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社内の「埋もれた人材」を活かすために——新規事業開発のモチベーション阻害要因とその対策
はじめに
はじめまして。三菱総研の山野内と申します!
私は、新規事業開発の推進や、実際に事業を担う人材の育成を支援する「INNOGUIDE(イノガイド)」というサービスの責任者を務めています。INNOGUIDEは現在、有償PoCとして展開しており、既に複数の企業様にご活用いただいています。
これまで私は、教育政策や科学技術・イノベーション政策の分野で政策コンサルティングに携わってきました。その後、自社の新規事業開発に取り組み、現場で実際に手を動かしながら挑戦を続けています。その中で、経験豊富な方からの支援がいかに重要かを痛感する一方で、そうした支援が一時的に留まりがちな現状にも課題を感じました。そこで、持続的に新規事業を推進するためには、自分自身の成長も必要だという考えのもと、INNOGUIDEを開発し、改良を重ねています。
そしてこの度、INNOGUIDEとしてnoteの記事連載を始めさせていただくことになりました!🎉
このnoteでは、これまでに100社近くの企業様から伺った新規事業開発上の課題感を踏まえて、その課題の克服に資するヒントを月1~2回の頻度でご提供できればと考えております。
第1回目の今回は「新規事業開発を担う人材発掘」についてです。
企業内での新規事業開発には、モチベーションを持ち、挑戦を楽しみながら事業推進に積極的に取り組む人材が不可欠です。しかし、現実にはそうした人材の確保は難しく、採用・育成に苦労されている多くの企業様にお会いしてきました。
ただ、本当にそのような人材が御社内にいないのかは、一度立ち止まって考えてみるべきだと考えています。
実際、仮に社内に潜在的な能力を持つ人材がいても、環境や支援が整わないために埋もれてしまうケースは多く見られます。企業にとっては、新規事業開発人材の採用を急ぐよりも、新規事業開発に適した人材を発掘し、埋もれさせないことが喫緊の課題です。
そこでこの記事では、潜在的な人材のモチベーションを阻害する5つの要因を挙げ、それらを取り除くための対策について考えていきます。
1. ビジョンの明確化と共有の不足
新規事業の方向性や目的が経営層で十分に定まっておらず、現場のビジネスパーソンには「なぜ新規事業を推進するのか」が不明瞭なケースが少なくありません。この不透明さが挑戦意欲を削ぐ要因となり、結果として新規事業を担える優秀な人材が埋もれてしまうことにもつながります。
例えば、企業としての将来像や新規事業が目指すべきビジョンが共有されないままでは、現場の人材が「この仕事は本当に会社のためになっているのか?」と疑問を抱いたりします。また、苦労して新規事業を進めた結果、経営層や管理職から「思っていたのと違う」と言われてプロジェクトが棄却されてしまうケースも多く、これが大きなモチベーション低下を引き起こしています。
対策の方向性
経営層が新規事業のビジョンを具体的に示し、従業員が共感しやすい形で頻繁に伝えることが重要です。例えば、新規事業に関する社内説明会を開催し、事業の目的や戦略、想定される課題を経営層が直接共有する機会を設けることも有効です。また、企業としての一貫性あるビジョンを継続的に発信することで、現場の従業員がビジョンを自分事として捉え、積極的に参加するきっかけをつくることができます。
2. 「失敗」に対する不安
新規事業開発は長期的な成果が求められる性質を持ちますが、短期的な成果を重視する評価制度では挑戦的な事業に取り組むインセンティブが失われてしまいます。挑戦にはリスクが伴い、特に失敗が許されない環境では、意欲ある人材もリスクを避ける方向に傾きがちです。結果として、挑戦に伴う失敗を恐れた人材が、新規事業に関心を持ちながらも積極的に動けない状況が生まれやすくなります。
対策の方向性
新規事業においては、挑戦そのものやプロセスに対する評価を行う体制の構築が重要です。例えば、「失敗から得た学び」を明確に評価に反映させる仕組みや、リスクのあるプロジェクトに対する特別なインセンティブを導入することが効果的です。また、失敗の経験を積極的に共有する場を設けることで、失敗を「成長の機会」として捉えられる文化が生まれ、挑戦意欲を持続させることが可能になります。
