することでコストを削減します。例えば、他部署との共同プロジェクトとして進めることで、共有リソースの活用効果を最大化できます。また、社員のケイパビリティなどは意外と他部署に知られていないというケースもあるため、積極的に社内で存在をアピールする動きができると良いと思います。
【具体例:社内リソース活用の成功事例】
製造部門と新規事業部門が共同で新製品を開発した結果、開発費用を折半することで事実上コストを半分以下に抑えられた事例があります。社内アセットの有効活用は企業内新規事業において必須と言っても過言ではありません。どうせ誰もいない/協力してくれないとあきらめずに探し続けることが重要です。
2、コネクションを駆使する
ある程度安定した収益を得ている企業であれば、そこに所属する役員、社員たち、取引先企業等アプローチできるチャネルは豊富にあります。また、積極的に社外の交流会に参加することで社外パートナーや個人ネットワークを構築し、協力してもらうことでPoC先探索やリサーチ、試作の費用等を低減する方法があります。
【具体例:パートナーシップの活用】
ある企業が大学と連携して新技術の実証実験を行った結果、通常の1/3のコストでプロジェクトを進められました。営利目的で存在する企業にとって、大学は異なる方向性を持つ組織と言えるでしょう。大学の保有するアセットや人員はパートナーシップを結ぶに値するケースが多いので是非探索してみましょう。
3、テストを小規模に行う
地域限定のテストマーケティングや、小規模な実験を繰り返すことで、大きな失敗を防ぎつつ進捗を確保します。「そもそも売れるのか?」「そもそもできるのか?」といった不確実性の高い点の検証にお金をかけず、やれることをやっていくという話ですね。
【具体例:小規模テストの効果】
地方の1店舗のみで新商品をテスト販売した企業が、顧客の反応を基に商品改良を行い、全国展開で成功を収めた例があります。このような具体事例や実績ができるのは新規事業において非常に重要です。それだけでも追い風を吹かせることができますし、さらなるサービスブラッシュアップにもつながるでしょう。
4、ストーリーで経営層を説得する
投資の必要性を感情的に訴えるストーリーを構築することで、経営層の理解を得やすくなります。正直、新規事業開発で「絶対に成功する」というものはありません。そうなると、なぜ投資するのか?という問いに対する答えは必然的に「その会社にとっての意義」に繋がるはずです。中長期的に会社を見たときにどのようなメリットがあると考えられるのか?など短期的極小的な視点を広げてストーリーを作っていく必要があります。
【具体例:ストーリーテリングの成功例】
顧客の声を動画にまとめたプレゼン資料を作成したチームが、経営層から即座に予算を承認された事例があります。顧客の声は非常に重要です。もちろん顧客の声をすべて聞けばいいわけではありませんが、特に社内を説得するうえで、「これだけ肯定的な声が多い」というのは強い説得材料になりえます。
5、低コストツールの活用
現代のデジタルツールを駆使して、効率的にプロジェクトを進めます。特に、無料ツールや低価格のサービスを利用することで、出費を抑えることが可能です。特に昨今のノーコードローコードツールの流行りはものすごいものですのでそれを活用しない手はありません。
【具体例:デジタルツールの活用】
MiroやNotionを活用してリモートでアイデアを整理し、チーム全員が同時にアクセスできる環境を構築した企業があります。
④結論
新規事業開発における予算の少なさは、決して乗り越えられない壁ではありません。大切なのは、限られたリソースを最大限に活用し、経営層の理解を得るためのストーリーを作り上げることです。さらに、挑戦し続ける姿勢を持つことで、少ない予算でも大きな成果を生むことが可能になります。さあ、あなたも今日から一歩踏み出してみませんか?
※本コンテンツの作成にあたり、一部 ChatGPT を利用しておりますが、内容につきましては十分に精査し、問題ないことを確認しております。