そして、このような失敗に対して1.で触れたような経営層のビジョン共有も一つの有効な対策と考えられます。
3. キャリアへの不安
新規事業に関わることは、従来業務とは異なるため、昇進や評価への影響に不安を感じる従業員も少なくありません。この不安が、新規事業への参加や積極的な挑戦を躊躇させ、潜在的な能力を持つ人材がモチベーションを保てない原因となる場合があります。特に、昇進や給与評価に直接影響する場合、従業員が挑戦を避ける心理が働きやすくなります。
対策の方向性
新規事業経験が長期的なキャリアにとっても有益であることを示し、経営層が支援の姿勢を明確にすることが重要です。たとえば、新規事業への参加が今後の昇進にプラスの影響を与えることや、積極的な挑戦が評価される仕組みが整っていることを明示することで、挑戦に対する不安を軽減できます。また、経営層がメッセージを発信し、挑戦する人材が社内で評価される文化を育てることで、ビジネスパーソンが新規事業に安心して挑める環境が整います。
4. 評価・処遇の不透明さ
新規事業の成果に対する評価基準が不明瞭であると、「何をもって成功とみなされるか」がわからず、人材の積極性が低下します。また、成果が出た際の処遇が不明確である場合、努力が適切に報われるかどうかに不安が残り、モチベーションを持続させることが難しくなります。事業開発の長期性と報酬の不透明さが合わさることで、結果として人材が本気で取り組む動機を失いやすくなります。
対策の方向性
評価と処遇の基準を明確にし、具体的なインセンティブを設定することが重要です。たとえば、新規事業で得た成果が給与や賞与に反映される仕組みを導入し、評価と報酬のプロセスを従業員に周知することで、努力と成果が結びつく環境を作ることが可能です。また、処遇の明確化を図ることで、新規事業開発に取り組む人材が結果に対して正当な評価を受けることができ、モチベーション維持につながります。
5. 資源やサポートの不足、および組織・個人の経験不足
新規事業を進めるためには、予算や人員、適切なサポートが不可欠です。しかし多くの企業では、こうしたリソースが不足しているだけでなく、本人や上司、経営層が新規事業の知見や経験を十分に持たない場合も多く、挑戦に対する支援が不十分になるケースも少なくありません。特に、上司や経営層が新規事業開発の経験を持たない場合には、初期フェーズで検討すべきではないリスクや短期的・中長期的な収支計画に関する指摘が過剰になることがあり、これによって事業推進へのモチベーションが下がる例も見受けられます。
対策の方向性
経験不足の課題を解消するためには、社内外の新規事業経験者からのサポートを受けられる仕組みが効果的です。例えば、メンター制度を導入し、経験を持つ人材からの助言を受ける機会を提供することで、挑戦を続けられる支えとなります。また、事業の初期フェーズでは、アイデア創出や検証に集中し、収支計画などの詳細な検討はプロジェクトの進行に応じて進めるといった柔軟なプロセスを取り入れることが、新規事業に挑戦する人材の意欲を維持する鍵となります。
まとめ
企業が新規事業開発で競争力を高めるためには、潜在的な人材のモチベーションを阻害する要因を解消し、挑戦的な人材がそのポテンシャルを発揮できる環境を整えることが必要です。ビジョンの共有や「失敗」に対する評価、キャリア支援、経験に基づくサポート体制の整備、評価・処遇の透明性を高めることが、挑戦を続けるための後押しとなります。企業として、埋もれた人材を活かし、イノベーションの力を引き出すための取り組みを進めていきましょう。
「INNOGUIDE」のご紹介
「5. 資源やサポートの不足、および経験不足」でご紹介した外部の視点を取り入れたいと考えている企業様向けに、三菱総合研究所では冒頭にご説明した「INNOGUIDE」の有償での実証協力をお願いしております。「INNOGUIDE」は、新規事業開発の推進支援はもちろん、その過程でのノウハウの獲得やマインドセットの醸成を目指すサービスです。これにより、単なるプロジェクト支援にとどまらず、社内人材の成長も同時に促進できます。
「INNOGUIDE」の詳細については、以下のURLをご覧ください!
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※本コンテンツの作成にあたり、一部 ChatGPT を利用しておりますが、内容につきま しては十分に精査し、問題ないことを確認しております。